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コラム

太陽電池はクルマに搭載されるのか?

◆トヨタ、次期「プリウス」に世界で初めて大型「太陽電池」搭載か、韓国紙

2008年発売の新型プリウス(開発コード590L)は屋根全体に太陽熱発電池を装着し、停止中も電気エネルギーを充電できるようにすると報道した。

<2006年10月26日号掲載記事>

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【次期プリウスへの期待】

世界で最も売れているハイブリッドカーであるプリウスは、発売 3年経った今でも月間 4~ 5 千台の販売(新車販売台数ランキングでも 20 位前後)を維持しており、トヨタの主力モデルの一つとして存在感を示している。

1997年に登場した初代プリウスは、当時の世界最先端の環境性能を実現するクルマとして大きく注目を浴びた。一方で、加速性能などの走行性能や、ラゲッジ容量などの実用性の面で、同じ価格帯の他のクルマと比較すると見劣りする部分も多く、「ハイブリッドだから・・・」と目をつぶらざるを得ないところもあった。しかし、2003年に登場した二代目(現行)プリウスは、これらの「ハイブリッド」のイメージを一変させた。モーターの高出力化、エンジンとモーターのシームレスな制御等々により、世界最高レベルの環境性能(10 ・ 15 モード燃費:35.5km/L)と 2L エンジン車と肩を並べる走行性能(0-100km/h加速:10.5秒)を両立させた。インテリジェントパーキングアシストに代表される先進技術も装備し、一大ヒットモデルとなった現在では、世界各国にも輸出されている。トヨタの販売台数拡大に寄与しただけでなく、トヨタ=「環境問題に真摯に取り組む企業」というブランドイメージ向上にも貢献している。

そのプリウスの次期モデルとなると、現行モデルを上回る環境性能の向上と革新的な先進技術の搭載が期待される。各国の自動車メーカーも独自のハイブリッド技術の開発を進めている中、ハイブリッド市場を牽引してきたトヨタの開発陣としても、あらゆる可能性を追求して性能向上を検討しているであろう。その中で、太陽電池を搭載し、停車時にも発電することで更なる燃費向上を図るというアイデアがあっても不思議ではない。

今回のニュース自体の真偽については、次期プリウスに関する公式な発表が出るまで待つとして、今回のコラムでは、太陽電池のクルマへの搭載の可能性について考えてみたい。

【太陽電池の概要】

まず、太陽電池の概要を説明する。

太陽電池自体は、太陽の光エネルギーを吸収して電力に変える発電装置であり、「電池」とあるものの蓄電装置ではない。現在の太陽電池のベースとなる技術は 1954年に米国で発明されたと言われている。当初は、人工衛星等の宇宙工学向けが主な用途であったが、1960年代頃から徐々に民間利用にも使われるようになり、1974年のオイルショックを契機に本格的な量産が拡大する。地球環境保全やクリーンな代替エネルギー技術が注目される昨今、その生産量も加速度的に増加している。日本は太陽電池の世界最大の生産国(消費では、ドイツに次いで世界第 2 位)であるが、その国内生産量は、 1996年には 28MW 程度であったのが、2004年現在では 884MW (出典:太陽光発電協会)まで急拡大している。

現在一般的な太陽電池は pn 接合型とよばれるものであり、性質の異なる二種類の半導体(p 形と n 形)を重ね合わせた構造になっている。太陽光があたると、電子(-)と正孔(+)が発生し、正孔は p 形半導体側へ、電子は n 形半導体側へ引き寄せられ、この二つの半導体を電線でつなぐと電気が流れる仕組みになっている。電気を流すと光を発する発光ダイオードと逆の反応で、光エネルギーを吸収して電力を取り出すことができる。
太陽電池には、その使用材料によりシリコン系と化合物半導体系の二種類がある。

(1)シリコン系
・単結晶シリコン型:
最も歴史のある太陽電池。発電効率に優れるが、生産コストが高く、多結晶に移行しつつある。

・多結晶シリコン型:
発電効率は単結晶に劣るが、コストと性能のバランスに優れるため、現在主流となっている。

・アモルファスシリコン型:
シリコン原料の使用量が少なく、将来の低価格化が期待されている。

(2)化合物半導体系(非シリコン系)
・GaAs (ガリウムひ素)系:
発電効率が高く、宇宙用などの特殊用途で利用が進んでいる。

・CIS (カルコバイライト)系
製造法や材料が多様で、様々な用途に向けて開発が進んでいる。

その他、色素増感太陽電池などの有機系の太陽電池など、様々な材料、用途の太陽電池が、実用化に向けて開発を進められている。

太陽電池の用途としては、住宅用(住宅用発電システム、車庫灯等)や公共・産業用(道路標識、街路灯、灯台等)、民生機器用(電卓、時計等)などへの採用が進んでいる。

【クルマに搭載するためには】

「太陽電池」+「クルマ」といった時に、すぐに思いつくのが「ソーラーカー」のイメージではないだろうか。各地で行われるレースに、自作のソーラーカーで参戦する専門学校や工業高校の映像をテレビ等で目にしたことがあると思う。太陽電池を全面に覆い、可能な限り軽量化した平たい流線型の車両に、寝そべった形でドライバー 1 人が乗車するそのクルマの形状からもわかる通り、現在の太陽電池の性能では、実用のクルマの動力源として利用することは、まだ難しい。しかしながら、こうしたレース等の活動を通じ、企業は自動車での利用に求められる太陽電池の性能を研究し、開発を進めている。

