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コラム

脇道ナビ (52)  『上げ底デザイン』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第52回 『上げ底デザイン』

「越後屋、おぬしも悪よのう、フォッフォッフォッ・・・。」と言いながら、菓子折りの底に敷かれたワイロの小判の数を数える悪代官(?)がほくそえむ。別のモノで覆うことで他の人に見せてはいけないモノを底に隠す「上げ底」。あるいは、箱だけは立派だが、お菓子や漬物などをたくさん入っているように見せかけるために底を二重にしているものがあった。これも「上げ底」で一昔前には観光地のお土産の代名詞でもあった。最近では、さすがに昔ほどあからさまな上げ底の箱は少なくなったようだ。

しかし、上げ底こそ少なくなっているが受け取る人を惑わせる箱はあいかわらず多い。例えば、しばらく前に買ったハンディタイプの掃除機。電気店の店頭で本体と一緒に置いてあった箱にはモダンなリビングに置かれた掃除機のカラー写真が印刷されており、その掃除機を魅力的に見せていた。しかし、いざ、買ってみると、充電時間がかかる割に動作する時間が短すぎ、どうにも使い勝手が悪い。吸塵力もさほどではない。その上、スイッチを入れるのをためらうほどの安っぽい動作音にもがっかりした。つまり、その掃除機の箱はたいした性能でもないことを隠す上げ底デザインだったのだ。

お菓子でも、昔のような上げ底こそ少なくなったが、豪華な箱に入り、ヨーロッパの老舗を思わせるような凝ったデザインの包装でありながら、口にしてみると、たいしたおいしさではないと思うものがある。箱の豪華さや凝ったデザインで、さぞかしおいしいのだろうと気分が高まっていた分、普通の味でも失望感は大きくなってしまう。

もちろん商品名や型番などだけが印刷された無味乾燥な箱にした方が良いというつもりはない。包装や箱の目的は中身の保護だけでない。包装や箱開けて、中身との出会いまでのワクワクする気持ちを高めてくれる重要な役割を持っている。だからこそ、箱などを担当するパッケージデザイナーは中身のことを理解した上でカタチ、色、素材をうまく組みあわせたデザインをすべきだ。場合によっては、中身のことに口出しをするくらいの気概も必要だろう。さもないと、つまらない中身をごまかす仕事になってしまい、「デザイナーさん、おぬしも悪よのう・・・」と言われかねないはずだ。

<岸田 能和>

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