東日本大震災による自動車業界への影響と復帰に向けた取組みについて

2007年 10月から自動車業界に関連するあらゆる傾向をアンケート調査してきた
「住商アビーム 1 クリックアンケート」が 2011年 2月からリニューアル致し
ました。ご回答頂いた皆様の声をもとに、翌月、このテーマに関するレポート
を発表致します。

今月の特集は「東日本大震災による自動車業界への影響と復帰に向けた取組み」
です。

東日本大震災による日系自動車メーカー国内生産台数への影響について
(2011年4月5日配信分)

質問

 2011年 3月 11日に発生した東日本大震災直後、日系自動車メーカーは被害を
受けられた各地域の復興支援や、関係会社の従業員安否確認等を優先し、国内
全ての工場において生産を停止致しました。

 未曾有の大災害は、特に東北地方太平洋沿岸に拠点を置く各部品サプライヤ
へも甚大な被害をもたらし、震災から 1 ヶ月弱が経とうとしておりますが、そ
の被害の全貌は未だに分からない状況が続いております。

 日系自動車メーカーも全力を挙げて各部品への影響を調査し、対策を講じて
いる最中ではありますが、各メーカー国内工場の多くが、被災されたサプライ
ヤからの部品供給不足等によるライン停止或いは、在庫部品を使用しての限定
的な生産に留まっております。

 今月に入り、車両生産再開の動きも始まってはおりますが、今年の夏には計
画停電の影響を受ける事も必至であり、震災前の通常の生産体制に戻るには、
まだ暫く時間が必要と思われます。

 現時点で既に 40 万台以上の国内生産台数へ影響があったとも言われていま
すが、今回の大震災の影響により、今年の国内生産台数はどのぐらい落ち込む
と予想されますか。以下選択肢の中で、読者の皆様が最も当てはまると考えら
れるものを一つお選び下さい。

 参考)日本自動車工業会データによれば、2010年における日系自動車メーカー
の国内乗用車生産台数は、年間で約 830 万台でした。

  1. 300万台以上
  2. 200万台~300万台
  3. 100万台~200万台
  4. 100万台以下
アンケート結果

東日本大震災で被災された部品メーカー復帰へのスケジュールについて
(2011年4月12日配信分)

質問

 東日本大震災の被災地域にある部品メーカーは、電子部品やゴム・樹脂部品
を始め 500 社を超えるとも言われております。

 被災の深度は各社で異なり、全力を尽くし対応を進めている最中ですが、イ
ンフラ面の復旧長期化、原発事故の影響等で、未だ復興に向けたシナリオを描
く事が出来ないメーカーもあります。

 2007年 7月 16日に発生した新潟県中越沖地震で被災したリケン柏崎事業所で
は、被災後約 2 週間で全ラインの生産復旧にこぎつけておりますが、それでも
自動車メーカーの生産回復までには 1 ヶ月以上の期間を要しました。

 上記リケンのケースでは、停電は無く、水道・ガス等インフラも約 1 週間後
には回復した事や、被害状況を当日中に把握でき、翌日から自動車メーカー先
遣隊と共に復旧スケジュールを描けた事が、早期回復を可能にした要因と考え
られます。

 今回の震災では、先週 7日の金融政策決定会合後、日銀の白川方明総裁が、
震災で被害を受けた部品等のサプライチェーンは 6~ 7月に回復するとの見通
しを示しました。

 それでは、自動車業界で働かれる皆様の実感として、各部品メーカーが生産
体制を再構築し、供給能力を回復させ、自動車メーカーの生産が回復するまで
に、どれくらいの期間が必要だと予想されますか。

 以下選択肢の中で、読者の皆様が最も当てはまると考えられるものを一つお
選び下さい。

  1. 1年以上
  2. 半年~1年
  3. 3ヶ月~半年
  4. 3ヶ月以内
アンケート結果

国内車両生産復旧に向けた自動車メーカーの短期的な取組みについて
(2011年4月19日配信分)

質問

 昨日 (4月 18日)、東日本大震災以来生産を停止していた、トヨタ自動車の車
両生産工場 (既に再開していた 4 工場除く)、日産自動車 / 栃木工場及びダ
イハツ工業 / 池田・京都工場においても生産が再開され、国内主要車両生産工
場のほぼ全てが稼働再開にこぎつけました。

 また 4月 16日には、震災前に製造された関東自動車 / 岩手工場の車両が被
災した仙台港から出荷されるなど、震災直後から寸断されていた東北地方港湾
物流にも、復興の兆しが見えてきています。

 但し、各社とも部品の調達状況を見極めながらの、主に在庫部品を使用した
生産で、稼働率も 50% 前後に留まっており、震災前の稼働率まで戻る為には、
月単位での期間を要すると思われるサプライチェーンの完全復興が必至です。

