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コラム

「超小型車」を考える

◆国交省、「超小型車」普及のため6月にもメーカー向け指針公表へ
 軽自動車より小さい1~2人乗りの「超小型車(125cc)」、

 国土交通省は軽自動車より小さい1~2人乗りの「超小型車」の普及に向け、
 安全基準や技術仕様を定めた認定制度を今年度中につくる。これを満たした
 場合は公道を走れるようにする。高齢者や観光客が近距離を移動する車とし
 て使うことを想定している。…

                   <2012年05月28日号掲載記事>

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【50年前ぶりの新区分となる可能性】

 先月末、「超小型車」に関する指針が公表されるという報道が新聞各紙面に
流れた。記事によれば、現行の道路運送車両法に定められている区分に加え、
二輪車と軽自動車の中間あたりのセグメント領域に、「超小型車」という新区
分が定められるというものである。

 今回、この改訂が実現すれば、1963年以来の更新になるという。つまり、こ
の半世紀、大きな区分としては更新されなかった、ということでもある。国内
の自動車保有台数で、1963年と現在を比較すると以下の通りとなる。
  

 <国内自動車保有台数(1963年3月末、2011年3月末)>(単位:千台)
            1963年   2011年  2011年/1963年対比
 乗用車         789    40,135   50.9倍
  うち普通乗用車    69    16,839   244.0倍
  うち小型四輪車    719    23,296   32.4倍
 貨物用        1,782    6,214    3.5倍
 乗合用         74     227    3.0倍
 特殊用途        103    1,498   14.5倍
 軽自動車       2,129    29,050   13.6倍
  うち軽四貨物車    497    9,069   18.2倍
  うち軽三貨物車    429      1    -
  うち軽乗用車     163    18,004   110.4倍
  うち軽二輪車    1,040    1,975    1.9倍
 小型二輪車       44    1,535   34.9倍
 総計         4,922    78,660   16.0倍
                 (自販連統計データより)
  

 つまり、50年前は全国に 5 百万台程度だった自動車が、今や 80 百万台弱も
普及している、ということである。中でも乗用車の普及が著しく大きいことも
わかる。ここまで成長し、変化してきたクルマ社会の中で、こうした車両区分
が見直されなかったというのも不思議なものである。成長期から成熟期に移行
してきた国内自動車市場の次の時代を見据えて、クルマの在り方を見直してい
くべきであろう。
  
【新区分の難しさ】

 とはいえ、実際に新たな車両区分を作る上では、当然ではあるが、様々なこ
とを決めていく必要がある。利害関係者も多く、トントン拍子で進むとは限ら
ない。例えば、軽自動車の優遇税制との位置づけ等も含めて議論することとな
ると予想する。超小型車の期待役割を設定するだけでなく、軽自動車との住み
分け方も納得感がある整理が求められる。こうした周辺分野への影響も考慮す
ると、かなり難易度が高い問題であると改めて思う。だから 50年間も更新され
なかった、というのが本音かもしれない。

 例えば、ざっと思いつくような基本的な要件だけでも、以下のようなところ
である。 
  

  顧客層:  ユーザー(高齢者、主婦、若者、、、)
        利用目的(買い物、通勤・通学、観光、、、)
        提供手段(購入、レンタカー、シェアリング、、、)
  利用環境: 道路インフラ(制限速度、高速道路可否、、、)
        導入範囲(全国一律、特区、離島等限定範囲、、、)
        税制(自動車税、取得税、重量税、、、)
  製品基準: 価格帯、車格、動力源、乗員数、安全性、航続距離、、、
  

 実際にまとめていくためには、国土交通省等の関連官庁に加え、商品を開発
する自動車メーカー側の協力が不可欠である。

 しかし、クルマが十分普及している現在、この新たな区分に沿った商品を広
く普及させるためには、顧客とニーズを明確化する上でも、もう一工夫必要な
のではないかと考える。価格や大きさだけでなく、+αの付加価値を与える存
在として「超小型車」には登場してもらいたい。
  
【超小型車と制度の柔軟な運営】

 今回の改定のキーワードとして挙げられているのは、「高齢化」である。特
に、過疎化が進む地方において、高齢者でも手軽に運転できる移動体の必要性
に着目したものとして、「超小型車」という区分を新たに作る必要がある、と
いうものである。

 しかしながら、そもそも、都市化が進む日本で、人口集中する都市部と過疎
化が進む地方部で、全国一律のルールで運用する必要があるのであろうか。勿
論、安全性を担保する上で必要なルールなど、共通化しておかなければならな
いものも多数ある。一方で、大きく人口動態も交通インフラ環境も異なり、そ
の格差が広がり続ける都市部と地方部の間で、それぞれの地域に見合ったルー
ルを作っても良いのではなかろうか。いわゆる特区制度なども活用しながら、
新たなクルマ社会の実用化を目指す地域が出てくるべきではなかろうか。

 ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車などのクリーンエネルギー車につ
いてよく問われることが多いが、こうしたパワートレインの多様化についても、
それぞれの長所・短所を活かしながら、目的や地域によって使い分けすること
で、クルマ社会全体としての最適化を図っていくべき、というのが筆者の持論
である。環境問題だけでなく、都市化問題への対応においても、適材適所で使
い分ける柔軟性が必要になってくるのではなかろうか。

 答えが既にあるのであれば、そんな簡単なことはない。新たな商品・サービ
スを創り、顧客を創り、市場を創る、それが重要であり、業界全体の持続的な
成長にもつながるはずである。今回の「超小型車」は、新たなクルマ社会を再
考する一つの大きな契機になるべき存在だと考える。

<本條 聡>

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