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コラム

脇道ナビ (54)  『アイデア商品』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第54回 『アイデア商品』

朝刊を開くと私が真っ先にチェックするのは、折り込みチラシだ。マンション、自動車、家電量販店の売り出しを始め、エステの広告にある施術前後の写真を眺めたりしながら、朝ごはんを食べるのはなかなかおもしろい。中でも楽しみ(?)にしているのが、デパートやスーパーの「アイデア商品」の催事を知らせるチラシだ。ブラインドの羽をはさむようにして拭く清掃具、サッシの枠に取り付ける防犯用の錠、グリップ式の小型のミシン、コタツの脚をかさ上げする脚…といろいろなさまざまな商品がある。もっとも、冷静に考えると、あったら便利だが、なくても困らないモノも多い。だからこそ、そうしたモノはメジャーな売り場ではなく、催事コーナーに並んでいるのだろう。ただ、いずれも、実用性はともかくとして、なるほどと思わせるアイデアを絞り出して作っていることだけは誰が見ても感じ取ることができる。そうしたオモシロサがこの催事の人気を支えている。
先日もチラシを見て、スーパーのアイデア商品の催事場に出かけて行った。
展示されている商品の中に、複数のリモコンを収納する木製のスタンドがあった。別の店では本革を貼ったものやプラスチック製のものを見かけたこともある。確かに、我が家の居間にはテレビ、ビデオ、DVD、ゲーム機、エアコン、照明のリモコンがゴロゴロしていて始末が悪い。そんなことからリモコンスタンドが売られているのだろう。ただ、バラバラなデザインのリモコンをスタンドに立てている姿は便利であるかも知れないが、お世辞にも美しいモノではない。

そんなリモコンスタンドを見ながら、改めて我が家のテレビを眺めてみた。もし、テレビ本体にリモコンを置くことができ、それが美しいデザインになっていれば、人は自然にリモコンを本体に置くはずだ。

もちろん、テレビ本体に収納しないで、いつも手元に置くほうが良いという考え方もあるだろう。ならば、手に持った状態での使い勝手ばかり考えるのではなく、使わないときにテーブルなどに置きやすい、さらに言えばリビングのアクセサリーになるほど美しい・・・そんなリモコンのデザインも考えてみてはどうだろう。

テレビ本体を薄くスマートに見せることも大切だが、人に動きや発想、あるいはその人が暮らす環境に対し、自然なモノであることはさらに大切なことだ。

人が自然にとる動作や環境を大切にしたデザインをしない限り、いつまでもアイデア商品の催事場はにぎわうのかも知れない。

<岸田 能和>

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