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コラム

脇道ナビ (73)  『顔色を窺う体重計』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第 73 回 『顔色を窺う体重計』

ときおり、自分で自分のことを”天才”ではないかと思うことがある。先日もスバラシイアイデアが浮かんできた。

それは新しい体重計の企画だ。この体重計にはカメラとマイクが仕込まれており、内蔵したコンピュータに被測定者の顔色を窺う”顔色センサー”やひとり言やため息の深さを測る “ため息モニター”を搭載する。ガリガリで浮かなさそうな顔をしている人だと、測定した体重に少しおまけして体重の表示をする。反対に眉間にしわを寄せ、ブツブツ言っているふっくらとした人だと、少しマイナスして表示する。それも、女性だと多めにマイナスするようなプログラムを組み込んでおく。また、毎日乗っている人を体重計が記憶しており、少しずつ体重を減らして表示するような小技もプログラムしておくのだ。たとえ、それが事実と違っていても被測定者の眉間のしわがなくなり、表情がおだやかになればそれはそれで構わないというのがこの体重計の商品コンセプトである。いわば、「ウソも方便」だ。もちろん、一本調子で体重をマイナス表示させていくだけでなく、ときには、急に増やして被測定者に緊張感を与えることもする。

この体重計については販促グッズまで考えている。バストや胴回りを測る特製メジャー”伸び縮みメジャー”である。このメジャーはゴムのよう伸び縮みする素材できている。目盛りは少し引っ張ると普通のメジャーの目盛りと同じになるようにしておく。そうすれば、中年太りを気にしているひとは思い切って引っ張って胴回りを測ればお望みの寸法となる。女性は引っ張らず、そっと測るとお望みの豊かなバスト寸法を手に入れることができる。

こうした顔色を見る体重計や伸び縮みするメジャーは単なるふざけた商品だと言う人もいるだろう。たしかに、重さ、寸法、時間などを測る機械や道具が正確であることは大切だ。ただ、その正確さに振り回され、たった数十グラムの体重の増減に一喜一憂するのもおかしな話だ。電車がたった数分の遅れただけでもイライラするのもどうかしているのかも知れない。

大切なことは、その器械や道具を正確にすることだけではないはずだ。使う人の顔色を窺い、ため息の深さを聴き、ときにはウソもつくようなソフトウエアが必要なはずだ。定期健康診断でもらったコレステロール値を見ながら、「大丈夫だよ、このくらいなら・・・」と誰かに言って欲しいと思いながら、そんなことを考えていた。

<岸田 能和>

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