モジュール開発による自動車部品メーカーの再編について

今回は、「モジュール開発による自動車部品メーカーの再編について」に関す
る以下のアンケート結果を踏まえてレポートを配信致します。

https://www.sc-abeam.com/sc/?p=6874

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【モジュール開発の動向】

 従来のモジュール開発は、車種やプラットフォーム毎に、機能単位で括れそ
うな近隣の部品群をモジュールとして捉えてきた。

 一方、近年のモジュール開発には、まず中長期的な視点で車両のアーキテク
チャー(重心位置やドライビングポジション等の基本要素)を定め、その範囲
内で複数の車種やプラットフォームを跨いで共有化(モジュール化)するとい
う概念が導入された。

 VW の「MQB (モジュラー・トランスバース・マトリックス)」や日産の「CMF
(コモン・モジュール・ファミリー)」、トヨタの「TNGA (トヨタ・ニュー・
グローバル・アーキテクチャー)」が、その例である。

 言わば、従来のモジュール開発は車種毎の個別最適であることに対して、近
年のモジュール開発は自動車メーカーとしての全体最適を志向するものである。

 これにより、「レゴブロック(モジュール)」を組み合わせるような車両の
開発や調達、生産が可能となり、調達・生産領域でのより一層のコスト低減や、
車両開発の効率化、商品ラインナップの柔軟性向上といった効果が期待されて
いる。

 自動車メーカーは、例えば、特に先進国における車両の高額化(電動化や軽
量化のための素材革新、安全技術の搭載等)というコスト面の課題や、新興国
向け商品等グローバル化に伴う商品ラインナップの課題、開発リソースの逼迫
といった課題を抱えており、モジュール開発はそれらの対策の切り札と言って
も過言ではないかもしれない。
 
【自動車部品メーカーに求められること】

 自動車メーカーのモジュール開発が進展する中で、Tier1 部品メーカーには、
従来から以下のようなことが求められてきた。

・部品の保証:自社部品の保証だけでなく、Tier2 より供給されるモジュール
              の部品群を含めた保証
・アッセンブリの保証:モジュールに組み立て、全体としての機能保証
・調達網の構築:モジュール部品群の調達
・グローバル供給:自動車メーカーの各拠点への供給

 これらのことは、近年のモジュール開発の概念においても求められ、その物
理的・時間的範囲や規模がより拡大していくであろう。例えばトヨタでは、
「TNGA と連動した調達戦略」として、複数の車種を纏めて、グローバルに、車
種・地域・時間を跨いだ「まとめ発注」を実施すると発表している。また、日
産でも同様のことに取り組んでいる(寧ろ日産の方が積極的と言われる)。

 加えて、提案型ものづくりの重要性が高まると考える。上述したように、近
年のモジュール開発には、まず中長期的な視点で車両のアーキテクチャーを定
め、その範囲内で共有化(モジュール化)するという概念が導入された。

 その中で、部品メーカー自らが中長期的な技術ロードマップを策定・提案し、
アーキテクチャーやモジュールを自動車メーカーと共同開発していくことが競
争力の向上に繋がると考える。

 また、予め策定した自社のロードマップに従った体制を整えることで、「ま
とめ発注」による責任やリスク増大の対策、収益性のコントロールにも繋がる
と考える。アプリケーションのみを変えて、他自動車メーカーに販売し、量を
稼ぐ方策も考えられる。

 欧州と日本では、自動車メーカーと部品メーカーの関係性は異なるが、ボッ
シュでは、既に上記のようなことが行われている。
 
【提携戦略を見直す時期】

 「まとめ発注」に伴うであろう発注先や発注頻度の減少、それに備える部品
メーカーのリソース負担等を考えると、今後、部品メーカーの提携や M & A
が増加する可能性がある。

 先月の弊社 1 クリックアンケートで、今後、部品メーカー業界において、モ
ジュール開発により、どのような類型の M & A が多くなるかをお聞きした。
結果は、以下のように Tier1 同士の水平統合が約半分を占めた。

・Tier1同士の水平統合  :47%
・Tier1によるTier2の後方垂直統合:24%
・Tier2同士の水平統合  :15%
・Tier2によるTier1の前方垂直統合: 6%
・その他   : 8%

 実際に、部品メーカーの提携強化の動きは既に見られ、先日もホンダ系部品
メーカーのエフテックが、モジュール単位の提案に向け、提携先となる部品メー
カーの開拓へ本格的に乗り出したという報道があった(2013年 9月 18日付け日
刊自動車新聞)。

 モジュール開発が進展する中で、上記のような動きが業界全体で活発になり、
M & A という手段が増えていく可能性もあるだろう。部品メーカーは改めて、
資本・業務提携戦略を見直す時期ではないだろうか。

 1 クリックアンケートにお寄せ頂いたコメントの中に、「モジュール構成部
品の Tier1 の中から、Tier0.5 的立ち位置が生まれると考える」という記載が
あった。提携戦略の見直しにあたっては、例えば、Tier1 部品メーカーとして
は、Tier0.5 を目指す、複数の Tier0.5 に納入する立ち位置を目指す等の、あ
りたい姿、長期戦略の検討が重要と考える。

 幾つかの部品メーカーは Tier0.5 に近い立ち位置にいると思われるが、独自
の中長期的視野に基づいた R & D により、逆に自動車メーカーをリードする
ようなモジュール部品メーカーの出現が求められている。

<宝来(加藤) 啓>