走れば走るほど安全な社会を実現するクルマ

◆ホンダ、「インターナビ・ウェザー」の情報サービスを拡充

「インターナビ・プレミアムクラブ」が提供するサービス「インターナビ・ウェザー」に、カーナビ向けとしては世界初の「豪雨地点予測情報」と「地震情報」を追加し、7月5日よりサービスを開始する。

震度5弱以上の地震発生時に発生場所付近を走行している場合、車から自動的に家族などのメールアドレスに位置情報を送信する「位置情報付き安否連絡」のサービスも秋に発売する新型「フィット」から順次展開する。

ホンダが協力した独立行政法人 防災科学技術研究所の「災害時道路情報共有化に関する研究」では、被災地の道路が通行可能かどうかを把握するうえで、フローティングカーデータが有効であり、社会的な活用が可能なことが検証されたという。

<2007年07月04日号掲載記事>

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【ホンダのテレマティクスサービスの新機能】

ホンダは、今回、同社のテレマティクスサービス「インターナビ・プレミアム」の新機能のサービス開始を発表した。同社の「インターナビ・プレミアム」は、サービス開始から 5年が経つが、毎年新機能を追加しながら、同社が発売する新型車への投入を進めており、今年会員数は 50 万人を超えたという。同社が「フローティングカーシステム」と呼ぶプローブカー情報は、対象台数が増えれば増えるほど、その利便性や精度が向上するものであり、今後も更なる発展が期待される。

今回、ホンダが発表した新機能は以下 3 つであり、うち 1 つは、今月からサービスを開始し、残り 2 つは次期フィットに搭載される予定である。

(1)主要道リアルタイム更新(次期フィットに搭載予定)

目的地までのルート周辺にある新規開通した主要道路の地図情報を携帯電話通信でダウンロードし、最新の地図情報を用いた最適なルート誘導を可能にするものである。最新の情報と現在搭載している情報を比較し、変化のあった差分データについてのみを抽出することで、データ量を最小限に留め、携帯電話通信を用いた配信を可能にしたという。

最新の地図情報への更新をオンラインで行う機能としては、トヨタが先月発売した新型プレミオ/アリオンに搭載する「G-BOOK mx」に搭載して話題になったが、今回のホンダの「インターナビ・プレミアム」では、「道路開通とほぼ同時に」地図データの更新が完了するシステムとして「世界初」と謳っている。

(2)豪雨地点予測情報・地震情報提供(今月からサービス開始)

豪雨地点や地震地域など、運転に影響を与える可能性がある情報を事前に通知することで、危険回避、安全で最適なルート選択を支援するものである。豪雨情報については、昨年末からトライアル提供されていたが、今月から地震情報と併せて正式版としてリリースしたという。これまでも、台風の予測進路上に誘導ルートがある場合は、この台風情報を提供し、注意を喚起する機能が備わっていたが、今回、1時間 30mm 以上の豪雨や震度 5 弱以上の地震も情報提供することで、更に防災情報の内容を充実した。クルマの安全性能を高めるために、交通事故に関するものだけでなく、こうした防災情報の充実化の意義は大きいと考える。

(3)位置情報付き安否連絡サービス(次期フィットに搭載予定)

上記(2)の地震情報の対象エリアの付近にいる場合、予め設定しておいた家族等のメールアドレスに、自動で位置情報を送信するものである。加え、ドライバーが、ナビ画面から送信操作を行うことにより、安否情報も伝えることができるという。これまでも、メーデーシステム等の緊急時の通報システムは各社が開発・導入してきているが、こうした既存のシステムの付加機能として追加する形で、安いコストで実現できれば、標準搭載するクルマも増えると期待される。

【地図データをリアルタイムに更新する目的】

ところで、このカーナビの地図データをリアルタイムに更新する目的というところに着目したい。地図情報を最新のものにすることで、ルート案内を実際の道路状況に合わせて最適化できることは勿論であるが、その先で考えていることが、トヨタとホンダで若干違いがあるかもしれない。

トヨタの場合、早くからカーナビと連動する形での車両制御技術の開発を進めてきた。1998年に発売したプログレに搭載し、その後改良を加えてマーク II等にも搭載したナビ協調シフト(カーナビの地図情報を元に、カーブ手前のドライバーの操作に併せて自動でシフト制御する機構)や、2005年に発売したレクサス GS に搭載したナビ協調機能付減衰力制御サスペンション(センサーで感知した路面状況を地図データに記憶し、次ぎに同じ道を走るときに、そのデータに合わせてサスペンションを制御し、滑らかな乗り心地を実現する機構)を導入している。

