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コラム

脇道ナビ (34)  『鳩の家』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第34回 『鳩の家』

屋根完備。眺望絶景。建物頑強。食料豊富。猫等の天敵少なし。敷金・礼金・家賃不要。そんな「駅のホーム」は鳩の世界で発行される不動産情報誌なら、最高の人気物件なのではないだろうか?そのため、どこの駅でもホームに住みついた鳩で困っているようだ。ホームを歩くと白いシミがたくさんあり、柱には「鳩のフンに注意」とか「鳩にえさをあげないで下さい」などと書かれている。実際に真っ黒いコートを鳩のフンで汚された友人もいる。

苦情を受けている駅もいろいろと対策はうっているようだ。カラスよけかも知れないが、目玉模様の風船のようなものを天井からぶら下げている駅もある。しかし、何より効果があるのは、鳩が羽根を休める場所をなくすことである。そのため、多くの駅では鳩の入りこみそうなところには板でふさいだり、ネットを張ったりしている。ただ、駅のホームならではの難しさがある。それは、多くの駅のホームでは構造物がむきだしとなっており、水平に渡された梁がたくさんある。また、駅名や広告の看板が天井から吊り下げられている。いずれも鳩たちにとっては、高い場所なので外敵から身を守ることができる格好の羽根休めの場になる。

そこで、多くの駅で行われているのは、梁や吊看板の上の面に、尖った針金をびっしりと立てている。わかりやすく言えば、生け花で使う剣山のようなものである。ただ、剣山なら花を生けてしまえば、見えなくなるが、駅の梁や看板だとそうはいかない。尖った針金が並んだ痛々しいデザインであり、駅という公共的な場にふさわしくない。

もちろん、鳩に一張羅のコートを汚された友人のことを思うと、鳩が迷惑な存在であることを否定するつもりはない。ただ、鳩を遠ざけるにしても、それなりのデザインややり方があるのではないだろうか?尖った針金を立てるのではなく、梁や看板の上にある平面部分を傾斜させて鳩がとまれないようにしてはどうだろうか?あるいは、針金でなく、金属板を山形に切り、それらをいろいろな色に塗って、立ててカラフルな山脈のように見せるというアイデアもある。あるいは、鳩の嫌うにおい、音、素材などで遠ざけるといった手もあるだろう。 「駅」は子供、親、恋人、喜んでいる人、悲しんでいる人、外国から来た人を始め、多くの人が集まる場である。そんな場にむき出しの剣山のような無神経なデザインはふさわしくないと思うひとがもっと増えるべきだ。

<岸田 能和>

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