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コラム

緩やかな提携時代の流儀

◆スズキ、独フォルクスワーゲンAGとの業務提携および相互資本関係を解消
 自主的な経営判断にマイナスの影響が懸念されるため

 スズキは9月12日、フォルクスワーゲンAGとの業務提携および相互資本関係
 を解消することを発表した。両社は、2009年12月9日に包括的な提携関係を
 構築することで合意。2年弱の期間の協議を行ったものの、業務提携および
 相互資本関係を解消することを取締役会で正式決定した。

                   <2011年09月13日号掲載記事>

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【スズキと独VWの提携関係】

 この二週間、様々な形で報道されているが、スズキと独 VW との提携関係は、
修復不能なところまできているようだ。二年前の提携時の発表では、お互いに
独立した対等なパートナーとしての提携ということが強調されていた。提携当
時は、再三両社で議論を重ねて、そういう形で発表したのであろう。

 二年前に、筆者は以下コラムでこの提携関係を紹介している。

 『業界再編の目的の変化を考える』
http://www.sc-abeam.com/sc/?p=238

 この中で、今回の提携にあたり、両社は、商品ラインナップや生産・販売地
域の相互補完と、環境技術への共同対応の二つを提携の目的に掲げていること
を説明した上で、どの側面も効果が期待されるものであるが、効果が得られる
かは両社の舵取り次第、という意見を述べていた。

 現実的にも、環境技術開発における支援を期待していたスズキとは裏腹に、
世界のトップメーカーになるための低価格車・小型車技術・生産や新興国戦略
でのシナジーという独 VW 側の狙いは、子会社化ならいざ知らず、対等なパー
トナーとの提携関係を前提に考えるのは、ハードルが高く、具体的な形が見え
にくいモノであったのかもしれない。両社の出資比率が、独 VW が約 19.9 %
に対し、スズキは約 1.5 %というアンバランスであったことも、お互いの意識
のズレに影響したはずである。

 提携解消を発表したスズキに対し、独 VW 幹部はスズキ株式を継続保有する
意図の発言もしている上に、買い増しするのでは、という報道も出てきている。
為替を考慮しても、提携当時より現在の株価が低いことも一つの障壁になろう。
両社の意向に大きな乖離があるのは明らかであり、今後議論が長期化する可能
性も高い。

 ダイムラー・クライスラーの提携解消以来、自動車業界の再編のトレンドと
して語られてきたいわゆる「緩やかな提携」の中でも、その代表例として語ら
れてきたスズキと独 VW の提携関係であるが、今回は、こうした提携関係につ
いて昨今の情勢を踏まえて再考してみたい。
 
【緩やかな提携は原点回帰】

 「緩やかな提携」であるが、ここ数年に限った話ではなく、昔から具体的に
進められてきたものも少なくない。車両の OEM 供給による相互補完やエンジン
供給などは、その最たる事例であろう。もっと時代を遡れば、日本の自動車メー
カーも、欧米自動車メーカーとの技術提携で力をつけていた時代もあったし、
日本メーカーが、韓国やその他新興勢力に技術提携で支援していた時代もあっ
た。政策的に義務付けられたものではあるが、特定市場への対応のための提携
ということでは、中国での地場メーカーとの関係も、一つの派生形とも言える。

 90年代後半から、「400 万台クラブ」という言葉と共に、「規模追求型の資
本提携」がトレンドとなったものの、ご承知の通り、必ずしも成功に至るわけ
ではなかった結果を踏まえ、近年の「緩やかな提携」が増加傾向にあると考え
る。そういう意味では、この「緩やかな提携」は、原点回帰と捉えることもで
きるであろう。

 グローバル化と共に、市場、商品の多様化が進む自動車市場の中で、各自動
車メーカーも、全方位戦略を取ることはかなり難しくなってきている。結果、
同業といえども、それぞれのメーカー毎に戦略も多様化しており、「規模追求
型の資本提携」が馴染まなくなってきていると考えられる。むしろ、自社の強
み・弱みを踏まえて、自社の強みを活かし、弱みを補う形の相互補完を志向す
る方が自然であり、その結果が「緩やかな提携」ブームの再来なのであろう。
 
