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コラム

think drive (26)  『 車の安全と自由 』

新進気鋭のモータージャーナリストで第一線の研究者として自動車業界に携わる長沼要氏が、クルマ社会の技術革新について感じること、考えることを熱い思いで書くコーナーです。

【筆者紹介】

環境負荷低減と走りの両立するクルマを理想とする根っからのクルマ好き。国内カーメーカーで排ガス低減技術の研究開発に従事した後、低公害自動車開発を行う会社の立ち上げに参画した後、独立。現在は水素自動車開発プロジェクトやバイオマス発電プロジェクトに技術コンサルタントとして関与する、モータージャーナリスト兼研究者。

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第26回 『車の安全と自由』

日本では、昨年交通事故で亡くなる人が 5500 人/年まで減少した。1970年代の「交通戦争」と呼ばれた時には 2 万人を越すまで上昇したが、その後、国、メーカー、ユーザーの三位一体の取り組みで減少の一途を辿り、ここまできた。今年の年頭、首相は今後 10年間でさらに半減を目指す目標を掲げた。

ところで、クルマの安全性能が向上することに反論する人はいないだろう。しかし、動力性能やデザインといった魅力性能ほど注目されていなく、注目度という点では、昨今の地球環境の変化で注目されるようになった環境負荷低減性能に遅れをとっている感がある。

クルマの安全性能は、大きく 2 つに分けられる。事故を未然に防ぐプリクラッシュあるいはアクティブセーフティがひとつ。もうひとつは、事故が起きてしまった場合の被害を最小にするパッシブセーフティ。これら両者に関わる技術開発が進んできて、交通事故での死亡者数が減ってきているのは明らかだ。

開発の流れとしては、パッシブセーフティが先で、シートベルト、エアバッグ、安全設計ボディなどがある。これらの組み合わせにおいて、乗員の被害低減がなされてきた。そして、最近はプリクラッシュセーフティに関わる技術開発も盛んだ。ABS、TCS、ESP とドライバーの運転を補助する電子制御デバイス性能が向上し、ドライバーのコントロール下を離れた場合の安定性確保や、コントロール下への復帰を可能として、スピン等を防ぐ。

このプリクラッシュあるいはアクティブセーフティーという技術範囲はさらに広がり、ドライバーの視覚情報や判断の補助にまでおよび、レーダーやカメラを使った画像処理技術の進化と相まって、前方を走るクルマとの距離を測定し、自動に距離を保つ、アダプティブクルーズコントロールなどは多くの市販車に装備されてきている。さらに車線からの逸脱を防止する、レーンキープアシストや、斜め後方の死角情報を補助するブラインドスポットアシストなども実用化されてきている。

このように、アクティブ、パッシブセーフティーともに性能向上してきているのだが、さらにクルマを交通システムの一部ととらえ、各車両がプローブとなり、交通管理システムとの情報をやり取りすることで、多くの事前情報が得られ事故未然防止に役立つ。イメージは飛行機の官制システムだろう。 全てのクルマを管制下におき、制御する。たしかに航空の分野の圧倒的安全性の高さは誰もが認めるところ。

以上のような流れは、つまり、クルマの自動運転化や完全管理化へと向かっている。ところが、クルマという移動手段の魅力のひとつに、自由、がある。 好きな時に、好きなところへ、好きな人と、好きな速度で、移動できる。 もちろん現在でも法規があり、完全自由ではないが、まあ、他の交通機関よりは圧倒的に自由だ。

この自由さと相反するのが自動操縦化で、賛否両論あるのはいうまでもない。プローブ車による管理というところまでいかないまでも、自動ブレーキなどの操縦介入という時点で拒否感を覚える人もいるだろう。かくいう自分もそうだ。自分の思い通りの動きを、自分の操縦で行える感覚は捨てがたい。

しかし、この手のジレンマ、トリレンマは、開発者サイドも十分承知で、開発の重要課題は、如何にして、ドライバーに違和感を感じさせないかという点にあるという。安全性向上は公道上を走るクルマにおいて必須であり、多少の違和感があるために採用を止める必然性は全くないと思う。 但し、カットオフスイッチは用意して頂きたい。サーキットなどのクローズドコースでの使用の際は、「自由」に走りたいから。

<長沼 要>

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