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コラム

社長退任のご挨拶

 この度、親会社である住友商事の人事異動により当社代表の職を辞すること
になった。
 
 2010年 6月から 2年足らずの期間であったが、自動車業界やマスコミの方々
を始めとする関係者の皆様から多大なるご支援を頂戴しここまでやってくるこ
とができた。心より御礼申し上げたい。
  
【2年間を振り返って】

 この 2年間は日本の自動車業界にとって未曽有の試練に立たされた大変厳し
い時代だった。今もその負の遺産は根強く残ってはいるものの、自動車業界は
新たな成長に向かって復活策を打ち出し、着実に個別戦略を実行に移している。

 日本の自動車業界がこの大変な試練を経験した末に出しつつある結論はなん
だろうか?

 各社共通しているのは「ものづくりを通して復旧・復興の原動力となり、夢
のある未来を社会にもたらしていこう」という強い決意であるように思う。

 現場とトップが一体となった復旧活動は、産業界や経済人だけでなく世界の
多くの人々の驚きと感動を呼んだ。「何があっても負けない」といった精神力
だけではない。具体的な対抗策、改善策まで身につけ、より筋肉質になって戻
ってくる日本の自動車業界に世界の顧客は更なる安心感と信頼感を覚えたはず
だ。
  
【取り巻く社会情勢と自動車産業】

 一方で外部環境に目を向けると、この 2年間は世界の社会情勢が混迷を深め
た時期でもあった。昨年末、1 %の富裕層に立ち向かう 99 %の貧困層が打ち
出したとされるウォールストリートでの「99 %の反乱」によるデモが世界に波
及したのは記憶に新しい。 

 奇しくも、この時期は米国だけでなく他国でも社会の安定化のための「中間
層の構築」が強く摸索され始めたときでもあったように思う。 

 中間層の厚みを増すのに欠かせないのが製造業だ。所得の格差解消のために
は多くの雇用を生み出す製造業の発展が有効だからである。ただし一言で製造
業といっても様々だ。近年進捗著しい情報産業は製造部分を労働コストの安い
他国の外部企業に委託するファブレス産業をベースとしていて、多くの雇用を
地場で安定的に生み出す原動力にはならない。

 これに対し自動車産業は製造業のなかでも裾野が巨大で、地域の雇用に大き
な影響をもたらす。

 「分厚い中間層」の構築には自動車産業の育成が大変効果的である。
  
【日本の自動車産業の役割】

 日本の自動車産業は、円高、高い法人税、自由貿易協定問題、労働規制問題、
環境対策、震災と電力問題といった途方もないハンディを負わされながらも、
世界で重要な製造拠点、開発拠点としての地位を維持し続けようとしている。

 こうした最も厳しい経営環境にあっても尚、日本で自動車産業を高度化でき
ることが実証されれば、それは世界のどの地域でも効率的で信頼性が高く、危
機管理の行き届いた製造業を構築し得るビジネス・モデルの先進性・成熟性を
示すことになろう。

 人口がピークアウトした日本と更に成長を続けるグローバル市場の動向を見
据え、完成車だけでなく部品レベルから日本と世界の製造拠点の役割を整理し
分業体制を確立しながら海外展開を深耕していくことは、世界の自動車産業や
その他の製造業の発展に寄与することになる。そしてそれは、各国の社会基盤
の安定化にも繋がるものだと思われる。

 日本がリーダーシップをもって世界に貢献する大きな役割の一つは、自動車
産業の圧倒的な高度化と国際化を通して成し遂げられるのではないかと思う。

 今後は筆者も現場の一プレーヤーとして、強い信念をもって「自動車立国日
本」を支える皆さんの活動の末端に加わらせていただきたいと願っている。
  
【退任のご挨拶】

 最後に、退任にあたってこれまで本メールマガジンをご愛読いただいた読者
の方々や弊社のコンサルティングサービスをご愛顧いただいたクライアントの
方々、その他ご指導・ご支援いただいた全ての関係者の方々に重ねて心から御
礼申し上げたい。

 同時に、筆者の後任である橋本勉新社長および住商アビーム自動車総合研究
所にこれまで以上のご厚情を賜れば幸いである。

 今後も住商アビーム自動車総合研究所をどうぞよろしくお願いいたします。

<櫻木 徹>

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