今更聞けない経営用語シリーズ1 BPR(3)

日頃、特にその定義や本来の意味を意識することもなく使用している経営用語を取り上げ、自動車業界の事例も交えながら説明を行っていくこのコラム。
第1弾として、BPR(Business Process Re-engineering)を取り上げており本配信が3週目となる。

第1回 BPR(Business Process Re-engineering)(3)
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前回のコラムではBPRと「カイゼン」活動の違いであり、且つBPRの失敗要因ともなりうるとして挙げたもののうちトップマネジメントの明確なイニシアチブ、戦略とBPRの関係について言及した。今回のコラムでは、もう一つ挙げていた情報システムとBPRの関係について触れたいと思う。
一般的に情報システムは日々の業務をサポートするためのもののように思われるが、その情報システムがBPRを推進する際の失敗要因になったり、実際BPRを実行したあとに情報システムの使い勝手が悪くなったという声を聞くのはどういうことかをまず考えてみたい。
情報システムは元々、日々人間が行う業務を代替させる目的で活用され始めた。特に膨大な事務処理が必要となる経理等の管理部門がその最初の利用者である。
その後、情報システム活用による業務の効率化に着目し、様々な部門が情報システムを活用していくこととなった。
当然であるが、その当時は全社的な視点でシステムが開発されていたわけでははなく、各部門ごとのニーズに合うように開発が行われていたので、部分最適な情報システムが社内にいくつもできあがることとなった。
また、当時は情報システムによる業務効率化の効果が主に注目されていたため、情報システムは実際の業務を行う人には身近なものであったが、経営陣にとってはなじみ深いとはいえないものであった。しかし、情報システムを活用して業務が行われた結果、情報システム内に記憶されることとなった膨大な情報を経営判断の材料に使うというそれまでの業務の効率化とは少し異なる情報システムの活用のされ方がなされるようになってきた。
ここにきて初めて情報システムは実際の業務を行う人だけでなく経営層にとっても身近で、その効果的な活用に真剣に取り組まなければならないものになったのである。
加えて、情報システムを活用することで、それまで全く思いもよらなかったような事業形態、戦略が可能になってきたことも経営陣にとって情報システムを身近なものにした。
例えば、現在では別に驚くべきことではないが、自動車をインターネット経由で特定の個人に販売するというような事業形態も、情報技術の発達なくしてはありえないことである。
そういった経緯を経て今や、情報システムはある固有の部門だけでなく各部門、経営陣を含めた皆にとって効果的、効率的である必要に迫られている。つまり全体最適である。
翻ってBPRのコンセプトは業務の全体最適であり、実施の際には業務を支える情報システムの全体最適も同時に目指すことになる。その意味で部分最適の発想でつくられた既存システムが、全体最適の発想であるBPRを推進する上で制約となったり失敗の原因になるのはある意味仕方がないといえるだろう。
では一度、全体最適の視点でシステムを開発してしまえば、もうそのシステムは完璧なものといえるだろうか。いや、そんなことはない。
というのも、企業を長い目で見るとそのとき、そのときで全体最適な業務という定義は変化するため、全体最適な情報システムも変化していくからである。とすると今後、情報システムを考える上で重要になるのはメンテナンスや改修の面でいかに弾力性のあるものにするかということである。
BPRを推進する際に、ERPパッケージが多くの企業で採用されているのも、ERPパッケージが情報の一元管理という全体最適のコンセプトに基づいており、メンテナンス等における弾力性にも優れているというような特徴を持ち合わせているからといえるだろう。
しかし、一方でBPRを行う際にシステム投資のROIが不明確だという意見があるのもまた事実である。
これまでBPRといえば、コスト削減が目的のようなものが多かったが、上記のようにROIが明確に意識されるようになってきた事情を受けて、今後収益の向上に直接結びつくような領域でのBPRも増えるだろう。
例えば、CRMなどはその一例である。
さて、最終回となる次回はBPRと、先程挙げたCRMを含む、様々な三文字アルファベット経営用語との関係について触れたいと思う。多々ありすぎて違いがいまいちよく分からないということなきよう分かりやすく説明していけたらと考えている。
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<秋山 喬>