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コラム

中国民族系完成車メーカーのグローバル化

◆伊Fiat、中国・奇瑞汽車(Cherry)から完成車のOEM調達を検討

<2006年11月12日号掲載記事>

◆伊Fiat、中国・奇瑞汽車(Cherry)からエンジン購入で提携

年間供給量は10万台以上となる見通し。両社は今年末、最終的な供給合意書に署名する。
奇瑞汽車は昨年 10月 31日、欧州の排ガス基準に適応する新世代 ACTECO シリーズエンジン(1600cc 等)の量産を開始、年末には 1800cc も量産へ

<2006年11月02日号掲載記事>

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【北京国際モーターショー開幕】

先週 18日(土)から、第 9 回北京国際モーターショーが開催されている。筆者も 2年前の前回開催には足を運んだが、中国自動車業界への注目が過熱していたこともあり、大変な混雑振りであった。今年の中国国内自動車販売台数は 680~ 700 万台に達する見込みであり、いよいよ日本を抜いて世界第 2 位の市場に躍進する見通しである。前回よりも 1.6 万 m2 拡大して 12 万 m2 の展示面積を確保し、開催期間も 2日間延長する今回のモーターショーには、世界 20 カ国の主要完成車メーカーが出展する予定であり、前回以上に活況を呈すると予想される。

今回のモーターショーで注目を集めているのが、多様な中国独自車種である。これまで市場の中心を占めてきたのは、外資系完成車メーカーとの合弁会社が製造する車両であり、そのほとんどが海外完成車メーカーが開発して持ち込み、海外メーカーのブランドで販売されているものであった。

しかし、近年、各完成車メーカーは中国テイストを盛り込む形で、外観や仕様を変更した車両を徐々に投入しており、今回の出展車両でも、GM が「キャデラック STS」のホイルベースを延長した「同 SLS」を、日産が中国専用の 3 列シートミニバン「リヴィナ ジェニス」を、BMW が「5 シリーズ」のホイルベースを延長した「530Li」等の中国専用モデルを出展している。

大手中国完成車メーカーも、海外ブランド車種だけでなく、独自ブランド車種の開発を強化している。その代表格は、中国最大の完成車メーカーである第一汽車がトヨタの技術供与を受け、「クラウンマジェスタ」ベースで開発した「紅旗 HQ3」や、英 Rover の技術資産を買収して上海汽車が開発した「栄威 750」である。

こうした中、着実に勢力を拡大しているのが中国民族系完成車メーカーである。かつては、「安物のコピー車ばかり」と揶揄された中国民族系メーカーであるが、国内外の大手完成車メーカーのエンジニアを積極的に採用し、海外完成車メーカーの技術供与を受けながら、着実に技術力を高めつつある。今回のモーターショーにおいても、スポーツカーやオープンカーから独自開発のハイブリッドカーまでコンセプトカーを投入し、「コピー車」からの脱却をアピールしている。その最右翼が今回取り上げる奇瑞汽車である。

【奇瑞汽車の概要】

今回、奇瑞汽車は、全メーカー中最多の 10 モデルの新型車・コンセプトカーを発表した。独自のハイブリッドシステムを始め、独自開発のエンジンも多数発表している。

これまで、同社のイメージは同ブランドの最販車種である「QQ」のイメージが強かった。GM 大宇から告訴された「コピー車」疑惑の代表的なモデルである。(約 3年間に及んだ係争の結果、両社は和解している。)「QQ」は、3 万元台前半(約 50 万円)という価格を武器に、毎月 1 万台以上の販売を継続している。

現在、奇瑞汽車は、独自開発による車種ラインナップの多様化を進めており、主力の「QQ」「新旗雲」に代表される廉価なベーシックモデルに加え、「A5」「瑞虎」といったミドルクラスのセダンや SUV も投入し、「V5」というミニバンも発表している。そして、今年、中国ブランドとしては初めて月間販売台数が 3 万台を突破するなど、着実に販売台数も拡大してきた。

