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コラム

これからのクルマは小さくなるのだろうか?

◆トヨタ、超小型車「IQコンセプト」をフランクフルト・ショーに出展

全長2m98cmと、欧州で昨夏に発売した「アイゴ」より全長が42.5cm短い。2m56cmの「スマート フォーツー」より大きいが、大人3人と子供1人まで乗車できる居住性が特徴。大海原を泳ぐマンタをモチーフにデザインした。

<2007年09月12日号掲載記事>

◆独VWが再び「国民車」。コンセプトカー「UP!」の開発目的を発表

全長3.45m、全幅1.63m。4人乗りの小型車にしてはサイズ感に満ちており、あらゆる技術が盛り込まれるエンジンは、ビートルと同じくリヤに搭載され、従来型のラジエターグリルを持たず、エクステリアデザインにも大きな影響を与えた。

現在の人々だけでは無く、将来の世代の人々の心をも動かす力のあるデザインコンセプト車。「VWにとってフランクフルト・ショーを訪れる人々の反応は、このコンセプトカーがかつてのビートル、現在のゴルフに匹敵するポテンシャルを備えているかどうかを見極めるためのテストとなるのです」と技術開発担当役員であるDR.ウルリッヒ・ハッケンベルク。

リヤのワイパーは、必要に応じてテールライトも清掃することができるなど、多くのエリアで、技術とデザインが融合されて、魅力的なばかりでなく、きわめて実用性にも優れた車両アーキテクチャーが生まれている。

<2007年09月13日号掲載記事>
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【2台の超コンパクトカー】

先週から欧州最大のモーターショーである、フランクフルトモーターショーが開催されており、世界の自動車メーカー各社が発表した新型車やコンセプトカーが様々なメディアで報道されている。先進のディーゼルハイブリッド技術やプラグインハイブリッド技術などの環境性能に力点を置いたクルマが多数発表されており、今後の各社の製品化が楽しみなものも多い。そうした中でも、今回は2社が発表した超コンパクトカーに注目したい。

その 2 社は、トヨタと VW である。

トヨタは、超コンパクトカー「IQ コンセプト」を発表した。同社は、昨年 A セグメントのコンパクトカー「アイゴ」をチェコで生産し、欧州市場に導入している。そのアイゴは、全長約 3.4m と同社では最小サイズだが、今回の「IQコンセプト」は、それを上回り、全長 3m 弱だという。軽自動車よりも短いそのボディに、大人 3 人、子供 1 人を乗車し、荷物を載せるスペースも確保したという。タイヤをボディの四隅ギリギリに配置し、オーバーハングを切り詰めることで、居住空間の最大化を図っていることは外観からも伺える。

一方、VW が発表した超コンパクトカー「UP! コンセプト」は、トヨタのコンセプトカーよりも若干大きい、全長 3.4m となっている。同社の A セグメントカー「ルポ」よりも若干短いサイズだが、大人 4 人が乗れるスペースを確保しただけでなく、運転席以外のシートは取り外してトランクに収納することも可能で、パッケージの自由度が高いという。最大の特徴は、リアにエンジンを搭載するという、初代ビートルと同じレイアウトであり、これこそ現代版のビートルでは、と報道されている。

【コンパクトカーが求められる欧州の事情】

欧州では、こうしたシティコミューターとも呼ばれるコンパクトカーの需要が高まっている。いくつかあるであろうが、最大の理由は、都市部の交通事情と環境規制対応であろう。

欧州先進国の都市部では、クルマが集中しており、日本同様の渋滞も少なくない。一方で、駐車場インフラが充実していない都市も多く、ギッシリと路上駐車されているような光景も至るところで見かけられる。クルマ=個人の移動手段として根付いている地域も多く、取り回しが良いコンパクトカーが求められるのである。

その先鞭を切ったのが、Smart 「ForTwo」であろう。大人 2 人が乗れるスペースを確保した全長 2.5m (新型は 2.7m)の超コンパクトカーは、かわいらしいデザインも受け、一大ヒットモデルとなった。

一方、環境規制の影響も大きな要因であると考える。今年発表された欧州のCO2 排出規制は、走行距離 1km あたりの CO2 排出量を 2012年までに 130g にまで削減する(加え、燃料やタイヤ、省エネ運転励行等により 120g を目指す)というものであり、現状の欧州で販売されているクルマの平均値が 160g であることからすれば、かなり厳しいものとなっている。

