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コラム

think drive (24)  『 2008年振り返り 』

新進気鋭のモータージャーナリストで第一線の研究者として自動車業界に携わる長沼要氏が、クルマ社会の技術革新について感じること、考えることを熱い思いで書くコーナーです。

【筆者紹介】

環境負荷低減と走りの両立するクルマを理想とする根っからのクルマ好き。国内カーメーカーで排ガス低減技術の研究開発に従事した後、低公害自動車開発を行う会社の立ち上げに参画した後、独立。現在は水素自動車開発プロジェクトやバイオマス発電プロジェクトに技術コンサルタントとして関与する、モータージャーナリスト兼研究者。

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第24回 『2008年振り返り』

今年もとうとう12月に突入し、筆者のメルマガ担当も今年最後となった。月並みだが、今年2008年のクルマに関わるトピックスをまとめてみようと思う。
今年は以下の3つのキーワードを上げてみたい。それは、

・ディーゼル乗用車
・電気自動車
・コンパクト

では、それぞれ振り返ってみる。

まずは「ディーゼル乗用車」の躍進。この点は欧州、北米、日本とそれぞれのトピックがあった。欧州ではその動力性能のより向上とエミッションの両立。具体例に相応しいのが、M.Benz C250CDI Blue Efficiency. 2.2Lながら150kWと500Nmの最大出力、最大トルクを誇り、それでもCO2排出性能を143g/kmに抑え、ユーロ5のエミッション規制にも先行適合している点が素晴らしい。このところ進化の著しいターボ制御技術を用いてシーケンシャルツインターボによるこの相反する性能の両立を達成している。

北米では、現在世界一厳しい排ガス規制といえるTier2Bin5 (カリフォルニアLEV2規制と同一)を始めて適合してきたVW Jetta TDIが上げられる。こちらもシーケンシャルツインターボ技術をどちらかというとEGR 制御に適応してきて、エンジンそのものから排出されるNOx を低下させる技術により、この厳しい規制をクリアしてきた。日本と同じくディーゼル乗用車へのイメージがあまり良くない北米市場で、ディーゼル乗用車を販売するということは、北米でもCO2 削減へ向けた動きが活発化している証拠だろう。AudiもQ7とA4で追従することをあきらかにしているし、M.Benzも先行販売(Tier2BIN8)しているE320CDIをBIN5適合し、さらにGLK、MLクラスも適合し投入する。

そして、ディーゼル乗用車が皆無だった日本の新車市場に、来年から施行されるポスト新長期規制を先行適合して発売開始されたクルマがある。日産エクストレールディーゼルだ。日産独自のMK燃焼という大量EGR と噴射時期制御により、エンジンから排出されるNOxとPMを限りなく低減し、さらに、NOx吸蔵還元触媒を搭載し、エンジンと後処理の統合制御をおこなうことで、ポスト新長期規制をクリアしてきた。この技術はディーゼル排ガス制御の今後のトレンドとなるものだ。また、現行規制適合でパジェロディーゼルも復活し、これらの2台が今後の日本のディーゼル乗用車を牽引することだろう。

次のトピックスにあげた電気自動車は、量産モデルではないものの、特に三菱、スバルの積極的な広報活動もあり、今年一年で、iMiEV とステラプラグインコンセプトは、あたかも市販車のような知名度となった。どちらも日本独自の軽自動車というカテゴリーをベースとしていて、電気自動車との相性のよさもあり、すぐにでも市販化されそうな状態だ。事実、来年2009年からは両車とも実証実験用として週百台規模の製造を行う。日産自動車も電気自動車を2010年から市販するとしていて、2009年のモーターショーでその全容を明らかにするという。

この電気自動車を取り巻く環境は、東京電力を中心とした各地の電力会社が積極的な事や、日本郵便での先行採用、あるいは神奈川県などの補助制度の充実などからも本格普及を目指していることが分かり、これからがとても楽しみだ。相変わらず、パッテリーが色んな意味で鍵を握っているが、いままでのクルマの使い方にとらわれない、新しいスキームや、クルマそのものの使い方の変化など、多方面からの変化で普及へ結びつけたい。

3つ目のトピックスにあげたのは、コンパクト。3mを切る全長に大人3名プラス1 というコンセプトで話題をさらったトヨタiQが日本と欧州で11月に発売開始された。スマートが約10年前に提案した、都市に相応しいモビリティの形を、トヨタもはっきりと意識しているといっている。世界のベストセラーカーであるVWゴルフやトヨタカローラの例を上げるまでもなく、クルマはモデルチェンジの度に大きくなり、ほとんどのクルマは初代の約2倍の大きさになっている。

もっとも、その間、衝突安全性は格段に向上している点も見逃せないが、クルマの利用パターンは1人や2人が多いという事を考えるともう少し小さくなっても良いと考えられる。ダウンサイジングはCO2 排出量の削減や、ローカルエミッション物質の削減だけではなく、都市部の駐車場問題などにも貢献する。いくら素晴らしいコンパクトなクルマを作っても、ユーザーが大きく立派なクルマを嗜好したのでは状況は好転しない。ぜひ、いままでのクルマに対する使い方、価値観を一度振り返ってみて、新しく既成概念にとらわれない価値観をみつけてみてはどうだろう。

以上が3 つのトピックスだが、本当はもう一つ「金融危機」をあげるべきだろうと思う。しかしながら、このテーマはおそらく他のメルマガ執筆者が題材にあげるであろうし、筆者の専門分野でもないので割愛させて頂くが、来年のGM、フォード、クライスラーの動向には注目せざるを得ない。その意味でも、例年新年1月に開催されるデトロイトショーには注目したい。

<長沼 要>

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