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コラム

脇道ナビ (68)  『ガンコジジイ』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある。

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第 68 回 『ガンコジジイ』

腕時計の売り場から大きな声が聞こえてきた。「エーッ、ほんと?あの型はもうやめちまちまったの!ちょっと前まであったじゃねえか。だいたいねえ、腕時計を買うのはあんたみたいに若いひとばかりじゃないんだよ。俺たちくらいの年になると、こんなチッコイ数字なんか読めやしないんだよ。知ってる?これからは、年寄りが増えるんだよ。そう、店員のあんたは悪くない。ただサー、もっと文字が大きくて読みやすい時計を作ってくれるように言ってよ。時計の会社にさ。そしたら、俺たちみたいな年よりのみんなが飛びつくよ。」と。たぶん、70 は越し、いかにもガンコジジイといったおじいちゃんが店員に、長々とお説教をしていた。茶髪のオニイチャン店員は頭こそ、さげていたが、横で精算を待っている、別の若いお客さんが気になっている様子だった。

そんなやりとりを横で聞いていて、最初は「おじいちゃん、がんばれ!」と思っていた。しかし、おじいちゃんの言うとおりに、字の大きな時計ばかりになったら、どうしようかと思い始めた。確かに、私も老眼が始まり、小さな文字を読むのが難しくなってきている。特に薄暗いところでは、めがねの縁越しでないと読めない。だからと言って、ミーハーの私としては、文字の大きい腕時計を買いたいとは思わない。なんだか、そんな文字が大きな腕時計を身につけることで、自分が高齢者になったことを認めてしまうことになりそうだからだ。それより、私が好きな小さく繊細なデザインの時計を持つことを楽しみたいと思う。そのために、暗いショットバーで、めがねを上げて、時計に目を近づけないと読めなくても構わない。

そんな腕時計と同じようなモノにケータイがある。(注:「携帯電話」と言わず、「ケータイ」というところでも私がミーハーであることが分かる)文字が大きく、操作もカンタンで、ウォーキングが趣味である私にピッタリの歩数計までついたケータイが出たときは、買い替えの一歩手前までいった。しかし、そんなケータイを持っていると、「もう、そんなお年なんですね」といわれそうなのでやめた。それより、操作が分かりにくく文字が小さくても、若い人が使っている最新の機能満載のケータイを使いこなすことにチャレンジしていきたい。もちろん、「なんで、こんなに使いにくいんだ!」とブツブツと言いながら。

モノとそんな付き合い方をする、へそ曲がりで、見栄っ張りのガンコジジイがいることも分かっていて欲しい。

<岸田 能和>

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