世界最大の太陽電池メーカーであるシャープが発表した論文によると、自動車用の電源として太陽電池を利用するために、以下のような性能が求められるという。

シャープ技法 「太陽電池のソーラーカーへの応用」

http://www.sharp.co.jp/corporate/rd/journal70/5-8-1b.htm

(1)高い変換(発電)効率
現在のクルマでは、太陽電池を設置可能な場所はルーフ、ボンネット等に限られ、その面積は 1~ 3 平方 m 程度である。同時に水平に近い状態に設置することになる(住宅用等では日射角に合わせて設置可能)ため、限られた面積で高い出力を得る性能が求められる。

(2)曲面への対応
通常の太陽電池モジュールでは表面に平面ガラスが用いられるが、車体の曲面に合わせて曲面ガラス・プラスチック・フィルム等を使用する必要がある。

(3)軽量化など
軽量化が求められると同時に、太陽電池の保護強度の維持も重要となる。また、安全性への配慮も必要となる。また、実際に採用されるためには、デザイン性やリサイクル性なども求められる。
(4)経済性
設置面積が 2 平方 m、最大出力が 300W の太陽電池を設置すると仮定すると、1日あたりの利用可能な最大電力量は 0.8~ 0.9kWh と推定される。電気自動車の走行距離が 1kWh あたり約 8km だとすると、太陽電池の発電電力による走行距離は 1日あたり約 6~ 7km となる。いくら原油価格が高騰しているとはいっても、この距離を走るために必要なガソリン価格と太陽電池の価格を比較すれば、とても経済的に成り立つものではない。太陽電池の低価格化・性能向上もさることながら、電気自動車自体の性能向上もなければ、到底成り立ち得ない。

【補助動力源という考え方】

そこで、出てくるのが、主動力源としてではなく、補助電源として太陽電池を活用するという考え方である。既に自動車用品の世界では、バッテリの放電を防止し、延命を図る装置として、シガーソケット等と接続し、ダッシュボード等に貼り付ける小型の太陽電池が販売されている。

前述のシャープの論文でも、富士重工が開発した太陽電池を搭載したハイブリッドカーのコンセプト車両が紹介されている。ルーフに貼り付けられた太陽電池が停車中でも電力を蓄えることができるというコンセプトは、今回のニュースの「次期プリウス」とも同様である。

こうした補助動力源としては、太陽電池は大きな可能性を秘めた存在ではなかろうか。燃料電池の低価格化の目処がたっていない現在、引き続きハイブリッドカーが今後の自動車業界の環境性能向上を実現する技術の最有力手の一つであることは間違いなかろう。

ハイブリッドカーが日本に代表される渋滞の多い道路事情に有利であると言われているが、それでもほとんど停車したような状態ではエネルギーの回生もままならないだろうし、バッテリの容量にも限界がある。そうした中、停車時にもエネルギーを回生できる手段として、太陽電池という手法の有効性は高いのではないだろうか。また、停車時に発電できるというメリットを利用すれば、レジャーや災害時などの走行以外の電力源としても活用可能かもしれない。近年、新しい素材や構造の開発に伴い、低価格化も進んでいることも考慮すれば、コストに厳しい自動車業界の要求に見合うものができるのも、そう遠い話ではないと考えられる。

【実用化に向けて】

実は太陽電池に早くから着目している自動車メーカーがある。ホンダである。ホンダはかねてより生産技術開発を担当する子会社、ホンダエンジニアリングで、既存の太陽電池よりも低コストな非シリコン系の太陽電池とその量産技術の独自開発に取り組んできた。そして、今年 8月にホンダ熊本製作所で家庭用の太陽電池の量産開始を発表している。同生産ラインは、来年 10月から操業開始し、年間 27.5 MW(一般家庭8千世帯分)を生産予定という。

ホンダが考えているのは、家庭や工場用エネルギー供給による地球温暖化防止だけではない。当然、クルマへの応用も検討していると考えられる。将来の燃料電池時代に備え、太陽電池による水素の製造も検討しているという。

前述の通り、太陽電池の性能だけでクルマを走行させることはまだまだ難しいかもしれない。しかし将来的には、補助電源としての活用や、パーソナルユースのクルマの動力源として実用化する日も来るであろう。自動車メーカーや大手電機メーカーは更なる太陽電池の性能向上・低価格化に注目しており、新しい素材・技術の導入により、実用化が期待される分野である。

<本條 聡>

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