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コラム

車両予防安全技術の将来動向について

今回は、「車両予防安全技術の将来動向」をテーマとした以下 4 問のアンケー
ト結果を踏まえてレポートを配信致します。

http://www.sc-abeam.com/sc/library_s/enquete/5868.html

 ・「将来的な交通事故発生件数の動向について」
 ・「今後より一層期待するアクティブ・セーフティ技術について」
 ・「アクティブ・セーフティ技術の一環として、普及を期待する ITS 技術」
 ・「アクティブ・セーフティ技術の普及促進の為に最も重要な項目について」

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 日本国内における交通事故発生件数は、1970年代後半(46 万件強)以降増加
の一途を辿り、2004年には約 95 万件に達した。(財団法人 交通事故総合分
析センターのデータに基づく。以下同。)

 1970年代後半には 約 4 千万台であった国内の車両保有台数(2 輪車含む)
が、2004年には約 9 千万台へと倍以上に増えており、交通事故発生件数の増加
をもたらした大きな要因と考えられる。

 しかしその後の交通事故発生件数は、車両保有台数がほぼ横ばいであるのに
対し、2010年には約 73 万件弱まで減少している。運転機会そのものの減少や、
運転マナーの全体的な向上、悪質運転の取り締り強化など様々な要素が考えら
れるが、21 世紀に入り製品化が加速しているアクティブ・セーフティ技術に代
表される安全技術の進化と普及も、交通事故発生件数減少の一要素として捉え
る事が出来よう。
    
【将来的な交通事故発生件数の動向について】

 先日、日産自動車から公開された最新安全技術(ペダル踏み間違い事故軽減
技術等)などのように、今後も様々なアクティブ・セーフティ技術の市場投入
が予想される。これらの技術が、将来的な交通事故発生件数へどのような影響
を与えると思われるかを、皆様にヒアリングした結果は以下のようになった。

 ・「減少傾向となる」  :47 %
 ・「増加傾向となる」  :26 %
 ・「変化なし」  :27 %

 「変化なし」又は「増加傾向」を選択された方の合計が半数を越え、技術過
信や高齢者の増加によるドライバーの運転能力低下を危惧されているご意見も
複数頂いた。当然の事ながら、悪質運転等によるドライバーの運転操作ミスな
ど、全ての事故発生要因を技術でカバーする事は出来ない。ドライバーの節度
ある運転は、事故を起こさない為の大前提である。

 一方で「減少傾向」を選択された方も半数近くを占めた。上述したように事
故発生件数減少の要素は、アクティブ・セーフティ技術の導入のみではない。
しかし、種々の事故状況解析に基づき開発されているアクティブ・セーフティ
技術は、将来的な事故件数低減に大いに寄与出来るであろうとの期待感は強い。

 連日のように流れる交通事故のニュースを聞く度、アクティブ・セーフティ
技術があれば、と思うような事故も少なくない。
  
【今後より一層期待するアクティブ・セーフティ技術について】

 それでは、今後より一層期待するアクティブ・セーフティ技術は何だろうか。
皆様にお聞きした結果は以下のようになった。

 ・「カメラ/レーダーを用いた周囲環境の把握と、車両運動制御への連動」
        :27 %
 ・「センサーを用いた車両状態の把握と、異常時の車両運動制御への連動」
        :19 %
 ・「インフラとの連携による他車両の存在把握と、車両運動制御への連動」
        :24 %
 ・「ドライバーの運転状態検知と、車両運動制御への連動」
        :17 %
 ・「その他」       :13 %

 アクティブ・セーフティ技術は、以下の 2 種類に大別出来る。

 1.車両単独で、自車状況を把握する技術
  (カメラ/レーダー/センサーを使用した技術など)
 2.インフラや他車との情報連携により、自車状況を把握する技術
  (ITS 技術など)

 上記アンケート結果からは、ドライバーの運転状態検知も加えると、「1.車
両単独で自車状況を把握する技術」へ期待されている方が合計で 6 割を越えた。

 インフラ連携等の複雑で広域な評価は必要なく、車両単独での開発・評価が
主体となり、製品化しやすい事が大きな理由と思われる。また、車両単独で事
故低減に寄与出来る部分がまだまだ残されている表れでもあろう。

 その中でも、「カメラ/レーダーを用いた周囲環境の把握と、車両運動制御
への連動」を選択された方が最も多く 27 %に上った。交通事故分析センター
のデータによると、2010年の交通事故発生件数 72.8 万件の内、事故類型別で
は「追突事故」が最も多い 23 万件強を占める。ドライバーの前方不注意が主
要因として考えられ、その不注意を補う「ドライバー以外の目や感覚」に対す
る期待は大きい。既に富士重工業の「アイサイト」で具現化されており、今後
の更なる進化が期待される。

 このようにアクティブ・セーフティ技術とは、ドライバーの状態や運転技術
を自律的に支援するシステムであり、まさに「二つ目の知能」と言えよう。

 クルマは総重量 1 トンを超え、「人間」よりも遥かに速いスピードや積載能
力を備える「動物(動く物体)」である。これまで、この「動物」に備わって
いる認知/判断能力は「人間」に備わっている能力に比べ遠く及ばなかった。

 しかし IT の発達と共に、この「動物」に対し様々な能力を持たせる事が可
能になりつつある。それが、カメラという「目」であったり、センサーという
「バランス感覚や嗅覚、聴覚」であったり、データ信号(有線・無線問わず)
という「神経」であったりする。

 そして、それら「神経」により集積された情報を基に、ドライバーという
「一つ目の知能」の補助をしたり、時には「判断能力」まで持って、車両をコ
ントロールしたりする。(中には、アラウンドビューモニターのように、「人
間」の能力を越えているものも存在する。)

