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コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(27)『出資比率』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第 27 回の今回は、出資比率についてです。

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最近 1 ヶ月の間に自動車業界では様々な資本提携・解消などが行われている。
そこでは何%の株式を取得・もしくは売却したと報道されている。今回はその出資比率と議決権比率について解説したい。

通常、この出資比率は発行済み株式総数を分母とし、取得もしくは売却した株式を分子として計算される。発行済株式総数とはその会社が発行している株式の合計を言い、企業が発表している場合、普通株式も優先株式も含まれることが多い。会社は株式を発行できる枠を設けており、これに対して発行できる枠の内、発行済の株式という意味で発行済株式総数と言うのである。 但し、普通株式だけを発行している会社の場合は、出資比率が議決権比率と同率になるのだが、優先株式などの種類株式が含まれている場合は種類株式の権利は様々な設計が可能となっているので出資比率と議決権比率が同率とならない場合があり、注意が必要だ。議決権比率とは、株主としての権利を行使できる割合を意味しており、通常株主総会での経営の重要事項を決める場合には議決権を行使する割合で決議されるため、経営に影響を及ぼす意味では重要な比率である。

企業はこの議決権比率を何%取得するかで、その会社へ経営上のガバナンスと会計上の影響の双方の観点からの関与度合いが変わるのである。議決権を取得する時には大きくわけて5つの区切りがある。20 %以上、33.33 %超、50%超、66.66 %超、100 %である。

1.20%以上
(1)経営上のガバナンス
20 %を保有する場合には、商法上特別な権利が20%以上の株主にあるわけではない。但し、筆頭株主になるかどうかという意味では経営上のガバナンスに影響を及ぼすこととなる。筆頭株主となれば他の株主をリードし、経営方針を自社のしたい方向に誘導することができる。
(2)会計上の影響
20 %以上の議決権比率を持つと連結決算上は関連会社となり、その出資した会社の損益が連結決算上加算されることになる(例外もある)。
この為、20 %以上を持つとグループ企業と呼ばれることにもなり、損益も加算される為、経営上のグリップを握る必要があり、取締役なども派遣されることが多い。

自動車業界で昨今 20 %以上の出資は、ポルシェが VW に 20 %の出資をしている。ポルシェはおそらく VW の損益を連結決算上加算することにもなる為、これから大規模なリストラを必要とすると言われているVWの損益を加算してしまうことを恐れ、投資家はポルシェの株式を売却し、株価が下がるなどの影響が出た。

一方、20 %未満の出資比率にはどのような意味があるのだろうか。段階的な提携を行う場合や、企業間のお付き合いによる出資を行う場合が挙げられる。トヨタが富士重の発行済み株式総数の 8.7%を取得したケースで20%取得できたのにも係らず、20 %未満に抑えたことが様々な憶測を呼んでいるのは、グループ企業とできるにも係らず、出資比率を抑えたことによるものだ。GM とのお付き合いによるもの、公正取引委員会との協議をした上で段階的な提携を行うのか、という議論はこのような背景によるものである。

2.33.33%超
(1)経営上のガバナンス
33 %以上を持つと経営上の拒否権を得ると言われている。これは、特に経営上重要な事を決定する場合には株主総会の特別決議が必要とされている。株主総会の特別決議は 2 / 3 以上の議決権が必要とされるので、1/3以上を持っていれば、経営上重要な事項に対して拒否することができるため、このように言われるのである。

(2)会計上の影響
20%以上50%以下はその会社を損益だけを一行(持分法投資損益)で認識するだけである為、33.33%超にしたことによる影響は無い。より多くの損益が加算されるだけである。

3.50 %超
(1)経営上のガバナンス
会社の議決権の過半数を取得することになる為、通常の株主総会の決議事項を自社の方針に沿った形で決議することが可能になる。取締役の就任などの会社の経営者の人事権をもつことになる為、過半数を保有している会社から代表取締役社長が派遣されるケースが多い。

(2)会計上の影響
連結決算上も子会社として損益だけではなく資産負債も全額合算し、損益は少数株主の持分だけを少数株主損益として除外する形で認識されるのである。連結決算上は過半数を持った時点で親会社と一体化すると言えるだろう。

最近ではトヨタが第三者割当増資によってパナソニックEVエナジーへの出資比率を40%から 60 %に引き上げ子会社としている。ハイブリッド車の重要部品である電池を製造する同社を子会社化し、より関係を強化したのだ。つまりトヨタ自動車としてはパナソニックグループの経営方針ではなく、トヨタの経営方針に沿った技術開発を行う会社になったと言えるのである。

4.66.66%超
(1)経営上のガバナンス
上記 2 と逆の状況で、特別決議を自社の方針に沿って進めることができる比率であり、ほぼ全ての事項で自社の経営方針に沿った決定を行うことができる。

(2)会計上の影響
会計上は 66.66 %に影響されず、子会社として認識されるだけである。

5.100 %
(1)経営上のガバナンス
完全子会社化と言われる。他の株主がいない状況であるのだから自社の一部門とも言える比率である。合併を前提として資本提携などを行う場合、一旦 100 %にしておいて企業文化やシステムの融合などを図る時間を作る場合に一旦 100 %とする場合がある。
(2)会計上の影響
子会社として損益も資産負債も全額合算される。また税務上は、100 %とすることで連結納税が可能となり、税務上も一体化が認められている。

このように議決権を何%取得するか、ということはその企業の株式を何で取得するか、という戦略と一体化しているのである。その企業の何が欲しくて株式を取得するのか、技術・設備・人・販路様々であろう。そのリソースを親会社となる自社としてどのように活用したいのか、ガバナンスをどのように効かすことが自社にとって一番効果的なのかを考える必要がある。そのガバナンスの効かせた結果として会計に反映される資産や利益がそのグループとしての新たな価値創出に繋がるのだ。
つまり、ガバナンスを効かせる立場の株主もしくはその株主から派遣される経営者が自社の戦略を明確に理解し、ガバナンスとその結果から生まれる価値を最大限得られることを目指す必要があるのだ。但し、ガバナンスという言葉は使われる側からは嫌な言葉である。イコールパートナーとしての経営者としての立場を貫きながら株主としての側面を活かすことがこのような立場の経営者には求められているのではないだろうか。

<篠崎 暁>

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