ここから、トヨタは、カーナビ情報と走行制御を連動させることで、車両の安全性・快適性を高めることを目指している方向性が伺える。そのためにも最新の地図情報を得て、より精度の高い制御を実現することが必要となるのであろう。

一方、ホンダの場合は、これまでカーナビ情報と走行制御の連動という形の技術は発表していない。むしろ、今回の発表にあたり、災害時の道路崩壊情報を同社のプローブカーシステムからも収集し、災害自体の救援・復旧作業に役立てていく体制作りを、行政等と進めていくということを明らかにしている。同社が協力した独立行政法人 防災科学技術研究所の「災害時道路情報共有化に関する研究」では、被災地の道路状況を確認する上で、プローブカーデータが有効であることが検証されたという。同社は、今後、行政や、電気・水道・ガス等のインフラ関係の会社に対しても、このプローブカーデータを道路被害状況把握のために提供することを考えているという。

この取り組みは、クルマ自体の性能を高める取り組みではない。しかし、それ以上に重要な役割があるのではないかと考える。

【安全性能を追求する自動車メーカー】

トヨタの渡辺社長が語る「夢」として、以下のような理想のクルマ像を語っており、その「夢」に近づける技術開発をリードしていくのがトヨタの使命としている。実際、多くの方が何らかの形で目にしていくと思う。

・ 走れば走るほど空気がきれいになるクルマ
・ ヒトを傷つけないクルマ
・ 乗れば健康になるクルマ
・ 燃料を満タンにすれば世界一周できるクルマ

いわゆる、「環境」「安全」「快適」といったクルマの性能の目指すべき目標をわかりやすい形にした言葉であるが、この中で、「安全」という点に着目すると、「ヒトを傷つけないクルマ」とあり、つまり現時点のクルマは、ヒトを傷つける可能性を秘めたものであり、だからこそ、ヒトにとっての安全を究極を形で考えると「傷つけない」という形になったと想像する。

実際、交通事故死者数は 6年連続で減少し、2006年は 51年ぶりに 6 千人台前半にまで減少している。2012年までに 5 千人以下にするという政府目標にも着実に近づきつつある。しかし、依然として毎年数千人ものの方が犠牲になり、負傷者で言えば毎年 1 百万人超の方がいることを考慮すれば、決して楽観視できる状態ではない。

だからこそ、クルマの安全性能を高める取り組みが重要となっており、自動車メーカー各社も乗員の安全は勿論、歩行者等の安全にも注力している。

【社会の安全に貢献するという取り組み】

しかし、今回のホンダの取り組みは、少し違う観点で安全というものを考えている点に注目したい。

前述の通り、クルマ自体の安全性能を高めることは、喫緊の課題であり、目標は「ヒトを傷つけないクルマ」、つまり、事故等を未然に防ぐ、被害を最小限に留めるといった技術・取り組みが重要となっている。逆説的に考えれば、クルマ自体は、ヒトを傷つける可能性を秘めた、使い方次第では危険な存在であり、クルマが少なくなれば少なくなるほど、交通事故等の犠牲者が減少し、安全な社会が実現する、と言えなくもない。

一方で、今回、ホンダが提案する「災害情報の共有化」というテーマを考えると、データが充実すればするほど、その効果が高まるはずである。つまり、クルマが増えれば増えるほど、クルマだけに留まらず、社会の利便性・安全性向上に貢献するものであると考える。まさに、「走れば走るほど安全な社会を実現するクルマ」である。

実際、同社では、過去の災害を元に、その効果を検証した結果、十分なデータが得られたという。今後、メーカーの垣根も取り払い、自動車業界全体でこうした取り組みをすることも考えているという。

最近良く使われる言葉で、「サスティナブルモビリティ」という言葉がある。「環境」「安全」「利便性」等の観点から、社会や環境に優しいクルマを作ることで、将来的にも持続可能なクルマ社会を実現していこうというものである。今後、クルマが社会・環境と協調・融和して、持続的成長を遂げるために必要となるものは、まさに今回のようなことではなかろうか。

<本條 聡>