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コラム

脇道ナビ (25)  『言い訳上手』

自動車業界を始め、複数の業界にわたり経験豊富なコンセプトデザイナーの岸田能和氏が、日常生活のトピックから商品企画のヒントを綴るコーナーです。

【筆者紹介】
コンセプト・デザイナー。1953年生まれ。多摩美大卒。カメラ、住宅メーカーを経て、1982年に自動車メーカーに入社。デザイン実務、部門戦略、商品企画などを担当。2001年に同社を希望退職。現在は複数の業界や職種の経験で得た発想や視点を生かし、メーカー各社のものづくりに黒子として関わっている。著書に「ものづくりのヒント」(かんき出版)がある

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第25回 『言い訳上手』

まだ、クルマのメーカーにいた頃の話だ。ある日、建築家の先生と食事をしているときに「なぜ、クルマには縞模様や水玉模様の外装はないのですか?」と尋ねられた。もちろん、車種によってはスポーティなイメージを出すために部分的に縞模様(ストライプ)を貼り付けたクルマはある。しかし、建築家の先生は、ファッションデザインのようにボディ全体にストライプや水玉模様(ドット)が施されたクルマがあっても良いと思われたようだ。確かに、濃いブルーのボディに金色に近い色のピンストライプが整然と施されているとキレイだろう。あるいは、赤色、黄色、ピンク、水色などの明るいドットがボディにちりばめられているとポップなデザインが強調でき、おもしろいクルマになるだろう。しかし、そんなクルマは、少なくとも量産車にはない。

そこで、私は「建築家の先生もクルマがどうやって作られているのかを知らないのだな」と思った。そして、したり顔で「自動車の生産ラインは自動化されており、縞模様や水玉では、位置決めなどの問題があって量産が難しいですね。また、そんな縞模様や水玉を三次元の曲面に塗装や印刷できる機械もありませんから。他にも耐候性の問題もありますし・・・」と答えた。その建築家は「そうですか・・・」と言われ、話題を変えてしまった。しかし、その先生の顔が少し悲しそうに見えたような気がしてならなかった。そして、ずいぶん、日にちがたってから、私の答えのオカシサに気がついた。

それは、私が答えるべきことは縞模様や水玉模様をしたクルマがないのはそんなクルマを欲しがるお客さまがいるかどうかや、そんなデザインを実現したいかどうかであった。そんなデザインが量産可能かどうかは、お客さまやデザイナーの強い思いがあるのなら、少量生産で作るとか、曲面のボディにストライプを施す機械を開発するとか、を考えればよい。

業界や専門の中にどっぷりと浸かっていると、既存の考え方や自分達の都合だけで考え、新しい考え方が出てきても「できない理由」をすぐに考えるようになってしまいがちになる。つまり、言い訳上手になり、守りに入ってしまう。たまには、言い訳を考えることを、ぐっと我慢して、相手が何を求めているのか、自分は何をしたいのか、を素直に考えることが重要だ。

<岸田 能和>

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