 また夏季に向けて、電力需給バランス悪化が予想されます。今月 8日に発表
された経済産業省の電力需給緊急対策本部によれば、東京電力管内での夏季最
大ピーク時需要(6,000 万kw)は、予想される供給能力 (4,500 万kw) を
1,500 万kw上回るとの事でした。

 追加供給力の確保として、被災した火力発電所の能力回復や長期計画停止火
力の運転再開、ガスタービンの設置などが進んでおり、最新の東京電力予測で
は、7月末の供給能力が 5,200 万kwになる見込みです。

 需要抑制目標としては、東京電力管内で少なくとも 1,000 万kwが上記対策
本部により掲げられており、契約電力 500 kw以上の大口需要家に対しては、
ピーク時電力消費量を 25 %抑制する方向性で計画策定が進んでおります。

 このように国内自動車生産復旧には、「サプライチェーンの早期復興」及び
「夏季の電力需給への対応」が大きな課題となっています。その為に直近 (少
なくとも今年度中) で自動車メーカーが最も優先度を上げて注力すべき項目は
何でしょうか。

 以下選択肢の中で、読者の皆様が最も当てはまると考えられるものを一つお
選び下さい。

  1. 既存サプライチェーンの早期復興
      – 被災されたサプライヤへの復旧支援等
  2.  新規サプライチェーンの構築(国内サプライヤ)
      – 代替可能部品の新規国内サプライヤからの調達
  3. 新規サプライチェーンの構築(海外サプライヤ)
      – 代替可能部品を海外から調達する逆輸入の形態を新規に構築
  4. 輪番操業への対応(電力需給対応)
      – 生産への影響を最小化する為の輪番操業体制を他業界と連携し構築
  5. 自家発電能力の増強(電力需給対応)
      – 自家発電設備の増設等による電力需要の抑制後押し
  6. 車両生産移転
      – 部品調達状況、及び輪番操業による影響を見定めた車両生産ラインの移転
  7. その他
アンケート結果

 

国内/海外車両生産に対する自動車メーカーの長期的な取組みについて
(2011年4月26日配信分)

質問

 東日本大震災発生から 1 ヶ月半が経過し、国内自動車生産復旧に向けた「サ
プライチェーン早期復興」及び「夏季電力需給への対応」という大きな課題に
対して、各社とも具体的な取組みやその方向性が明確になりつつあります。

 先週金曜日 (4月 22日)、トヨタ自動車の豊田章男社長は、国内外での生産が、
今年の 11月から 12月頃をメドに正常化されるとの見通しを示しました。また、
半導体大手のルネサスエレクトロニクスは同日、稼働停止中である那珂工場の
一部操業再開を、6月 15日に前倒しする旨公表致しました。

 代替調達が難しい部品は上記半導体だけではないものの、それぞれ自動車業
界各社及び他業界からの支援もあり、国内での自動車生産は 7月頃から回復基
調に向かうものと推測されます。

 夏季電力需給への対応に関しても、供給/需要サイド共に様々な施策が検討
されております。供給サイドである東京電力は、5,500 万 kw まで供給能力を
上方修正しております。それを受けて政府は、大口需要家の節電目標を昨夏比
25 % 減から 15 % 減に緩和する方向で調整しておりますが、経団連は同 25
% 減の節電目標を維持する方向で検討が進んでいると言われております。

 今回のような未曾有の大災害をどの程度リスク管理として織込むのか、程度
議論は残るものの、国内サプライチェーンのあり方、車両/部品の輸出や現調
化議論を含めた海外車両生産のあり方などが、中長期的な視点で見直されるも
のと思われます。

 部品や車両の特性/方向性によって各々異なるとは思いますが、中長期的な
視点で自動車メーカーが最も優先度をあげて注力すべき項目は何でしょうか。
以下選択肢の中で、読者の皆様が最も当てはまると考えられるものを一つお選
び下さい。

1. 国内生産拠点における有事への対応力強化
  – 耐震強度等の見直し
  – 省エネ型工場への転換(自社における発電機能の構築及び増強) など

2. 国内での車両生産分散化
  – 国内複数拠点での同一車種生産
  – 同一ラインでの混流可能車種増加 など

3.海外を含めた車両生産分散化
  – 海外で車両を生産し日本に逆輸入
  – 日本と海外で同一車種を生産 など

4. 調達先の分散化
  – 国内 / グローバルでの複数サプライヤ選定
  – 複数サプライヤ選定を視野に入れた部品の標準化 など

5. 在庫管理手法の最適化
  – 従来以上の有事を想定した在庫管理
  – 部品特性別での在庫数重み付け(代替不可部品は在庫を多くする) など

6. その他

アンケート結果