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コラム

「未来のクルマ」は「跳び箱型」になるのか?

◆東京モーターショーが開幕。世界から4政府 1団体 241社が520台を出展。
24、25日はプレスデー、26日は特別招待日。一般公開は、27日から11月11日。

<2007年10月23日号掲載記事>

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【東京モーターショー開幕】

先週から第 40 回東京モーターショーが開幕した。読者の皆様も多数足を運ばれていると思う。10年ぶりに乗用車と商用車を同時展示する形態となり、241社が 520台を出展予定、うち 77台がワールドプレミア(世界初披露)と、海外のモーターショーと比較しても最大規模を誇る。2005年に開催した前回は、8年振りに来場者が 150 万人を突破したが、今回もそれを上回る来場者数に期待がかかる。

輸入車メーカーは、先月のフランクフルトモーターショーと比較すると、どうしても見劣りした内容となってしまっているが、それに対し、国内乗用車メーカーがかなり力を入れているのが目立つ。今や世界第 2 位の自動車市場となった中国の勢力拡大に伴い、上海・北京モーターショーは回を重ねるごとに盛大さを増しており、上海モーターショーとの統合案まで米国メーカーから挙がっていると報道されている。こうした中で、日本発の最先端の技術、情報を発信していく、という思いが、「世界に、未来に、ニュースです。」という開催テーマにも込められており、国内乗用車メーカーは、多数の未来をイメージさせるようなコンセプトカーを準備してきた。

【スズキのコンセプトカー】

あらゆるメディアで多数報道されていること、読者の皆様の多くがご覧になられているであろうことからも、各社の出品内容を紹介するようなことは控えたいが、今回特に勢いを感じたブランドを一つだけ紹介したい。

それはスズキである。スズキは例年以上に力を入れた出品をしている。ワールドプレミア 5台、ジャパンプレミア 1台を始め、出品台数 19台と市販車もほぼフルラインナップを展示する。中でも、「キザシ 2」と「ピクシィ」は、これまでのスズキのコンセプトカーの路線から大きく跳びぬけた作品ではないかと考える。

大型クロスオーバーワゴンのコンセプトカー「キザシ 2」は、フランクフルトモーターショーにて発表した「キザシ」のクロスオーバースタイルで、「キザシ」同様、従来のスズキ=コンパクト&スポーツ(もしくはファミリー)というイメージから一線を画し、ステイタスをテーマに掲げ、1 クラス上の質感と性能を追求している。これからのスズキの商品ライン戦略に期待を持たせるものになっている。

一方、慶応大学との共同研究「ヒューマン・モビリティ・プロジェクト」から生まれたという 1 人乗りモビリティ「ピクシィ」と、それが乗り込むカーシェアリングビークル「SSC:スズキ・シェアリング・コーチ」は、2030年のモビリティ社会をイメージして開発したコンセプトだという。これまでトヨタの独壇場であった、1 人乗りモビリティというテーマに積極的に取り組む姿勢に、これまで以上のスズキの意気込みが感じられる。

【「跳び箱型」のコンセプトカー】

ところで、こうしたモーターショーの会場を歩いていると、トヨタ、ホンダ、日産等多くの国産自動車メーカーが提案している「未来のクルマ」をイメージしたコンセプトカーに共通するところがあることに気づく。その多くが、前後左右からのシルエットが背の高い台形に近いものになっている。トヨタがコンセプトカー「リン」で、その外観シルエットは「屋久杉の切り株」をモチーフとしたと発表していたが、その他のコンセプトカーも、これに近いデザイン形状のものが多い。例えるならば「跳び箱」のような形状である。

これらの多くが、2.5~ 4m 程度のコンパクトなボディに、四隅にタイヤを配置し、キャビンを最大限に確保し、グリーンハウスを大きく取って開放感を出したものとなっている。メイン 1、2 座席+予備 2 座席程度の少人数での乗車を想定しながらも、各座席はゆったりとした車内空間を確保している。

「未来のクルマ」ということで、その多くが電気自動車もしくは燃料電池自動車となっており、インホイールモータで駆動させることを考えれば、レイアウトの自由度は高く、タイヤを四隅に配置すれば、ホイルベースが長く取れるので、走行安定性を確保すると同時に、車内空間も広く取ることができる。外形をなるべくコンパクトに、車内をなるべくゆったりと、と考えると、このデザイン形状に行き着くのであろう。

前述のスズキの「SSC」もこの形状である。トヨタやスズキが発表しているような 1 人乗りモビリティと、こうした「跳び箱型」コンパクトカーを見ると、ここに「未来のクルマ」の形があるように思えてくる。

【社会が求める「未来のクルマ」】

ところで、現実的な(市販の可能性が高いと期待される)コンセプトカーを含めて見渡しても、前回に比べ、ミニバン型のクルマが減り、コンパクトカーが増加傾向にある。フランクフルトモーターショーでも、コンパクトカーが大きな注目を浴びていることを以前の記事で取り上げたが、東京モーターショーでも同様の傾向にあり、従来のコンパクトカーよりも小型なものも増えてきたと考えられる。

これらのクルマの多くが、「環境性能」「安全性能」「利便性」「快適性」といった現在のクルマが社会から求められる要素を具現化したものをイメージしており、具体的には、以下のような要素を訴求している。

(1)「環境性能」
コンパクトで軽量なボディ、環境負荷の低い駆動装置等

(2)「安全性能」
広い運転視界や丸みを帯びた外観、多数の車載カメラ等

(3)「利便性」
広い乗降ドア、ラクラク操作、高い方向自由度等

(4)「快適性」
広い車室空間(特に高さ)、クルマとの対話等

こうした要素を全て追求していくと、「未来のクルマ」は、前述のような「跳び箱型」の電気自動車(もしくは燃料電池電気自動車)になるのかもしれない。それが、コンセプトカーという形になっているのであろう。

これらのコンセプトカーを見ていると、短距離の移動は快適で便利そうに思えるものの、長距離移動の手段としてのクルマや、ドライブを楽しむツールとしてのクルマ、といったイメージが沸いてこない。このまま原油価格の高騰が続き、他の公共交通機関の利便性が向上すると、クルマを使って行動する距離・範囲も変わってくるとも考えられる。将来的なモビリティ社会におけるクルマが果たす役割が変わる可能性も見えてくる。

【「未来のクルマ」のイメージ】

ほんの数年前まで、ハリウッド映画に出てくるような「未来のクルマ」は、「平べったい流線型」をしていて、自動運転は勿論、空を飛んだりまでしていた。「ブレードランナー」の「スピナー」の頃から、最近では「マイノリティリポート」のレクサスや「アイ・ロボット」のアウディまで、スポーツカーを進化させたようなイメージのものであり、見た時に思わず欲しくなってしまうような存在であった。

よく言われる話だが、子供たちにクルマの絵を描かせると、かつては、ほとんどの子供が 3BOX のセダンを描いていたのに、現在では、半分以上が 2BOX のミニバンを描くと言われている。

現実的に考えると、コンパクトカーやミニバンを進化させた形は、あの「平べったい流線型」ではなく、「跳び箱型」のような気がしてくる。将来の子供たちは、きっとそういう絵を描くのであろう。

勿論、いくつか「平べったい流線型」に近いコンセプトカーもあった。個人的には、未来をイメージさせるコンセプトカーとしては、全部の要素を取り入れた画一的な理想形だけではなく、特定の要素に特化したものをもっと増やして欲しいと思う。そうした取り組みがクルマの新たな魅力を引き出したり、クルマのもたらす価値を多様化させることにつながり、若者を惹きつけられる一つの方法になるような気がしてならない。

<本條 聡>

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