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コラム

韓国自動車メーカーのジレンマ

『韓国自動車メーカーのジレンマ』

◆現代自グループ、今年販売 650 万台に上積み。
 
 韓国の現代自動車グループは 2011年通年の世界販売計画を年初の 633 万台
 から 650 万台以上に上方修正したと明らかにした。米国や中国など主要市場
 の販売が好調で前年比では 13 %増となる。
                  <2011年10月30日日本経済新聞朝刊> 

◆欠陥苦情相次ぐ韓国車、年初来2940件。

 韓国消費者院によると、今年1-10月に受理した自動車の欠陥に対する消費者
 からの苦情件数は、前年同期比1.8%増の2940件だった。(韓国国内市場)
                     <2011年11月18日号掲載記事>

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 今年 9月読者に 1 クリックアンケートで韓国自動車メーカーについてお聞き
した。
http://www.sc-abeam.com/sc/?p=5885  

 グローバルな販売シェアで既に凡そ8%にまで到達している現代自グループ
は「開発・製造品質」や「コスト競争力」「マーケティング・デザイン」等で
進捗著しいものがあり日系自動車メーカーにとって大きな脅威となっている、
との声が多く寄せられた。

 韓国自動車メーカーの躍進は強まることはあっても当面揺らぐことはないよ
うに思われる。しかし、果たしてその足元は盤石であろうか、検証してみたい
と思う。

 
【韓国自動車市場の変化】

 今年 10月の韓国国内新車販売台数は 12 万 1500台で前年同期比 9 %減とな
った。(韓国自動車工業協会)

 理由は世界景気の減速による韓国市場の冷え込みと分析されている。また、
ウォン安が輸入コストを引き上げ、物価高を招き、家計を圧迫、自動車の購買
意欲を低下させているのも原因の一つと指摘されている。 
 
 しかし景気減速ばかりが販売減少の原因ではないようだ。

 注目すべきは同国の輸入車の増加である。韓国の 10月の輸入車登録台数は前
年同期比で 9 %増えている。輸入車は一貫して増加しており、1~ 10月の累計
は8 万 7900台で前年同期比 19 %増だ。

 輸入車増の背景にはこれまで保守的だった韓国ユーザーの志向の変化が挙げ
られよう。

 韓国市場は現在 94 %のシェアを韓国自動車メーカー(韓国 GM を含む)が
握っている。こういった半ば閉ざされた寡占状態の中で高止まりしている販売
価格、或いは充分とは言えない顧客サービスにユーザーは不満を募らせている
とされる。

 韓国自動車市場は白地図を埋めていく成長期を既に終え、多彩で稠密な色彩
を要する日本・欧米型の成熟市場へと移行しつつある。
 
【米韓FTA】
 
 米韓 FTA が韓国の国会で可決されれば両国の自動車に係る関税は将来撤廃さ
れる。
 
 FTA の締結によって韓国自動車メーカーは米国市場を席巻するのでは、とも
囁かれている。今年 9月の米国市場における現代自グループの新車販売シェア
は 8.3 %でホンダ(8.5 %)とほぼ同等である。2.5 %の関税が撤廃されれば
更なる販売増につながることになろう。

 北米での現代自グループの生産台数は全自動車メーカーの凡そ 4 %だ。ざっ
くり販売台数の半分を韓国からの輸入で手当てしている状況といえる。更なる
輸出を促進する韓国側にとって米韓 FTA のメリットは明白で日系メーカーにと
っては大きな脅威である。

 ただ、一方で無視できないのが韓国側の 8 %の輸入関税だ。これが撤廃され
れば米国製自動車の対韓輸出も活性化しよう。

 特に 6 重苦とも 7 重苦とも言われる日本国内の厳しい環境下にある日系メー
カーにとっては米国の生産拠点を活かすチャンスとも言える。

 トヨタは既に米国製シエナの韓国での販売を開始し、カムリの輸出も検討中
と伝えられる。ホンダも米国からの対韓輸出を検討中という。関税は年明けに
半分に、 5年後には撤廃となる予定だが、 150 万台の韓国市場を攻略する意義
は小さくないだろう。

 韓国自動車メーカーはこれまで国内で稼いだ利益を元手に世界市場に進出、
競争力を高めてきたとされる。 

 韓国国内市場の不透明感、ユーザーの輸入車への志向の変化、米国製日本車
の攻勢と韓国自動車メーカーの経営基盤は大きな岐路にさしかかっているとも
言えよう。
 
【韓国自動車メーカーのジレンマ】
 
 冒頭の記事は最近の韓国製車両の品質状況の一端を表すものである。大半は
騒音や振動によるクレームとされるが、メーカーが欠陥を認め部品交換や無償
修理に応じるケースが 90 %に上るという。

 海外では品質向上が目覚ましい韓国メーカーであるが、お膝元ではまだ品質
問題を抱える一面を持つということだろうか。

 現代自グループが世界屈指の自動車メーカーとなった今、韓国ユーザーの目
も厳しくなっている。競争の激化で収益率の低減が予想される韓国市場ではあ
るが、高いレベルのシェアを維持していくためには今後一段の投資が必要にな
ってこよう。

 加えて負担になってくると思われるのが新技術への開発投資である。

 現代自の研究開発投資は 2009年でトヨタの 5分の 1 程度だ(両社アニュア
ル・レポートより当時の為替レートで計算)。

 韓国自動車メーカーはこれまで先を行く欧米や日系自動車メーカー夫々の良
い所を巧く効率的に吸収し競争力をつけてきたとされる。追う者の強みを最大
限活用してきたと言えよう。

 しかし、現代自グループとして今後更に世界市場でのシェアを高め、収益力
を向上させていくには、独自技術の開発が不可欠だ。燃料噴射ポンプ/インジ
ェクター、エンジン制御ユニット、排ガス浄化装置等、まずは現在韓国メーカー
が外国に頼っている内燃機関の基盤技術で独自性を打ち出すための開発投資が
必要であろう。

 更には、ハイブリッドや電気自動車等の次世代自動車の領域で日系メーカー
を凌ぐ技術を確立していくことも求められよう。このためにはより膨大な投資
が必要で負担は増す一方と思われる。

 日本サイドからは順風満帆とも見える韓国自動車メーカーだが、視点を変え
てみると必ずしもそうとは言えない部分もあるようだ。頂上に近づくほど、越
えなければならないハードルは高くなる、ということだろうか。

<櫻木 徹>

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