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コラム

(更新)11年度の国内新車販売動向に関する考察 - 5月の状況を踏まえて -

◆5月の新車登録、前年比37.8%減の14万2154台。9カ月連続減。5月では最低。
 減少幅は縮小、回復の兆しも。

                        <2011年06月01日号掲載記事>

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 本メールマガジンの Vol.309 号(4月 26日発行)にて、国内新車販売動向に
関するコラムを執筆した。今回は、まず当該コラムの内容を振り返り、5月の状
況を踏まえ、更新していきたい。

【Vol.309 号のコラム概要】

 10年度の国内新車販売台数(登録車+軽自動車)は、合計 460 万台、昨対比
94 %という結果となったが、上期と下期で動向が大きく変化した年であった。

 上期はエコカー補助金の効果により昨対比を上回る水準が続いた。下期に入
りエコカー補助金終了の反動により需要が落ち込み、昨対比を下回る水準が続
いた。その落ち込みが一服した矢先に今回の大震災が発生した。

 3月の新車販売台数は昨対比で 65 %となり、特に被害が大きいとされる岩手・
宮城・福島(以下、東北 3 県)では昨対比 38 %まで減少した。

 今後の動向は、震災前からあったエコカー補助金終了の反動減やクルマ離れ
の影響に加え、震災による減産や消費マインドの低下といったマイナス影響、
一方で復興需要によるプラス影響などを考えなければいけない。

(Vol.309号のコラムはこちら)
http://www.sc-abeam.com/sc/?p=5205

 
【生産正常化(減産)の状況】

 4月時点では、生産正常化までに年内一杯は掛かる見通しであったが、相次い
で前倒しの発表がされている。

 5月の各自動車メーカーの稼働率は平常時に対し約 50 %程度と言われている
が、6月にはトヨタと日産がほぼ正常化し、全体でも約 80 %の稼動、7月には
ホンダもほぼ正常化し、年度後半には各社増産に転じ、11年度通期では 800 万
台を確保する見通しという報道もある。

 夏場の電力不足など予断を許さないが、10年度の生産台数合計は 900 万台で
あるから、前年並みを基準とすれば、減産の影響は約▲100 万台と見られる。
また、10年度の実績では、生産台数の約半数が輸出向けなので、国内向けには
約▲ 50 万台の影響と見られる。

 ただ、自工会が発表した 4月の国内生産と輸出の実績を見ると、生産台数は
昨対比 40 %に対し、輸出台数は昨対比 32 %となっており、輸出台数の方が
減少幅が大きい。

 一部、輸出向けを減らし、国内優先で生産台数を振り分けている可能性も考
えられる。今後も、復興支援の一環として、国内の受注状況次第では同様の対
策がとられるかもしれない。その場合、前述した▲50 万台の国内減産影響を緩
和させることになるだろう。

 
【消費マインドの状況】

 新車販売台数は、3月は昨対比 65 %、4月は昨対比 53 %、5月は昨対比 67
%と推移しており、減少幅は縮小傾向にあるが、昨対比で約▲30 %の状況であ
る。

 減少の理由は、やはり減産による影響が大きいと想定されるが、消費マイン
ドの低下影響もあると思われる。

 日経ビジネスの調査では、被災地以外の地域でも自動車に対する家計消費が
10 %以上減少したという結果が出ており、自動車関連の消費が減退していると
いう点で、新車購入にも一定の影響がありそうだ(同調査ではガソリンなど日
常支出は自動車消費から除かれているように見られるが、車両本体に限らず用
品購入なども含めた自動車消費と思われる)。

 また、同調査によれば、消費が減少している 1 番の理由は経済・雇用の先行
き不安であり、すぐに解消されるとは考え難い。

 ただ、そうした中ではあるが、いわゆる輸入高級車は 月毎にバラツキはある
ものの、昨対比を上回る水準を確保しているブランドもある。BMW、メルセデス・
ベンツ(以下、MB)、Audi の販売状況(昨対比)は以下のとおりである。

                         3月     4月     5月
       BMW      92%   156%    88%
       MB       80%   106%   102% 
      Audi      102%   115%   121%

 輸入車は減産の影響を受け難いことに加え、受注と登録の時間差やモデルチ
ェンジの影響などもあると思うが、高級車を購入する層の消費マインドへの影
響は限定的なのかもしれない。

 
【復興需要の状況】

 東北 3 県合計の新車販売台数は、3月は昨対比 38 %、4月は昨対比 87 %、5
月は 90 %と、急回復している。

 県別に昨対比を見ると以下のとおりであり、特に宮城県では復興に向けた需
要が立ち上がっていると見られる。

                           3月     4月     5月
       岩手県      46%    85%    86%
      宮城県     31%   111%   112% 
       福島県      42%    62%    66%

 今回の震災で東北 3 県では約 40 万台(東北 3 県の年間新車販売台数の約
2年分に相当)の保有が失われたと言われ、復興需要の立ち上がり時期は原発の
影響などにより各県で不透明な部分は残るが、中古車に流出する分を考慮して
も、新車販売の回復傾向は続くのではないだろうか。

 
【11年度の国内新車販売台数見込みと今後に向けて】

 結果として、今年度の新車販売台数は何台程度になるかを弊社の 1 クリック
アンケートで聞いたところ、350 万台以上 400 万台未満と回答した方が一番多
かった(詳細は今月 21日発刊の「業界アンケート&レポート」にて取り纏める
予定である)。

 本アンケートは 5月 10日に行われたもので、その後、生産正常化前倒しの報
道が続いたため、現在では、二番目に回答数の多かった 400 万台以上 450 万
台未満が現実的なレンジかもしれない。

 一方で、生産や販売台数の量的な回復は、まずは復旧をした上で、中長期的
には質的な変化を伴って達成されるものだと考える。

 例えば、商品開発面では、震災による消費者の価値観の変化を踏まえなけれ
ばいけないであろう。Vol.313 号(5月 31日発行)の弊社 1 クリックアンケー
トでは、震災後、自動車の購入意思決定において、より一層重要になったと考
える要素として、一番に挙げられたのは、低燃費化であった。

 また、生産面でも、グローバル最適生産を考える上で、災害リスク対応とい
う因子が加わった。Vol.309 号(4月 26日発行)の弊社 1 クリックアンケート
でも今後、自動車メーカーが注力すべき取り組みとして、調達先の分散化や国
内・海外を含めた車両生産の分散化を挙げた方が多かった。

 つまり、震災前後で売れる自動車や、(同じ自動車であったとしても)生産
する地域、売り方など変わってくる部分があると思われる。今後の競争力に繋
げていくためにも、開発・生産・販売の各領域において、震災の影響による変
化を点検し、現在展開中、及び今後展開予定の戦略・戦術を見直していく必要
があるだろう。

<宝来(加藤) 啓>

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