新・業界ニュース温故知新 『東京モーターショー2011始まる』

 過去の自動車業界のニュースを振り返り、新たな気づきの機会として紹介し
ていたこのコーナーですが、新たな形態にリニューアルします。

 過去の記事で取り上げた内容を振り返り、現在の自動車業界と照らし合わせ、
新たな視点で見直していきます。

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『東京モーターショー2011始まる』

【参照記事】

『東京モーターショー2009について』

◆「ワールドプレミア」39台お披露目 プレスデー始まる

                                          <2009年10月22日号掲載記事>

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 東京モーターショー 2011 の一般公開に先立ち開催されたプレスデーに弊社
も訪問してきた。今回は冒頭の 1 クリックアンケートでも触れたように前回を
大幅に上回る開催規模となっている。

 前回の東京モーターショーについて弊社メールマガジンでは以下のようなコ
ラムを配信していた。

【前回の東京モーターショーに関するコラム概要】

 2009年開催当時は、自動車業界全体が厳しい経済環境下にあり、海外メーカー
だけでなく国内でも商用車メーカーや部品メーカー等多数の業界関係各社が出
展を見送る状況で、例年になく盛り上がりに欠けるイベントとなってしまって
いた。

 そうした中で出展内容を見ると多くが環境性能に関するものであった。一方、
2007年開催では、環境性能だけではなく安全や快適性能、クルマによって実現
するライフスタイルの多様化などにも注力していた。

 当然、環境対策は重要であるし厳しい財政状況の中ではどうしても内容を絞
り込む必要があったであろう。しかし、モーターショー開催の目的が「業界全
体として自動車業界の今後を示す場(当時行ったモーターショーの開催目的に
関する 1 クリックアンケート結果)」であることを考えると、モーターショー
は将来のクルマ社会の方向性を感じさせるもの、一言で言えば夢を与えるもの
であって欲しいと述べた。

(参照記事のコラムはこちら)
https://www.sc-abeam.com/sc/?p=247
 
【今回の東京モーターショー】

 今回、各自動車メーカーの展示車両を見ると、コンセプトカーではもはや環
境性能はベースであり、それにどんな新しい付加価値を提案できるかに各社の
取り組みがみられた。

 例えば EV を取り上げてみると、クルマ好き層に対してスポーツを付加価値
として提案している日産の「エスフロー」やホンダの「EV-STER」などが挙げ
られる。

 また、都市化の進展や高齢化社会を見据えて EV コミューターとしての役割
を提案している日産の「ピボ 3」やホンダの「マイクロコミューターコンセプ
ト」、スズキの「Q-コンセプト」、ダイハツの「ピコ」などが挙げられる。

 もう一つは「つながる」機能である。日産は「ピボ 3」でスマートフォンと
連携して自動運転 AVP (オートマチック・バレー・パーキング)を提案してい
る。トヨタも「Fun-Vii」を出展している。

 「Fun-Vii」は、若者が携帯電話には月 1~ 2 万円を支払う一方でクルマに
関しては月 5 千円のローンも組まないという風潮に、豊田社長からのスマート
フォンにタイヤが着いたらどうなるだろうかという問い掛けが発端となったプ
ロジェクトである。

 同車には、ボディー全面をディスプレイ化しスマートフォンからボディーカ
ラーや表示項目を自由に変更できる機能や周辺の車両やインフラと協調し交差
点の死角にいる車両の事前察知、友人の車両とのコミュニケーション機能など
が盛り込まれている。

 トヨタでは電動化や IT 化を活用してパーソナルモビリティとしてのクルマ
の多様性や価値を増大するという明確なビジョンを掲げている。

 今回のモーターショーのシンボルイベントとされる「SMART MOBILITY CITY
2011」でも、クルマとクルマや人、家、インフラと「つながる」ことで、環境
や安全、快適・利便性能を向上させていくという内容が打ち出されている。ま
た、震災で三菱の「i-MiEV」を始めクルマが電力供給者としての役割を果たし
たが、非常時だけでなく日常から電力供給者としての役割を果たすという内容
も打ち出されていた。