 これは、その昔移動手段として主に使われていた「実際の動物(馬や牛やラ
クダや象など)」への回帰でもあり、「一つ目の知能」であるドライバーのコ
ントロールミスをどの程度までカバー出来るのか、非常に興味深い。
  
【アクティブ・セーフティ技術の一環として、普及を期待する ITS 技術】

 上記、今後期待するアクティブ・セーフティ技術の設問で、24 %の方が選択
された「インフラとの連携による他車両の存在把握と、車両運動制御への連動」
についても、2006年の「ITS 推進協議会」設立以降、大規模実証実験等による
検討や実用化が進められている。

 単に「ITS 技術」といっても幅広く、個別には様々な項目が評価されている
が、大きく「路車間・車車間・歩行者」という 3 システムに大別した際、どの
システムに最も普及を期待するか、皆様お聞きした結果は以下のようになった。

 ・「路車間通信システム」 :34 %
 ・「車車間通信システム」 :28 %
 ・「歩行者通信システム」 :22 %
 ・「その他」   :16 %

 路車間通信システムの普及に対する期待度が最も高かったが、票は拮抗して
おり、総合的にどのシステムに対しても期待度の高い事が伺える。

 最も票を集めた「路車間通信システム」については、今年の 7月 1日より都
内 7 箇所、神奈川県内 8 箇所で次世代 DSSS (Driving Safety Support System)
と呼ばれる安全運転支援システムが、パイロット的に運用開始されている。

 このシステムは、道路側に設置された光ビーコンからの危険要因情報がまず、
受信機能を備えた車載機(VICS 対応カーナビ)に送信される。車載機は、受信
した情報をもとに自車の走行状態と照らし合わせ、必要な場合、ドライバーに
注意を促すシステムである。本年中に効果測定/有効性検証を行った後、全国
展開を図る予定であり、特に交通事故の多い交差点等への普及が期待される。

 また、移動体同士の「車車間/歩行者通信システム」についても、実証実験
は進んでいるが、電波の送受信技術や精度(混線回避)などの課題の他に、本
当に危険な時にのみドライバーに情報提供する為の、情報の取捨選択という人
間工学的な課題も残されている。

 特に移動体同士の通信では、相手側車両(歩行者)にも受発信機能がある事
が前提であり、自車に装備すれば良いだけではない。普及という観点からは、
まず「路車間通信システム」が先行すると思われる。
  
【アクティブ・セーフティ技術の普及促進の為に最も重要な項目について】

 最後に、アクティブ・セーフティ技術の普及促進の為に最も重要と思われる
項目について、皆様にお聞きした結果は以下のようになった。

 ・「各技術のプロモーション」   :21 %
 ・「技術開発による低価格化」   :26 %
 ・「政府や保険機関による推奨活動」  :17 %
 ・「政府による法制化」   :26 %
 ・「その他」     :10 %

 ここでは、「技術開発により低価格化」と「政府による法制化」が最も票を
集めた。既に実用化されているアクティブ・セーフティ技術は種々存在してい
るものの、上級グレードにしか採用されていない技術も多い。

 日本自動車工業会のデータによると、2009年における「横滑り防止装置(ESC)」
の乗用車への装着率は国内生産台数基準で 18.6 %に留まっている。今後、
2012年 10月(軽自動車は 2014年 10月)以降の装着義務化の流れを受け、ボリ
ューム効果による低価格化も期待出来る。

 但しこの ESC に関しても、世界で始めて実用化されたのは 1995年であり、
日本で法制化されるまで 15年以上を要した事になる。直近数年の間に開発され
市場投入された最新のアクティブ・セーフティ技術に対して、すぐに法制化さ
れ採用ボリュームが拡大する事は難しいだろう。

 新しいアクティブ・セーフティ技術が、消費者に広く認知される為にはやは
り「各技術のプロモーション」も欠かす事が出来ない。複雑化する機能をより
分かりやすく消費者に伝えると共に、装着している事のメリット(事故低減へ
のメリット)を肌で感じて頂く事は、販売促進の為の重要なファクターである。

 今月末より第 42 回東京モーターショーが東京で開催される。最新の環境対
応技術と共に、安全技術に関しても大きなアピールの場となろう。

 「車両予防安全技術」の進化は、まさに「車の IT 化」に基づくものである。
ITS 技術を含む「車の IT 化」はご周知の通り全世界的な流れであり、EV や
PHEV などの次世代車両の普及や、スマートグリッドへの車両の取込み、そして
安全技術の普及など様々な観点から取り組まれている。

 更なる「車の IT 化」を睨み、各自動車メーカーは IT 産業との連携強化も
急速に進めている。先週、トヨタ自動車が、米インテルとの車載情報システム
共同研究に着手する事を発表した。日産・ルノーもシリコンバレーに開発拠点
を設置し、自動車とインターネットの接続をベースとした新規サービスの開発
を強化する。

 安全技術の高度化を含めたこのような「車の IT 化」は、単独車両の開発の
みに留まらず、複数の車両連携やインフラ連携など評価検証項目も多く、開発
規模は大きい。また、特に他車と情報をやり取りするようなケースでは、送受
信情報断絶などに対するフェイルセーフの考え方も難しい。交通事故に直結す
るような情報であれば尚更である。

 ドライバーがあまりに IT 技術を過信する事は禁物であるが、進化するアク
ティブ・セーフティ技術などにより 1 件でも多くの事故が未然に防がれ、交通
事故のニュースを見かけることのない時代を後世に残していきたいものである。

                                                  

<川本 剛司>

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