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コラム

脇道ナビ (35)  『骨折り損のくたびれもうけ』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第35回 『骨折り損のくたびれもうけ』

休みの日にデパートの催事コーナーで金太郎飴を買ってきた。温めて柔らかくした何色かの飴を重ねて、棒のように細く伸ばしていく。直径が 2 センチくらいなったところで切ると、その断面に金太郎や花などの模様が現れるという伝統的なお菓子である。雑誌の記事によると、最近は特注で自分の顔や会社のマークなどのオリジナルデザインを引き受けてくれる店もあるそうだ。味は普通の味だし、値段も安いわけではない。それでも、断面に浮かび上がった金太郎や抽象的な模様にひかれ、ついつい買ってしまう。それは、「金太郎飴」というと、同じようなものが並ぶことの代名詞として使われるが、実際は違うからだ。当り前なのだが、手作りのために、男前の金太郎だけでなく、怒った金太郎、馬面の金太郎、つぶれた顔の金太郎など様々な顔があって一つ一つを並べてみるとオモシロイからだ。これが、機械を使えば、本当にどこを切っても寸分違わない顔の金太郎飴を作ることは可能だろう。また、値段もうんと引き下げることもできるだろう。しかし、それでは興ざめだ。

そんな金太郎飴をなめながら新聞を読んでいたら、気になる記事を見つけた。
ある企業が商品戦略を変え、「値段の安さ」で勝負するとあったからだ。確かに、デフレの進む中で、値段を安くすることは大切なことだろう。しかし、記事を読む限り、値段の安さのことしか書いていなかった。他社にない色、形、香り、味、風合い、安全性、機能、性能、耐久性…などの魅力で勝負し、なおかつ値段の安さで勝負するというのなら理解できるのだが、どうやらそうではないようだ。

値段が安くなることは、消費者にとって、基本的にはありがたいことだ。しかし、値段を安くするために機械で作った金太郎飴のように寸分違わない無個性なモノを大量に作り、大量に販売することを前提とするのならごめんである。それは、商品を企画したり、開発したりする人も同じキモチだろう。一生懸命になって商品を市場に出しても、値段だけの勝負だと、よほどの数を売らないと儲からないし、売れたとしてもお客さまは、「まあ、この値段だから、こんなモノだよね」と言ってくれるくらいにしかならない。これでは骨折り損のくたびれ儲けだ。

<岸田 能和>

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