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コラム

中国自動車市場 新車マーケティング戦略(3) 『科学的な価格設定手法による販売台数のハンドリング』

弊社親会社であるアビームコンサルティングが、モノづくりから販売、マーケ
ティングに至るまで、”次代”への示唆をさまざまな角度から提案していく。
 
アビームコンサルティング ウェブサイト
http://www.abeam.com/jp/
 
第 2 弾は、アビームコンサルティング P&T 事業部経営改革セクターの下寛和
が中国市場で自動車メーカーに求められるマーケティング戦略について 3 回に
渡って紹介する。今回はその最終回にあたる。

今回は、先回までの「商品開発」のテーマから離れ、『価格』が『販売台数』
に与える影響と収益の最大化という観点からコラムを投稿させていただきたい
と思っている。

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【需要と供給のバランス】

 読者の中にも自動車の購入経験がある方は多いだろう。私も一度、それも社
会人 1年目に購入した経験がある。この経験は、私にとって自動車の高い価格
設定を肌で感じる貴重な機会となった。同時に、自動車メーカーがどのような
手順で価格を設定しているのかについて、興味を持った。そこで今回は、自動
車の価格設定をコラムのテーマに取り上げてみたい。

 記憶は定かではないが、価格が「需要」と「供給」のバランスで決まるとい
うことをはじめて学んだのは高校の政治経済の授業であっただろうか。当時は
概念こそ理解できたが、現場感がなかったため、具体的に値付けの方法をイメー
ジすることは難しかった。しかし、いま振り返ってみると、この概念は自動車
にも当てはまっていることがわかった。一般的には自動車も、「需要 = 市場台
数」と「供給 = 生産台数」のバランスでメーカー小売希望価格が決まると言わ
れる。

 では、「需要」と「供給」の中身について、もう少し具体的に触れておきた
い。ある車種の「需要」は、「セグメント別の市場予測台数」に、想定される
「セグメントシェア」を掛け合わせて販売計画として取り纏められる。一方で、
「供給」は、設備の最大生産能力を上限に、どの程度の台数を生産するか、工
場またはライン単位の生産計画として纏められる。

 上記の販売計画と生産計画を突き合わせて、価格設定が行われるわけだが、
その前提には、いくらの「価格」で市場に投入すれば「何台」売れるという価
格と販売数量の関係が潜んでいる。したがって次項では、その点について解説
したい。

 
【価格と販売数量の関係】

 価格と販売数量は表裏一体の関係にある。同じ環境下にある限り、特定の商
品の価格を上げれば販売数量は減り、逆に価格を下げれば販売数量は増える。
単価の安い商品や販売周期の短い商品ほど、その傾向は強まる。一方で、自動
車のような高価かつ販売周期の長いものは、価格による販売数量の変動が相対
的に小さい。同じ自動車の中では、小型車ほど、価格変動による販売変動は大
きく、高級車ほど小さくなるのが一般的である。

 自動車も、小型車と高級車では特徴が違うものの、一般的に安く販売すれば
台数は稼げる。一方で安く販売すれば、台当たりの収益が減少する、生産能力
が追いつかない、不測の事態で販売不振となった場合に莫大な在庫を抱えるリ
スクがあることも心得ておく必要がある。価格は、販売台数を調整するインジ
ケーターであり、一度付け方を誤ると企業活動に多大な影響を与えることを認
識しておかなければならない。

 では、どのような基準で価格設定を行えばよいのか。私は、販売計画をピタ
リと達成でき、かつ最大限の収益をあげられる価格設定が望ましいと思ってい
る。というのも販売計画が未達の場合は、収益目標を達成できず、販売計画を
大幅に過達する場合は、前述の通り、生産能力とのあいだにアンマッチが生じ、
生産現場に負荷をかけるからである。

 
【科学的な価格設定手法】

 それでは、具体的にはどのような方法で価格を決めればよいのだろうか。価
格の付け方には、コストの積み上げに一定の利益率を掛ける方法や、モデルチ
ェンジの場合、現行モデルと新型モデルのあいだの仕様アップ分を上乗せする
方法などがあり、正論はない。

 正論はないものの、私は、自社 – 競合車種間の仕様の差を考慮して、自社の
価格ポジションを決める方法を推奨したい。なぜなら販売計画を達成できるか
は、様々な要因の中で、競合との売れ行きの差に左右される部分が大きいと考
えるからだ。また、顧客視点から見ても、購入車種を決める際には、いくつか
の候補から、装備の充実度と価格が見合っているかを比較しているからである。

 しかし、実情としては、この価格設定を精緻に実現するのは難しい。理由と
しては、単純にノウハウが確立されていないということもあるが、仕様差の金
額換算が曖昧であったり、車種ごとに価格変更が販売台数に与える影響をトレー
スできていないというケースも珍しくないからである。

 ここでは詳細を割愛するが、上記のような問題には、例えば「競合車種やオ
プション部品の小売価格調査や FGI (Focus Group Interview)を行い、仕様
単位で基準価格一覧を作成する」、「販売台数と価格の関係をトレースするた
めに車種別に価格弾性値を算出する」などの方法がある。結果として、自社の
販売計画を達成できる価格ポジションを見出し、その範囲内で、最も収益性の
高い価格を設定することが可能になるわけだ。

 価格設定は万国共通の方法論であるため、あまり中国特有の事情には触れて
いなかったが、中国ではオプション部品の基準価格一覧の作成時に模倣品の存
在も考慮する必要があるだろう。また、地域による所得格差が大きいため、正
しく実勢価格を把握するためには、継続的にミステリーショッパーなどで小売
価格調査を実施することも求められるだろう。結果として、他社の値引き状況
やモデルライフサイクルマネジメント(現行モデルと新型モデルの販売をつな
ぐために、特別仕様車の投入や特別な金利設定などを行うこと)の実態を理解
でき、価格設定時の有用なインプット情報として活用できる。

 ここまで、3 回に渡って、「中国自動車メーカーに求められるマーケティン
グ戦略」をテーマにコラムを投稿させていただいたが、今回の一連のコラムで
取り上げた『課題』や『対応方針』について、より詳細をお聞きになりたい際
には、弊社までご一報をいただければ幸甚である。

<下 寛和>

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