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コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(31)『事業計画』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第31回の今回は、事業計画についてです。

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新年早々から自動車業界をはじめ、どこの業界においても事業計画の見直しや予算の作成を始めているのではないだろうか。今回はこの事業計画について考えていきたい。

そもそも事業計画とは何だろうか。事業計画は定性的なビジョンや戦略をアクションプランに落とし込み、そのプランをある期間に区切って定量化し、事業経営のPDCAサイクルの「P」に該当するものだ、と定義することができる。この順番で、事業計画の作成について考えていくことにする。

1.外部環境や内部環境の事業計画年数の間の前提を置く。
まず、己を知り、敵を知ることから始める。
(1)外部環境 : 市場情報、競合情報、ステークホルダーに求められてい
るもの、等
(2)内部環境 : 企業風土、経営資源(人・物・金)の分析、等

(3)販売力分析: 自社の商品のSWOT分析・プロダクトサイクル・価格等

2.前提の中で自社のあるべき姿、定量的な目標を設定する。
前提条件の中で自社のポジショニングと将来像を明確化する。この時に気をつけたいのは、ステークホルダーの存在である。株主だけではなく、従業員や債権者などあらゆるステークホルダーが自社に何を求められているかを考 え、自社の経営のスタンスやポジショニングについておさらいをすることは必要なことである。
また、定量目標は、どのようなメッセージをこの事業計画に持たせるかを左右する重要なポイントである。いくら説明をしても数字というのは一人で歩き始めるものだ。この数字を目標にあった解り易いものにしていくことが重要である。

3.アクションプランに落とし込む。
あるべき姿と定量的な目標への到達に向けて「誰が」、「何を」、「何時」行うのかを決める。それぞれの役割を持つ部署レベルまでこのアクションプランを落とし込み、現場との擦り合わせを行っていく。
この時は、現場に押し付けることがないように意識統一を図っていくことが肝要である。現場に押し付けてしまうことで事業計画を消化するだけの消極的な事業計画になってしまうからだ。
目標に到達する為に必要な経営資源も合わせて検討していく。この結果が、人員計画、投資計画等となるのである。

4.定量化する。
経営資源を効率的に活用しながら目標に到達するアクションプランを定量化していく。定量化はあくまで会計制度に則った形で行われるが、必ずしも会計制度のルールとイコールである必要は無い。事業計画はあくまで社内のものであって社内の目標や管理の目的にあったものを作成すれば良いのだ。事業計画のPDCAサイクルをうまく回すことを念頭に定量化をすることが重要である。
定量化自体は前提と部署毎のアクションプランに応じて作成していけばよい。販売台数、売上高、営業利益、当期利益などは目標設定時に決まっていることが多い。それ以外の項目において変数と成り得る事象と固定となっている事象を整理し、変数となっている事象についてはその根拠を整理することで事業のポイントを見極め、PDCA サイクルで見ていく項目を決定しておくことが必要になる。

事業計画はこのように作成されていくが、筆者は事業計画で一番必要なものは一貫性なのではないか、と考えている。事業計画を策定するに際して、関係者の数は非常に多い。各部署の要求にすべて答えることはできないし、社内の政治力のようなものが見え隠れしてしまうこともあるだろう。

しかし、経営と現場を繋ぎ、共通の物差しを用意することが重要であり、これはマネジメントの仕事である。共通の物差しを持ち込むことで議論が活発になり消化型の事業計画ではなく、チャレンジする為の事業計画が生まれるのではないか。

自動車業界では日産が営業利益率、負債額、販売台数など解り易い定量目標とコミットメントという言葉と共に事業計画を描き、達成してきた。ここでは上記の共通の物差しが導入された結果ではないだろうか。今は、GM の再生計画についてのニュースが散見され、固定費の比率を削減するなどの計画を打ち出している。どうしてもレガシーコストなどの話題になりがちだが、GM には良い車を製造・販売する為のキーワードと夢のあるビジョンを打ち出し、現場と経営を繋ぐような物差しに裏打ちされた事業計画を描いて欲しい。

また、共通の物差しは、PDCA サイクルを回す時にも重要である。事業計画は2年から 5年のものまで様々だが、その間、外部環境も人も変っていく。変っていく中で共通の物差しを持っていることで一貫性が生まれ、PDCA がより効果的に回るはずである。事業計画を立てることがゴールではなく、達成して次に繋げることでゴール=新たなスタート地点に立つことができるのだ。

<篠崎 暁>

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