こうした環境規制の強化、原油価格高騰に対応するため、低公害型ディーゼルエンジンやハイブリッドといったパワートレイン技術による燃費削減だけでなく、ダウンサイジングによる燃費向上も注目を集めており、こうした超コンパクトカーの発表につながっていると考えられる。

【その他の欧州の超コンパクトカー】

こうした動きは、トヨタ、VW の 2 社に限ったものではない。

前述の通り、その先駆けとなった Smart「ForTwo」は、今年フルモデルチェンジをしている。「New ForTwo」は、見かけは先代とほとんど変わらないものの、若干サイズを拡大し、居住性や積載能力を向上させると同時に安全性能を高め、これまで未参入であった北米での販売も予定しているという。アイドリングストップ機構を導入して更に燃費性能を高めたモデルの投入も予定しているという。

今年発売となったコンパクトカーの中でも、Fiat 「500」の注目度は高い。1975年までの 18年間に 400 万台弱生産されたという大ヒットモデルであった先代の面影を残しながら、現代的な味付けを加え、親しみやすいデザインとなっている。全長 3.5m(先代よりはかなり大きい)のボディに大人 4 人が乗れる居住性を確保している。既に欧州では販売が開始されており、来年には日本にも導入される計画である。

【超コンパクトカー=低価格車?】

こうした超コンパクトカーが狙う市場は、先進国の都市部だけではないかもしれない。

昨今、世界の自動車メーカーが、こぞって低価格車の開発を進めている。拡大する新興市場に対応したモデルが求められているからである。現在年間 75 百万台とも言われる世界の自動車市場は拡大傾向にあるが、その中心は、日米欧といった先進国市場ではなく、 BRICs+αの新興市場である。これらの新興市場では、自動車の保有層が拡大しており、その新しい保有層の中心は現在自動車を保有している層よりも低所得者層である。当然、低価格車が求められており、「より安いクルマ」を作れば、シェアを拡大できるチャンスも広がると見られている。

小さいクルマを作れば必ずしも安くなるというわけでもないだろうし、安いものが求められていても小さいことを求められているわけではないかもしれない。しかし、原油・鋼材価格も高騰する中、小さいクルマの方が価格を下げるには有利であることは間違いない。こうした低価格車を開発していく上で、ルノー(ローガン)のように通常のコンパクトカーサイズでコスト削減を進めるのか、超コンパクトカーでそれを実現していくのか、各社の戦略が分かれるところかもしれない。

【これからのクルマは小さくなるのだろうか?】

これまで、モデルチェンジを経るたびに、クルマは大型化する傾向が強かった。居住性の向上や装備の充実もあるだろうが、一番の要因は安全性の向上であろう。これからの超コンパクトカーにも、当然これまで以上の安全性が求められることは間違いないだろう。

一方で、アクティブセーフティ技術が向上してきているとはいえ、万が一の事態を想定すると、パッシブセーフティを疎かにすることもできない。いわゆるクラッシャブルゾーン(衝突時等に壊れることでキャビンの安全を確保する部分)が限られる中、その効果を最大化することが必要となり、これまで以上に高度のボディ設計・パッケージングデザインが求められることになるだろう。

安全性能を向上させるために大きく重くしたい一方で、環境性能を高めるために小さく軽くしたい。こうした制約条件の中に対応するために、自動車業界の技術は日々進化しているのであろう。勿論、そうした背後にある自動車業界の技術者の絶え間ない努力があることを忘れてはならない。

今後、クルマは小さくなるのであろうか。

同じ性能を実現するためであれば、確実に小さくなるような気がする。一方で、安全性能、快適性能の高度化を進める上で、装備の充実化を図らなければならない部分もあるだろうが、そうした装備の小型化・最適化も進むと期待される。

昨今の日本の自動車市場を見ると、販売が好調な軽自動車と超高級車を捉え、自動車も二極化社会になるという意見もある。一律に大きくなる、小さくなるという話ではないだろうが、その時代の求めに応じてコンセプトや性能を変えていくことで、クルマ社会が持続的に成長することを願いたい。

<本條 聡>

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