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コラム

中国自動車市場 新車マーケティング戦略(1) 『中国自動車市場における「質」の追求と商品要望の見極め』

 弊社親会社であるアビームコンサルティングが、モノづくりから販売、マー
ケティングに至るまで、“次代”への示唆をさまざまな角度から提案していく。

アビームコンサルティング ウェブサイト
http://www.abeam.com/jp/

 第 2 弾は、アビームコンサルティング P&T 事業部経営改革セクターの下寛
和が中国市場で自動車メーカーに求められるマーケティング戦略について 3 回
に渡って紹介する。今回はその第 1 回にあたる。

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【質の追求に向かう中国市場】

 先日とある報道番組で、通勤ラッシュで渋滞する北京の光景を目にした。本
来は赤く点るはずの車のテールランプが、靄にかすんだ大通りではぼんやりと
した淡い光沢色にしか見えず、排気ガスによる大気汚染が深刻化していること
が、誰の目にも明らかであった。

 同じ北京で、国際的な排気ガス基準である「ユーロ 5」を来年中に施行する
というニュースは記憶に新しい。米国を凌いで 2年連続で世界一、10年後には
2,500 万台レンジまで自動車市場が拡大すると予見される中国だが、排気ガス
規制やナンバープレートの発行制限など、政府による規制介入も目立ち始めて
いる。

 このような変化の予兆から、私は、中国市場は販売台数という『量』を中心
に求める時代から、販売される自動車の『質』も追求する時代へと変貌を遂げ
つつあると感じずにはいられない。

 したがって、今回は、転換期にある中国にスコープを当て、コラム(3 回)
を投稿させていただきたいと思っている。特に『質』への対応を求められる
「日系自動車メーカー」の営業・マーケティング担当者に読んで頂きたいと考
えているが、『課題』や『対応方針』を広く取り上げるので、中国市場に関心
ある皆様に読んで頂きたい。

【タイムリーな仕様開発の重要性】

 自動車の『質』の定義は難しいが、私は、デザイン、仕様、耐久性、販売店
でのサービス、下取り価格など、いくつかの要素から複合的に構成されるもの
と考えている。今回は、その中でも『仕様』にフォーカスして議論を進めたい。
というのも、『仕様』は、所得の増加とともに、より高性能な商品を求めよう
とする一般的な消費意欲に合致するからだ。そのため、メーカーは、市場や顧
客のニーズに敏感に反応して仕様開発に先手を打つ必要がある。

 『仕様』は、私の理解では、開発方針の違いで二分される。呼称は仮だが、
一つは、全ての導入国に共通で開発される「グローバル共通仕様」、もう一つ
は、地域ごとのニーズに対応して個別に開発される「地域別仕様」である。開
発・企画部門などが、フルモデルチェンジやマイナーチェンジなどを契機に仕
様を刷新するが、導入国の多い車種は、「地域別仕様」のバリエーションが多
い。そのため、顧客が要望する仕様を国別に把握するのは、実際のところ、聞
こえ以上に難しい。したがって、私は、地域別仕様を適切な国向けにタイムリー
に開発できるかが、自動車メーカーの開発・企画部門の悩みの種の一つとなっ
ていると考えている。

【地域別仕様開発における課題】

 では、地域別仕様の開発上の課題について、中国を例に熟思してみる。

 まず、『仕様』に関する顧客の要望がどのように開発・企画部門へと伝わっ
ているのかを整理する。一般的には二種類の方法がある。一つは、メーカー本
体が顧客調査や販売代理店へのヒアリングを通じて商品要望を収集する方法、
もう一つは自社の販売網を活かして「販売代理店」や「サービスセンター」か
ら情報をエスカレーションさせる方法である。前者については、そもそも全車
種全対象国について調査やヒアリングを精緻に実施することはリソース上、難
しいので、ここでは後者の改善に着目したい。

 後者の一般的な情報フロー上、商品要望は販売代理店やサービスセンターに
よって集約され、特定の地域を束ねる「統括会社」、中国全土を束ねる「現地
法人」を経由して本社の開発・企画部門に集まる。しかし、開発・企画部門に
集まった情報がどれほど正しいもので、情報が不足なく伝わっているのか。そ
の点について、私は甚だ疑問に感じている。というのも、例えば大気汚染や交
通渋滞が深刻な中国では、アイドリングストップのような仕様が政府・消費者
から望まれていると思うが、実際のところ普及は進んでいない。現地での部品
調達先の手配などの問題もあるだろうが、私は、必要な情報が瞬時に伝わらず、
開発されるべき仕様が拾いきれていないと感じている。

 では、中国において、必要な情報が瞬時に伝わらないという問題には、どの
ような原因があるのか。私は二つの原因があると考えている。

 一つは、合弁企業という特殊性だ。中国には独資で進出できず、外資は現地
資本と合弁という進出形態をとらざるを得ない。その結果、現地の各拠点で業
務ルールに関する統制が効かず、情報収集方法や要望書作成方法、純増台数の
試算方法(費用対効果の算定方法)などにバラツキが生じる。

 もう一つは、商品要望を提出・収集するためのルールやツールが未整備であ
る点である。詳細は次項に譲るが、商品要望がバラバラの方法で伝達された場
合、開発・企画部門は、どの要望がより優先度が高いものか判別できない。結
果として、声の大きな統括会社の要望や他の要望よりも早く提出された要望か
ら順番に開発のゴーサインを下すなど、属人的で客観性に欠けた意思決定が誘
発されるリスクがある。

【商品要望の優先順位付け】

 それでは、優先度の高い商品要望をどのように見極めればよいのだろうか。
実際に顧客からあがってくる要望は、「質感の向上のために最上級のレザーシー
トを採用してほしい」、「安全性向上のためにサイドエアバックなどの安全装
備を充実させてほしい」など、多種多様だ。その中から優先度の高い要望を見
極めるためには、統括会社および現地法人に、「共通のルール・ツール」を導
入し、「同じ時期」に「同じ情報量」の要望書を提出させる仕組みをつくるこ
とが有効だと考える。具体的には、要望提出時のフォーマットや純増台数の試
算方法、要望の提出時期を揃えることで、商品要望を横並びに比較することが
可能となり、客観的に優先度の高い要望をピックアップできるようになるわけ
である。

 このソリューションはシンプルであり、直ぐに自社にも導入できるのでは、
と感じる読者も多いと思われる。しかし、実際の企業活動では、現地法人、地
域の統括会社、販売代理店など関連企業や関係者が多く、調整工数がボトルネ
ックとなって改善が実現できないケースが多い。そうした際には、短期間で改
善を行うためのプロジェクトチームを組んだり、外部の協力者にプロジェクト
の推進役を委託するなどの手段が効果的であることを述べておきたい。

 今回は、優先度の高い商品要望を選定する方法について述べた。次回(5月
31 配信予定)、第 2 回では、「中国の地域特性による消費性向の違いを加味
した商品企画」をテーマとしたいと考えている。なお、今回のコラムで取り上
げた『課題』や『対応方針』について、より詳細をお聞きになりたい際には、
弊社までご一報をいただければ幸甚である。

<下 寛和>

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