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コラム

脇道ナビ (45)  『アタマ、カラダ、キモチ』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第45回 『アタマ、カラダ、キモチ』

ギリシャの格言に「故障のない機械はない」というのがある。先日もある駅でエスカレーターが故障して、停まっていた。それでも混雑していたので、たくさんの人が階段には回らず、停まったエスカレーターを昇っていた。私も流れに身を任せて、停まったエスカレーターを歩いて昇り始めたが、最初の数段で転びそうになって「おっとっと・・・」と思わず大きな声を上げてしまった。そして、エスカレーターの最後でも、同じようにつまずきかけた。特に早足で歩いていた訳でもないのに、つまずきかけたのが不思議でならなかった。しばらくして、つまずきかきけた理由が分かった。それは、エスカレーターの最初と最後は、階段の段差がないのにも拘らず、段差があると思って足を踏み出し、にバランスを失っていたからだ。つまり、思い込みである。それにしても、アタマでは段差がないことは分かっているし、目で見て確認までしているのに、カラダとキモチはついて行っていないというのはオモシロイやら怖いやらであった。

同じような経験は少なくない。いつもは重いモノが入っている箱を力一杯持ち上げたら、中身は空っぽ。おかげで、後ろにもんどりうったことがある。これも、思い込みのおかげだ。油が切れて、いつもは力を入れないと開かない鉄の引き戸。そのつもりで、ヨイショと開けたら、軽く開いてしまい、あげくにはね返って指を挟みそうになったこともある。だれかが油をさして、軽く動くことを知らなかったからである。

サイズは小さいが、取り上げてみると、ズッシリとした重さに驚く。やがて、その重さが高級感や安心を感じさせる携帯電話やデジタルカメラ。たっぷりと荷物をしまえる大きいスーツケース。なのに、その軽さと丈夫さは信じられないと声をあげさせるほど。そうした、驚きを感じさせるのは経験や常識で作りあげられた「思い込み」があるからだ。

こうしたユーザーたちの思い込みを逆手にとって魅力につながる驚きを与えるのが商品を作りあげるオモシロさだと思う。そのためには、デザイナーや商品プランナーこそが経験や常識の大切さを良く分かっていないといけないはずだ。(注:冒頭の格言はウソです。でも、多くの格言が伝わっているギリシャならこのくらいの格言ってありそうだと思い込んでいませんか?)

<岸田 能和>

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