輸出にも積極的で、2002年に中東への輸出を開始して以降、中東や南米ほか世界 50 カ国へ 2 万台近くの輸出を展開しており、イラン、マレーシアでは CKD 生産も行っている。今年はロシアでの合弁生産事業も発表しており、米国に 25 万台輸出するという計画も噂されている。

また、開発面でも技術レベルの向上を進めている。特にエンジンについては、これまで三菱製を調達していたが、欧州排出ガス基準 EuroIV に適合した 1.6Lアルミエンジン他複数のエンジンの独自開発に成功している。「コピー車」メーカーからの脱却に向けて、技術面でもレベル向上をアピールしている。

【Fiatとの提携】

今月相次いで発表となった内容は、この独自開発エンジンと独自開発車を Fiatに OEM 供給するというものである。中国民族系メーカーから先進国の大手メーカーが供給を受けるというのは初めてのケースである。

Fiat 自身、GM からの独自路線を歩み始めて以降、他社との提携を積極的に活用し、効率的な車種開発を進めている。スズキともクロスオーバー車の共同開発を行い、スズキがハンガリーで生産している SX4 をベースにした車種の OEM 供給を受けている。

合従連衡が続く自動車業界において、Fiat のように独立路線を進む完成車メーカーにとっては、業界全体で進む慢性的なリソース不足の解決のための提携関係、車種・エンジン等の受託・供給関係は重要な戦略となる。一歩間違えば、ブランドイメージにも大きなダメージを与える可能性があるため、慎重な判断が求められる。

今回、Fiat によるエンジンや車両調達が実現すれば、奇瑞汽車も十分な技術・品質レベルにあることを大きくアピールできるものになると考えられる。数ヶ月前にはダイムラークライスラーとの提携も噂されていたが、今後、他の先進国メーカーとの提携にも繋がる可能性を秘めている。

【中国民族系メーカーとの提携の意義】

ここで、改めて、中国民族系完成車メーカーと提携する意義を考えてみたい。

(1)中国市場におけるメリット
国内販売台数は右肩上がりで増加しているとはいえ、市場での価格競争は厳しさを増している。高級車市場では依然として海外ブランドの勢力が強いが、拡大しつつある低価格車市場においては、技術レベルも向上しつつあり、安かろう悪かろうから脱却しつつある中国民族系メーカーの商品と直接競合するのは厳しい。このような状況において、民族系メーカーと提携することで、低価格で車両の開発が可能となり、価格競争力を高められると考えられる。民族系メーカーとしても、技術・品質面で吸収できるところも大きく、他の海外メーカーにもアピールできると考えられる。

(2)グローバル市場におけるメリット
こうしたメリットは中国市場だけに限らない。現在世界の自動車市場は約 65 百万台と言われているが、2010年には 75 百万台程度まで成長すると予想されている。そのうち、拡大する市場は、米国を除けば、BRICs を始めとする発展途上国が中心であり、より安価でベーシックな車種が主流と考えられる。こうした新興市場向けに価格競争力のある車種を自前で開発するよりも、中国民族系メーカーのように、低価格車を得意とするメーカーと提携し、OEM 供給を受けるという戦略もありうべしと考えられる。今後海外進出が見込まれる中国民族系メーカーと価格競争で張り合うよりも、味方に取り込んで自社の車種と使い分けることのメリットは十分にあると考えられる。

【中国民族系メーカーのグローバル化】

現在中国では、市場成長以上に拡大した過剰な生産能力の矛先として、海外輸出を強化しようと政府も主体的に取り組んでおり、上海など 8 都市で輸出基地整備も進めている。

かつて、フランクフルトモーターショーにも出品した中国民族系メーカーの車両が欧州の安全基準に全く達していないと酷評されたことで、中国の自動車メーカーの技術レベルがまだまだだと認識した方も少なくないであろう。たしかにそうした一面も否定できないが、貪欲なメーカーは積極的に海外技術を取り込んでおり、その技術レベルも向上していると考えられる。

中国民族系自動車メーカーとの競争が中国以外の市場でも本格化するのも、そう遠い話ではないかもしれない。

<本條 聡>

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