 「つながる」は中長期的な観点でクルマの新たな価値を提案していくための
主要な取り組みテーマの一つであろう。

 コンセプトカーから市販前提車や近日発売を控えた出展車両に目を移すと、
将来に繋がっていく幾つかのアプローチがみられた。

 燃費性能を一段と高めていくアプローチでは、ガソリンエンジン車の燃費性
能向上の加速に注目したい。市場では「第三のエコカー」という呼び方も出て
きているが、10 ・ 15 モードで 30km/L というレベルが特別なものではなくな
ってきてくる。今年、スカイアクティブエンジン搭載のマツダ「デミオ」やエ
コアイドル搭載のダイハツ「ミライース」が注目を集めてきたが、このレベル
の新型車の投入を各社が進めてくる。 今後発売が予定されているのの中でも、
三菱「ミラージュ」(30.0km/L)やスズキ「アルトエコ」(30.2km/L)など、
続々と市場投入が進む見込みである。

 一方で、走りを改めて追求していくアプローチでは例えばトヨタとスバルの
共同開発車「86 (トヨタ)・ BRZ (スバル)」が挙げられる。少し話しがそ
れるが同車は、サーキット走行データをゲームソフトの「グランツーリスモ」
に移すことが可能でリアルとバーチャルが「つながる」機能も持っているよう
だ。

 将来的にはコンセプトカーに見られるように燃費性能のアプローチと走行性
能のアプローチが融合し高い次元で燃費性能と走りを両立するクルマに繋がっ
ていくと思う。

 また、燃費性能とそれ以外の価値を両立していくアプローチでは例えばトヨ
タの小型 HV 「アクア」が挙げられる。同車は燃費性能もさることながら「カ
ローラ」と同等以上の居住性やゴルフバックを 3 つ積めるラゲッジスペースを
確保しており燃費性能と快適・利便性能の両立と捉えられる。もともと走りの
要素が強いマツダも「CX-5」に「SKYACTIV」技術を全面採用し燃費性能を高め
ている。このアプローチも更に高い次元での両立を目指している。
 
【国内市場の活性化に向けて】 

 今回のモーターショーは、環境や安全技術によりクルマ自身が地球環境に悪
影響を与えていることや事故等で尊い人命を失っているというネガティブな要
素の解決策が提案されていた。

 それと共に、トヨタのコンセプトである「FUN TO DRIVE,AGAIN 」に代表され
るようなクルマ自身が持つ楽しさや、クルマと人などが「つながる」ことによ
りライフスタイルが広がる喜びといったポジティブな性質を更に高めていくこ
とを見せてくれたと思う。

 飽和した国内市場を活性化していくためには、こうした提案を継続していく
ことが重要だと思う。開催にあたり自工会の志賀会長は東京モーターショーを
「技術立国・日本」のシンボルと位置づけ、世界一のテクノロジーモーターシ
ョーを目指すというコメントを寄せている。

 今後、例えば以前の弊社メールマガジン「仲間意識を醸成するクルマ」で述
べた「つながる」機能の具体化などは国内市場を活性化していくことに繋がる
と考える。

(「仲間意識を醸成するクルマ」の詳細はこちら)
https://www.sc-abeam.com/sc/?p=1170

 残念ながら、米ビッグ 3 やイタリアなどの自動車メーカーは中国のモーター
ショーに参加する一方、今回の東京モーターショーへの参加は見送っている。

 確かに市場規模(量)で見れば中国と比べ日本は小さいし今後の大幅な成長
も見込まれない。しかし、例えば高齢化社会や世界一目が肥えていると言われ
る消費者など日本市場の特性を活かし、日本市場がグローバル展開に先駆けて
新技術・製品を導入する場・役割となれば、また状況は違ってくると思う。質
の革新による活性化を目指していきたい。

<宝来(加藤) 啓>