【資本提携の功罪】

 「緩やかな提携」で成否のカギを握るのは、具体的な提携成果を実現できる
かどうかであり、その規模や資本関係ではないと考えている。誤解を恐れずに
言うなら、資本関係ありきで考えるべきではないということではないだろうか。
株式の持ち合いを伴うケースにおいて、提携関係の象徴という説明をされるケー
スが少なくないが、「象徴」という意味合いを超えた持ち合いを行うことで、
お互いの意識に乖離が生じることも予想できる。

 例えば、富士重工の場合、トヨタと資本提携したことにより、共同での車両
開発、軽自動車の OEM 調達、北米工場の活用等の具体的な提携成果が見えつつ
ある一方、この資本提携が中国進出計画のネックとなっているとも言われてい
る。仮に資本提携を伴わない形で、それぞれのテーマごとに個別に提携してい
れば、こうした事態を招かなかったのかもしれない。

 この「緩やかな提携」を最も上手く活用しているのは、日産かもしれない。
ルノーとの資本提携から 10年を過ぎ、その株式の相互保有関係自体は今後検討
の余地もあるだろうが、ルノーとの提携以降の日産の復活を見る限り、最も成
功した「規模追求型の資本提携」と言えるだろう。一方で、ルノー・日産とし
てダイムラーと提携し、EV ・小型車・高級車の共同開発やエンジンの相互供給
を進める一方、日産として三菱自工と提携し、軽自動車の共同開発や相互への
OEM 供給による車種ラインナップ補完を進めるなど、複数のメーカーと「緩や
かな提携」を実現させている。

 スズキ自身も、伊フィアットとの関係の方が居心地が良いところなのかもし
れない。今回の独 VW との関係の中でも議論に上がっている通り、2013年から
伊フィアット子会社からディーゼルエンジンの供給を受けることを今年 6月に
発表している。スズキと伊フィアットは、2006年からハンガリーのマジャール
スズキで生産する両社の共同開発車スズキ「SX4」・フィアット「セディチ」に
フィアット製ディーゼルエンジンを搭載している他、インドのエンジン生産子
会社であるスズキ・パワートレイン・インディアでもフィアット子会社のディー
ゼルエンジンをライセンス生産している。資本関係はなくても、相互に具体的
な提携成果が得られているからこそ、今回のエンジン供給の話しにつながって
いると考えられる。スズキが独 VW に対して主張する「対等なパートナー」と
しての関係を伊フィアットとは構築できているともいえる。

 逆に、独 VW の立場に立って考えれば、前述のアンバランスな資本関係がな
ければ、こうした問題に発展していなかったことも想像できる。独 VW も、株
主に対してスズキへの出資意義を説明する必要もなかったかもしれないし、問
題となっている独 VW の年次報告書に「財務的にも経営方針に重要な影響を与
えるパートナー」と記述する必要もなかったかもしれない。

 資金面での支援という観点では、必ずしも同業メーカーに頼る必要もないだ
ろう。金融・投資機関や異業種の事業パートナー等、自動車業界でニュートラ
ルな立ち位置を担保できるパートナーの選択肢は他にもあるはずである。

 いずれにしても、資本提携には、より慎重な判断と覚悟が必要となろう。
 
【緩やかな提携時代の流儀】

 2009年 12月にスズキと独 VW が提携した際の記者会見で、提携で具体的に手
掛けることに関して、鈴木会長からは「やることはいっぱいある。のんびりは
していられない。」という主旨の発言もあった。実際に議論されていた内容は
多数あったのであろうが、逆に捉えれば、その内容が広範囲にわたるものであ
ったからこそ、具体的な提携内容をなかなか進めにくかったのかもしれない。

 今回の一件に関し、鈴木会長は、「結婚して離婚するのと同じ。お互い縁が
なかったと笑って離れるのがいい。」という発言をされたことも報道されてい
る。「規模追求型の資本提携」時代のように、一夫一妻ではなく、結婚、離婚、
重婚、事実婚、夫婦別姓等々、様々な形で柔軟に対応するのが「緩やかな提携」
時代の流儀なのであろう。

<本條 聡>

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