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コラム

中国自動車市場 新車マーケティング戦略(2) 『中国の地域特性による消費性向の違いを加味した商品企画』

 弊社親会社であるアビームコンサルティングが、モノづくりから販売、マーケ
ティングに至るまで、”次代”への示唆をさまざまな角度から提案していく。

アビームコンサルティング ウェブサイト
http://www.abeam.com/jp/
 
第 2 弾は、アビームコンサルティング P&T 事業部経営改革セクターの下寛和
が中国市場で自動車メーカーに求められるマーケティング戦略について 3 回に
渡って紹介する。今回はその第 2 回にあたる。

今回は、先回の「中国自動車市場における『質』の追求と商品要望の選定」に
引き続き、『仕様』に関する顧客のニーズをいかに把握するか、という観点か
らコラムを投稿させていただきたいと思っている。
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【ブランド志向の浸透】

 中国人の消費性向に関する先行研究や市場調査を参照すると、いま中国人の
あいだでは、「ブランド」にこだわった消費スタイルが定着しつつあるように
感じる。

 実際に、中国大手市場調査会社「CTR 市場研究」が今年 1月に発表した市場
調査(短大卒以上のホワイトカラーが対象)によると、腕時計や皮革製品の購
入者の 56%、デジタル電化製品の購入者の 61% が購入時に「ブランドを重視す
る」と回答している。中国がオメガや iPhone の売上で世界一になる日もそう
遠くはないはずだ。参考までに、日本では、NRI が公開している「生活者 1 万
人アンケート(2009年)」によると、17% の顧客が「いつも買うと決めている
ブランドがある」、42 %の顧客が「無名なメーカーよりは有名なメーカーの商
品を買う」と回答している。

 自動車も決して例外ではない。先の「CTR 市場研究」では、自動車購入者の
50% が、「メーカーを見て自動車を購入する」と回答している。人気ブランド
の上位はアウディ、BMW、メルセデス・ベンツが独占しており、欧州系の高級ブ
ランドが顧客の支持を集めた格好だ。

 私は、こうした消費トレンドの背景には、「安かろう悪かろう」の製品の横
行があると思っている。自動車のような一生に幾度も購入できない高価なもの
は、「ステータス」、「デザイン」、「品質」、「最新装備」、「再販価格」
などを考慮して「失敗のない買い物をしたい」という顧客が中国で増加してい
るのではないだろうか。

 では、このような顧客に受け入れられる商品をどのように開発すればいいの
か。その点について次項で取り上げたい。

 
【地域ごとの差別化戦略】

 「中国では沿海部と内陸部では消費者が違うので、全く別の市場として捉え
るべきだ」というマーケティング理論をよく耳にする。実際に、いくつかの自
動車メーカーは、沿海部と内陸部で販売仕様を調整している。具体的には、沿
海部には先進装備を備えてシティライドに優れたグレードを、逆に内陸部には
余分な仕様を削った廉価版の乗用車やヘビーデューティー仕様の商用車を導入
するというものである。

 同様の差別化戦略は欧州などでも以前から実行されている。同じ国や地域で
あっても、エリアによって顧客の所得水準や生活スタイルなども違うことから、
こうした差別化は理にかなった戦略といえる。

 しかし私は、中国ではまだこの戦略が仕組みとして完成されていないと思っ
ている。というのも各社の商品戦略を見ても、沿海部と内陸部という安易な区
分で、内陸部には部品点数を減らした新興国向けの車種を導入しているだけと
感じるからだ。

 中国には、省単位で異なる基幹産業、沿海部 – 内陸部間、沿海部間、都市
- 農村間で拡大する所得格差、道路環境をはじめとする省ごとに異なる交通イ
ンフラの整備状況など、他国にはない特殊な外部環境がある。そのような環境
要因を加味した独自の戦略がいま必要ではないだろうか。

  
【エリア別の消費性向を加味した商品企画】

 具体的に中国独自の戦略の立て方を考えてみたい。なお、今回の前提として、
商品企画の単位はエリア別とする。というのも省単位での商品企画はあまりに
もバリエーションが増えすぎ、在庫管理が複雑化する。結果としてコストが売
上以上に増加する恐れがあるのだ。従って、ここでは中国全土の顧客の消費性
向を整理し、消費性向の似ているエリアごとに商品企画を行うことを推奨した
い。

 それでは、エリア別の商品企画を4つのステップに分けて解説する。

 ステップ 1 は消費性向の整理である。ここでは、例として、消費性向を二軸
で整理する方法を紹介する。軸の例としては、一人当たり所得などの所得階層
(一人当たり所得)や嗜好特性(先進的・保守的)などが適当であろう。また、
二軸をさらに三つのレベル(所得階層であれば高中低)に分けて、三マス×三
マスの九つの象限に顧客をセグメント分けする。その後、九つのセグメントご
とに、どの程度の数の顧客がいるのか、消費者調査などを通じてボリュームを
推計する。

 ステップ 2 はターゲット顧客の設定である。ステップ 1 で整理した九つの
セグメントのうち、どのセグメントをターゲット顧客とするかを決定する。決
定に際しては、各セグメントの「今後の成長性」や自社の車種構成や開発リソー
スなどの「自社保有能力との適合度」を評価軸に、セグメントの優先順位をつ
けていく。

 次にステップ 3 ではターゲット顧客の商品志向を整理する。ステップ 2 で
最も優先順位が高いと特定したターゲット顧客が、どのような商品志向を持つ
かを調査する。具体的な方法については割愛するが、「仕様」、「外装」、
「内装」、「品質」、「価格」、「サービス」などの要素をブレイクダウンし
て、購買時に重視する点を深掘りしていく。「仕様」であれば、燃費改善や安
全装備の強化など、ニーズの高い要望を抽出する。

 最後にステップ 4 として、ターゲット顧客向けに開発する商品またはサービ
スが実際に顧客に受け入れられるかどうかを調査する。こちらも具体的な方法
は割愛するが、消費者調査や競合比較を通じて、受容性を分析する。

 上記のステップを、「エリア別」、「車種別」に行うことは、実際かなりの
工数を要する。各メーカーの開発・企画部門は「車種別」、営業・マーケティ
ング部門は「エリア別」に分かれていることが多い。そのため、営業・マーケ
ティング部門が中国の現地法人と密に連絡を取り、いかに正しい情報を開発・
企画部門に伝達できるかに本戦略の成否がかかっていると言えよう。なお、情
報収集、要望選定の具体的な改善方針については、前回のコラムで触れた通り
である。

 以上、今回を含めて、2 回に渡って「商品開発」というテーマでコラムを投
稿したが、具体的な方法論については例示も含めて細かく踏み込んで解説して
いない部分も多い。そのため、これまで取り上げた『課題』や『対応方針』に
ついて、より詳細をお聞きになりたい際には、弊社までご一報をいただければ
幸甚である。

 次回、第 3 回(6月 14日配信予定)では、「科学的な価格設定手法による販
売台数のハンドリング」をテーマに、価格が販売に与えるインパクトを解説さ
せていただく予定である。

<下 寛和>

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