AYAの徒然草(56)  『意見の「提案型」と「伺い型」』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。

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第56回 『意見の「提案型」と「伺い型」』

私は、何か上司の決断を仰がないといけないような場合、まずは自分で考えてみて、自分だったらどうするか、そしてそう思った理由も添えて上司に決断を迫るように心掛けています。その時、いくつかのアイデアが浮かんだら、それぞれのメリットやデメリット、実行した場合に予想されることなども一緒に説明します。私が思いついたアイデアが突拍子もないことだったり多少強引な理由だったとしても、また、こんな意見を言ったってどうせ却下されるよなぁ・・・と思ったとしても、恥ずかしがらずにはっきりと自分の意見を述べることに意義があると思っています。しかし、自ら考えず、真っ先に上司に「○○の件、どうしたらいいでしょうか?」と聞いてしまう方が楽ですよね。考えなくていいんですから。それに、上司には上司の考えややり方があるでしょうから、それを尊重した方がいいという考えもあると思います。

これは、仕事の取り組み方の違いです。自分で何かを生み出そうと常に考えていて「能動的」に仕事に取り組んでいるのか、それとも、上から命令されたことをきちんとやりこなそうとするどちらかと言うと「受動的」に仕事に取り組むかという点の違いです。どちらが正しいということはないと思いますが、みなさん、ご自分が上司の立場になってちょっと考えてみてください。どっちの部下の方が頼りになりますか?

どんなに有能な上司だって人間です。頭の回転が早く、経験豊富で知識もあり、そして人徳のある上司だとしても、全てのことに目配りしている時間的余裕はありません。それに、一人の人間の考えることや思いつくことには限界があります。そんな時、きちんと考えたアイデアなら、任せてみることで上司はもっと別のことに集中できます。仮に、頼りないアイデアだったとしても、なにか上司の思考にヒントを与えるかもしれませんし、上司が考えていたことの裏づけになるかもしれません。思いついたアイデアは、相手の思考にヒントを与えることでも十分役目を果たすと思うのです。だから、自分の意見を堂々と述べることは、必ずしもエゴを通すことではありません。

つまり、私は、自分の意見を述べた上で相手の意見を聞くことは、相手の意見を聞く時のマナーなんじゃないのかなぁと思うのです。それに、自分の意見を言った後というものは、相手は一旦それを耳に入れているので、自然とまずはその意見に焦点を当てて考え始め、自分の意見の採用の方向へと仕向けられるというおまけもついてきます。つまり、自らの意見を述べてから相手の意見を求めることは、相手を尊重することでもあり、自分の意見への誘導でもあると思うのです。

というようなことは、仕事の上だけではなく、日常の、こんな些細なことでも当てはまるんですよ。私は、デート中、「今晩なにが食べたい?彩ちゃんの食べたいものでいいよ。」という言葉を聞いてしまうと、「あーあ、せっかくこの人、ステキな人だなぁと思っていたのに・・・。残念!マイナス 30 点!!」と独り心の中でつぶやいてしまいます。

なぜ、これが「減点」だと思いますか?私が食べたいものを優先してくれる優しい人なんじゃない???それに、まずは相手の意見を聞こうとする控えめで穏やかな人なんじゃない???と思う方が多いかもしれません。

女性は、男性の優しさにとても弱いです。「なんでも私の言うことを聞いてくれる人=優しい人」と判断します。だから、こういう男性の方がモテるのかもしれませんね。でも、私は、このような人だと、別のもっと大事な話題でも、一緒に居てお互いの考えをぶつけ合って互いに高め合っているシーンを想像できず、「退屈」を予想してしまうんです。

私は、こういう言葉の方が好きなんです。「僕は○○が食べたいと思っているんだけど彩ちゃんはどうかな?」とか、「最近、△△っていうお店が話題になっているみたいなんだけど、今から行ってみない?」というような「提案型」の言葉です。こういう言葉だと、きっとこの人は仕事中、上司にも自分の意見をきちんと言えてキラキラと輝いている人なんだろうなぁと思うのです。仕事中のカッコイイ姿を容易に想像でき、私の中でワクワク度が増して点数がどんどん加算されていくわけです。

しかし、私のような価値観の人が全てではありませんし、いつでもどっちが正しいというわけでもありません。つまり、「提案型」も「伺い型」も、どっちが良い悪いということではなく、相手次第、状況次第なのです。だから、相手がどういう人なのか、今はどういう局面なのか、ということを早く見極める目を養い、相手によってまた状況によって自分の意見の主張方法を柔軟に変えることが、上手く相手の意見を聞きだす最善の策なのかもしれません。と言っても、なかなかそこが一番難しいんですけどね。

<佐藤 彩子>