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コラム

日本車は、再びトレンドリーダーになれるか?

『日本車は、再びトレンドリーダーになれるか?』

◆独BMW、6シリーズの4ドアバージョン”6シリーズグランクーペ”を公開

 このクラスのクーペ市場は規模はそれほど大きくないが、すでにメルセデス
 CLSやアウディA7などの競合車がライバルメーカーから登場しており、実用
 性と個性的デザインの両立を求める顧客から支持を得ている。6シリーズグ
 ランクーペのボディサイズ…

                   <2011年12月13日号掲載記事>

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【「4ドアクーペ」というトレンド】

 BMW 「6 シリーズ」の新ボディ形状のモデルが発表となった。4 ドアボディ
ながら、ルーフの高さを押さえ、ウィンドウ部分の面積を減らし、C ピラーを
目立たなくしたもので、2 ドアクーペのようなスポーティなイメージのデザイ
ン。「4 ドアクーペ」と呼ばれ、欧州高級車を中心に最近トレンドとなってき
ている。「5 シリーズ」の派生車種ではなく、2 ドアクーペのイメージが強い
「6 シリーズ」の派生車種としたところからも、スポーティな路線で訴求して
いきたい意図が伺える。

 この流れを作ったのは、2004年に欧州で発売となったメルセデスベンツの先
代「CLS」と言われている。以降、VW 「パサート CC」(2008年~)、Audi A7
(2010年~)といったモデルが市場投入となり、4 ドアクーペが一つのボディ
形状の分類としての地位を確立しつつある。今回の東京モーターショーで展示
されていた、マツダ「靭(シナリ)」も、コンセプトカーではあるが、4 ドア
クーペであった。

 高級車ブランドを中心に広がることで、この新しいボディ形状がスポーティ
で高級感を持ったものというイメージの定着も期待され、このトレンドはしば
らく続くように思える。
  
【「4ドアセダン」の多様化】

 典型的なクルマの形としての 4 ドアセダンであるが、成長目覚ましい新興国
市場では根強い人気があるものの、先進国では年々そのシェアが減少傾向にあ
る。実際、国内で生産されている車種をボディ形状別に見てみても、2001年に
は約 24 %を 4 ドアセダンが占めていたが、2010年には 15 %程度までシェア
低下している。国内販売で考えれば、もっと減少していると類推される。

 多様化が進む市場の中で、消費者はそれぞれの実際の利用シーンに合わせて
小型ハッチバックやミニバンなどの利用目的や生活パターンに合わせた形状の
車種を選ぶようになる。こうした流れの中で、徐々に 4 ドアセダンを選択する
ユーザーが減少してきた。

 一方で、自らの利用目的や生活パターンを考慮した上で 4 ドアセダンを選択
するユーザーにとっても、明確なイメージを持った、より嗜好に合わせたもの
を求めるニーズも少なくないはずである。

 今回、BMW は従来モデルよりもスポーティな路線のセダンとして「4 ドアクー
ペ」モデルを発表したが、2009年には「5 シリーズ GT」という別のベクトルの
セダンも投入している。セダンと SUV の中間ぐらいの車高を持ち、車内空間の
快適性や荷室の利便性を高めたようなモデルである。

 もっとも、この「5 シリーズ GT」は、期待されていた北米市場での販売が伸
び悩んでいるという話もある。地域、市場によって求められるボディ形状の印
象が異なる。想定通りにはいかないからこそ、他社が手掛けていないボディ形
状やパッケージにチャレンジし、クルマ自体の魅力を高めていく努力を継続し
ていることに評価したいというところである。
  
【ボディ形状のトレンド】

 こうした新しいボディ形状、パッケージの流れが、最近日本車から生まれて
くることが減ってきているように思える。

 80年代以降、日本の自動車メーカーは、規模の面でもグローバルな自動車市
場の成長に貢献してきたが、こうしたトレンドの面でも新たな領域を積極的に
開拓してきたはずである。今では当たり前のようにどこの国でも手掛けている
乗用車ベースのミニバンや小型 SUV のトレンドを作り、多様化する先進国市場
でのニーズにいち早く対応してきたことも、日本メーカーの躍進を支えてきた
と考えている。1989年に発売となったマツダ「ロードスター」も、それまで低
迷していた小型 2 シーターオープンカーというカテゴリーを再起させる契機に
なった。少なくてもこの時代は、日本の自動車メーカーが世界のトレンドリー
ダーだったはずである。

 少し毛色が違うかもしれないが、トヨタの二代目「プリウス」はデザインの
面でも一つのトレンドを作ったと言えるかもしれない。空力性能を重視して、
車体後部にかけてルーフがスラントしているデザインは、二代目「プリウス」
の空前の大ヒットを通じて、ハイブリッド車のデザインイメージとして定着し
たからこそ、ホンダ「インサイト」や GM 「シボレー・ボルト」も似たような
形状に行きついたとも取れる。2年前に以下コラムで紹介している通り、結果論
からもしれないが、こうしたボディ形状が環境技術の普及に貢献するという側
面もあるはずであり、これも一つのトレンドと言えよう。

『デザインが環境技術を普及させる?』↓
http://www.sc-abeam.com/sc/?p=304
  
【日本車は、再びトレンドリーダーになれるか?】

 現在、国内自動車メーカーを取り巻く環境は決して楽な状況ではない。一方
で、社会的な要請も踏まえ、環境技術、安全技術等を更に高度化させ、クルマ
自体の性能を高めていくことも求められている。

 そうした状況の中で、ボディ形状やパッケージにおいて思い切った挑戦をや
りにくいことは当然であり、他社が作ったトレンドに追従する方が賢明なのか
もしれない。しかしながら、いつまでも追従型のモデル投入を進めていては、
グローバル規模で激化する海外メーカーとの競争環境において、苦戦すること
にもつながりかねない。既に成熟した環境にある先進国市場は勿論、現在主戦
場となるつつある新興国市場においても、これからは各市場のニーズを反映し
た新たなボディ形状やパッケージが求められるようになる可能性が高い。

 今回の東京モーターショーにおいて、様々なコンセプトカーが提案されてい
たが、こうした新領域の開拓を進め、国内自動車メーカーに再びグローバル市
場のトレンドリーダーとしての地位を取り戻してもらうことを期待している。

<本條 聡>

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