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コラム

スマートグリッド社会における自動車産業の役割について

 今回は、「スマートグリッド社会における自動車産業の役割について」をテー
マとした以下 4 問のアンケート結果を踏まえてレポートを配信致します。

http://www.sc-abeam.com/sc/library_s/enquete/5478.html

 ・「スマートグリッド社会に向けた、自動車に求められる役割の変化」
 ・「スマートグリッド社会の到来を見据えた、系統側に求められる役割」
 ・「東日本大震災の影響による、EV / PHV 普及時期の変化について」
 ・「早期確立を期待する、交通分野におけるスマートグリッド関連技術」

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【EV / PHV 普及時期に対する東日本大震災の影響】

 EV / PHV は従来より、低炭素社会実現を目指す運輸部門の主要な手段とし
て開発・市場投入が進められている。経済産業省主導の下に制定された「次世
代自動車戦略 2010」では、2020年時点で新車販売台数の 15~ 20 %を EV /
PHV が占める事を政府目標としている。(民間努力ケースでは、5~ 10 %)

 仮に 2020年の新車販売台数を 500 万台とすると、政府目標では 75 万台~
100 万台、民間努力ケースでは 25 万台~ 50 万台を EV / PHV が占める計算
となる。

 今回の震災を受けて、トヨタや三菱自動車が EV / PHV への非常電源機能導
入を発表する等、EV / PHV に対しては、単なる移動手段という枠を超えた付
加価値確保に対する動きが確認されている。

 一方で、短期的な EV / PHV の導入に関しては、現在の補助金を太陽光発電
などの次世代エネルギー源確保に振り向けた方が良いのではないか等の声も聞
こえている。

 このような背景を踏まえ、EV / PHV の普及時期が、震災を経てどのように
変化するのかを皆様にお聞きした結果は下記のようになった。

 ・「EV / PHV の普及時期は、当初想定よりも早くなる」  :40 %
 ・「EV / PHV の普及時期は、当初想定と変わらない」  :36 %
 ・「EV / PHV の普及時期は、当初想定よりも遅くなる」  :24 %

 普及時期が早まると回答された方が 4 割にのぼり、想定と変わらないと回答
された方を含めると、8 割近くにのぼった。

 先月発表された日産の中期経営計画には、EV の累計(2011年度~ 2016年度)
販売台数をルノーと合わせて 150 万台とする事が織込まれている。震災後に発
表されたこの計画は、全世界規模での 6年間の累計台数ではあるが、今後も変
わらず、EV 導入に力を注いでいく事が見てとれる。

 ※トヨタのハイブリッド車「プリウス」は、発売から 13年弱で世界累計販売
台数が 200 万台を突破した。(100 万台突破は発売から約 10年半)

 トヨタやホンダなども、2012年度には EV / PHV を市場投入する計画を発表
している。各自動車メーカは、震災前後でも変わりなく、EV / PHV を始めと
する環境対応車導入を、計画通り進めていくものと思われる。

 また、東日本大震災が引き起こした電力供給問題により、各産業界/法人/
家庭での節電意識は急速に高まっている。

 単なる電力消費量の抑制に留まらず、CO2 排出抑制効果の大きい原子力発電
の是非が問われる中、消費電力をマネジメントする事業への各産業界からの本
格参入が相次いでいる。震災後の電力供給問題を経験し、より一層電力マネジ
メントの重要性が高まった事の表れであろう。

 震災を経て、EV / PHV はこのような電力マネジメントの仕組みに、より一
層密接に取り込まれていく事が想定され、その融合性が非常に重要になってく
ると思われる。
 
【EV / PHV に求められる役割】

 今後需要が拡大すると思われる EV / PHV だが、スマートグリッド社会に向
け、どのような役割が求められているのだろうか。アンケート結果は下記のよ
うになった。

 (1)「移動手段としての役割に特化すべき」   :31 %
 (2)「選択肢 (1)に加え、非常時における電力供給者
    としての役割も有すべき」 :30 %
 (3)「選択肢 (2)に加え、日常から電力供給者
    としての役割も有すべき」 :25 %
 (4)「その他」      :14 %

 日常から電力供給者としての役割を有すべきと回答された方は 25 %に留ま
っており、6 割超の方が、主に電力消費者としての役割が重要であると回答さ
れた。(非常時のみ電力供給者としての役割を有すべきと回答された方も含む。)

 先日、三菱自動車が、航続距離 120km (JC08 モード)に抑えた 200 万円以
下(政府の補助金込み)の低価格版「i-MiEV」を発表した。まずは移動手段と
しての EV の地位確立に重心を置き、普及促進を狙っているものと捉えられる。
また、日産「リーフ」同様に、充電時間の予約機能が追加されており、電力需
要への配慮もなされている。

