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コラム

脇道ナビ (53)  『掘り出しもの』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第53回 『掘り出しもの』

街中にある電信柱に取り付けられた広告を見ていると、質屋や医院がやたらと多いような気がする。もっとも、統計をとったわけではないので、気がするだけだ。さらにオモシロイのが、不法に貼られたチラシやポスターだ。先日も、近所の電信柱にスナックの求人広告があったが、「明るい女性求む」と書かれていたので笑ってしまった。あるいは、いかにもインチキそうな健康器具の展示説明会の案内、怪しげな宗教の集会案内などもあって見ていて飽きない。さらに多いのが不動産の広告だ。中でも、手書きで「必見!掘り出しもの」「早いもの勝ち」などと書かれている貼り紙がある。しかし、そんな貼り紙を見て何千万円、あげくは億を越すような買い物をする人がいるのだろうかと考えてしまう。
何度か不動産の売買の経験をした父や不動産業をやっている先輩から「不動産に掘り出しものはない」と教わったことがある。相場より安い物件には必ず、何か理由があるというのだ。日当たりや道路との関係などなら素人でもいくらか分かるが、法的な規制や権利関係などは専門家でないと、手に負えない。そうしたことを見抜くためには、相当の知識や情報を持っていないと安い物件を手に入れるのはムリだということだ。まして、電柱に貼られたチラシにそんなお得な情報があるわけがないことは、冷静に考えればすぐに分かることだ。安さだけに目を奪われて手に入れるとたいへんなことになる。

こうした「掘り出しものはない」というのは、何も不動産だけではないはずだ。最近は原油高などで様子が変わりつつあるが、バブル崩壊以降のデフレでモノの値段が下がった。しかし、価格を下げるにはそれなりの理由がある。例えば、いろいろなユーザーがいることには目をつむって同じモノを大量生産し、価格を下げるのだが、一部のユーザーにはガマンが求められる。

他にも、一昔前なら、大型家電製品を買えば、お店の人が配達してくれ、その場で数時間かけてでも、ていねいに使い方や注意事項を説明してくれていた。しかし、今どきの量販店では、「説明書は箱の中に入っています」という説明だけで、配達は別の専門業者任せ。そのため説明などもおざなりだ。そうなると、ユーザーは取り扱い説明と首っ引きで使い方を覚えるしかない。あげくにその取り扱い説明書が不親切なものも多い。そうした、目に見えないサービスなどを、はしょっているからこそ価格を下げることができるのだ。しかし、安いモノを手に入れるために失っている何かがあることも考えておかないと、たいへんなことになるような気がしてならない。

<岸田 能和>

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