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コラム

脇道ナビ (75)  『昼間のビール』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第75回 『昼間のビール』

じりじりと焼き付けるような日差しで、脳みそがぐつぐつと煮えているような気がしていた。そんな暑さが厳しい季節にもかかわらず大きな展示場へ行った。仕事に関係した展示会を見学するためである。それも、取引先と会う約束があったのでネクタイ、スーツを着て行った。会場に着いた頃には、ワイシャツはぐちゃぐちゃで、頭がくらくらして倒れそうだった。幸い、会場内は空調がきいていたので、一息をつくことができた。

大きな展示会やイベントというと幕張メッセやお台場のビッグサイト、あるいは横浜のパシフィコで行われる。こうした展示場があるのは新しく開発されたエリアで、高層ビル群や計画的に整備された大きな道などがあり、スッキリとしたデザインとなっている。案内のサインなども良く考えられている。それに、最近では、歩道橋にはエスカレーターやエレバーターなども取り付けられ、高齢者や障害者にも配慮された道となっている。

ただ、そんなイベント会場に行くたびに思うのは会場の周りで四季を感じることだ。春は周りにある高層ビルから吹き降ろすビル風、夏は広大なコンクリートやアスファルトからの照り返し、冬になると、冷え切ったコンクリートの上を吹く木枯らし。そのため最寄り駅や駐車場から会場までの道ではうんざりさせられる。特に紙袋にぎっしりと詰まったカタログを手にした帰り道は、カタログを投げ出したくなる。

そうした会場で行われるイベントや展示会の案内を見ると、たいていは「公共交通機関をご利用ください」とある。なのに、そうした駅からの道で、うんざりとさせられるのは、どうしたことだろう。もちろん、歩道に覆いをして、そこをすべて空調しろなどということを言うつもりはない。ただ、もともとエリアのデザインをするときに駅を出るとすぐに会場になるようには考えられなかったのだろうか。それが無理だとしても、駅から会場まで楽しく、潤いのある道にすることは出来なったのだろうか。例えば、大きな並木の中を通り抜ける。露店が並ぶエリアを通り抜ける。あるいは、そのエリアの歴史を示す展示パネルがある。そんなふうにして歩くのが楽しい道をデザインしなければ、しかたなしには行くことはあって、用がなければ近づくこともない冷たいエリアにしかならないだろう。

そんなエリアのデザインの在り方を考えながら、まだ日の高い時刻に展示会場の片隅で生ビールを飲んでいた。クゥー、昼間のビールはウマイ。

<岸田 能和>

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