 一方で、電力消費者としての EV / PHV の台数が今後増加するのに伴い、消
費電力量増大は避けられない。25 %の方が、電力供給者としての役割も有すべ
きと回答されたように、台数普及の為には、段階的に電力供給者としての役割
を担っていく必要があると思われる。

 2014年度を目処に各地で推進中のスマートグリッド実証実験には、V2H
(Vehicle to Home) や V2G (Vehicle to Grid) のシステム構築も含まれて
おり、先行する EV / PHV の市場投入に際しては、将来的な電力供給者として
の役割や機能を視野に入れた普及が求められるであろう。
 
【系統側(住宅側)に求められる役割】

 また、EV / PHV の普及には不可欠である電力系統側に求められる役割につ
いての回答は下記のようになった。

 ・「充電接続機器の進化、多機能化(車両への電力供給・ハード面)」  :32 %
 ・「車両への電力供給バランス最適化(車両への電力供給・ソフト面)」 :14 %
 ・「自動車用バッテリを家庭内電力系統に接続するシステムの構築
   (車両からの電力供給・ハード面)」 :24 %
 ・「自動車用バッテリからの適正な充電可能電力量制御
   (車両からの電力供給・ソフト面)」 :14 %
 ・「その他」       :16 %

 半数近くの方が、車両への電力供給機能の進化(ハード面)・最適化(ソフ
ト面)を選択された。先の設問で 6 割の方が、EV / PHV には電力消費者とし
ての役割がまず必要と回答されており、系統側に対しても、EV / PHV が移動
手段としての地位を確固たるものにする為の機能がまずもって求められている。

 「次世代自動車戦略 2010」で提唱されているインフラ整備ロードマップでは、
2020年に普通充電器 200 万基、急速充電器 5000 基を目標として掲げている。

 トヨタや日産も実際に充電器開発に携わる等、コスト低減も含めた開発が進
められている。また、日産と JAF が充電機能付ロードサービスカーの実証運用
を開始する等、緊急時におけるインフラ整備に向けた取組みも進められている。

 ソフト面では、自動車各社が力を入れて取組んでいる HEMS (Home Energy
Management System) が代表例であろう。

 先月開催された「スマートグリッド展」でトヨタが展示していた HEMS では、
電力使用状況や、蓄電率、PHV の充電状況等が可視化されていた。地域での安
定的な電力利用を目指す「スマートビジョン」も展示されており、電力マネジ
メントの必要性が叫ばれている今、その有用性は高いと考える。
  
【早期確立を期待する、交通分野におけるスマートグリッド関連技術】

 最後に、現在国内 4 エリアで進められているスマートグリッド実証実験にお
ける交通分野での取組みのうち、早期確立を期待する技術をアンケートさせて
頂いた。上記の 3 つの設問を踏まえた結果は、下記のようになった。

 ・「自動車と電力インフラとの連携」    :27 %
 ・「蓄電池の定置用利用促進」     :22 %
 ・「車載器を通したEV/PHVユーザ支援」    :22 %
 ・「需要に応じた、交通分野のピーク分散化促進」  :16 %
 ・「その他」       :13 %

 各項目に大きな偏りはないものの、前述してきたような「自動車と電力イン
フラとの連携」に対する技術の早期確立を望む声が最も多かった。

 また、日産自動車とフォーアールエナジーが、日産リーフ用リチウムイオン
バッテリーによる電気自動車用充電システムの実証実験を開始したように、
「蓄電池の定置用利用促進」も実用化に向け大きく前進している。

 このような、特にハード面での新規技術やビジネスモデルの早期確立を望む
声に対し、車載器を通した EV / PHV ユーザ支援や、需要に応じた交通分野の
ピーク分散化促進等、ソフト面での早期技術確立を望む方も合わせて 4 割近く
にのぼった。

 相対的に、他産業との調整要素が多く比較的長期間を要するハード面の構築
だけではなく、短期間での実証/導入を目指す事が可能なソフト面の構築もま
た、EV / PHV の普及には欠かせない重要な要素である。

 今後増加傾向が見込まれる EV / PHV の開発にあたっては、目の前の課題を
1 つずつ解決し進化させていくという短期的なアプローチと、スマートグリッ
ドの中での自動車の位置付け(あるべき姿)を追求していくという長期的なア
プローチの双方を、同時並行的に推進していく事が求められる。

 特に、長期的なアプローチに関しては、各種規制への対応を始め、産業やメー
カの枠を超えた取組みが必要となる事から、自動車単体を開発する従来の形態
とは全く異なるプロジェクト推進力やマネジメント力が求められる事になるで
あろう。

                                                                                                  

<川本 剛司>

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