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コラム

くるま産業”次代”への羅針盤 『開発費の透明化(1)』

弊社親会社であるアビームコンサルティングが、自動車業界におけるモノづくりから販売、マーケティングに至るまで、“次代”への示唆をさまざまな角度から提案していく。

アビームコンサルティング ウェブサイト
http://www.abeam.com/jp/

第 1 弾は、アビームコンサルティング製造/流通事業部の川本剛司が開発費の透明化について 5 週に渡って紹介する。今回はその第 1 回にあたる。
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第 1 弾 『開発費の透明化 (1)』

昨今の不況はほぼ全ての業界に影響を及ぼしており、各社とも事業戦略の見直しやコスト削減等につき、早急な対応が必要とされている。

自動車業界は経済環境の変化に加え、環境意識の高まりによるエコカー人気といったユーザーニーズの変化に対応すべく、開発車種や先行技術研究のプロジェクトを慎重かつ大胆に取捨選択しなければならない状況に置かれている。

「開発」については期間が長く、コストも膨大ということもあり、参入 (投資)もしくは撤退する車種のジャンルやクラスにつき、投資対効果を定量的に分析した上で的確な判断を下すことが、事業競争力の維持、強化に直結する。

そして、的確な判断を下すための最初のステップとして必要になってくるのが、開発費の現状把握である。

手術時にメスを入れる場合、必ず CT スキャンやレントゲンで病巣の場所や症状を把握しなければならないのと同じで、開発費をより的確、かつ明確に管理することは、以前よりも流動的で予測の難しい市場ニーズに対して、最適な判断を下す為には必須ともいえる。

例えば、現在推進中の開発プロジェクトにおいて、どのような切り口と頻度(ボリューム感)で開発費が計上・管理されているかを正確に把握することができれば、新規開発プロジェクトの開発費を同じ切り口で、複数年に渡りかなり正確に予測する事が可能となり、将来にわたり正確な数値に基づいた意思決定を行うことができる。

逆に、現状の開発費やその管理方法が不明瞭な段階で、事業 (プロジェクト)領域変更や、開発費そのものの効率化(即ちコスト削減)を行ってしまうと、事業競争力の低下や更なる躍進の妨げになってしまう可能性さえある。

通常、コスト削減は企業内部で主体的に実行出来る余地が多く、即効性もある為に真っ先に着手される。自動車業界においても、コスト削減が「企業生き残り」に対する至上命題であることに間違いは無い。

しかしながら、コスト削減は、「自社の競争力維持拡大」という企業の存続目的に対する手段の一つでもあり、削減対象や削減金額を間違えてしまうとそれこそ企業の競争力を低下させ、将来大きな事業の柱になる可能性のある芽をつんでしまうかもしれない。

加えて、日本でも 2010年 3月期から任意適用が始まり、2012年に強制適用の可否が判断される国際会計基準 (IFRS) においては、これまで毎年一括で費用計上されてきた開発費に関して、いくつかの条件を満たす場合、資産として計上し、その製品を販売し続けると想定した期間で償却することが求められる (一方で、研究費についてはこれまでどおり費用計上)。

そして、条件を満たしているかどうかを把握するには、詳細な開発費関連情報を取得する必要があるため、これまで以上に開発費の内訳を正確に管理しなければならない。

では、これまで自動車業界における開発費管理の重要性を述べてきたが、具体的に、どのような開発費が存在するのだろうか。

その前に、まず一般的に「コスト」と言っても、自動車業界には様々な「コスト」が存在する。

・長期的視点での先行投資的なコスト (素材/要素技術開発等のいわゆる Research、研究費)
・製品開発決定後の車両開発スケジュールに則った製品/部品開発コスト (いわゆる Development、開発費)
・製品/部品を継続的に産出していく為のランニングコスト (生産準備面でのコストを含む、いわゆる製造原価)
・販売促進用コスト等を含む、いわゆるマーケティング費用

等々、挙げればきりがなく、またそれぞれに対して人件費や管理費等の項目がある。

本コラムでは上記の二つ目、「製品開発決定後の車両開発スケジュールに則った製品/部品開発コスト」を開発費と定義し、具体的な特徴をあげるとともに、次週以降でその管理方法の難しさ等について、考察していく。

また、ここでは、自動車の市場投入(=製品開発)を決定し、車両および部品の仕様や開発スケジュール、生産場所等を管理する車両メーカ視点での「車両開発費」と、車両メーカの決定した仕様や開発スケジュール、生産場所 (=納入場所) に合わせた部品開発、評価、納入を行う部品サプライヤ視点での「部品開発費」に大別し、それぞれの開発費が有する特徴をまとめた。

【車両開発費の特徴】

・長期間 (経営企画会議を通って予算付与されてから市場販売まで) に亘る管理が必要
・開発費の詳細な予測は、経営戦略の基盤となる
・サプライヤとの共同開発の際には費用分担される
・下記に列挙するような、多種にわたる管理項目が存在
-市場や競合車、法規対応などの調査費用 (国内外問わず)
-構成部品の開発費用、試作部品費用 (サプライヤへの開発委託費用含む)
-試作車両の製作、評価費用
-量産準備費用 (認証資料や販促資料等の対外的な資料作成費も含む)
-車両生産そのものや、一部コンポ・システムのサプライヤへの開発委託費
-上記に関わる全ての人件費、管理費等

【部品開発費の特徴】

・正式受注前と受注後で管理体系の差別化が必要である
(一手に請け負う事が決定している場合は例外)
・生産量やスケジュール、製品仕様が納入先に依存する為、開発費の詳細な予測が難しい (スケジュール変更や設計変更の事前予測ができない)
・同一部品を複数納入先へ提供する場合、複数視点での管理形態が存在する場合がある (「納入先の車両軸での管理」や「自社の部品軸での管理」等)

開発費管理の高精度化が今後重要となってくる旨前述したが、上記の特徴からも分かるとおり、車両メーカ、部品サプライヤのどちらの視点にたってみても、実績の詳細管理 (明確化) が非常に困難である事が容易に想像出来る。

そこで次回は、開発費管理にあたっての「難しさ」を具体的に考察していく。

<川本剛司/ 樋口穣>

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