本文へジャンプ

コラム

今更聞けない財務用語シリーズ(22)『役員報酬』

日頃、新聞、雑誌、TV等で見かける財務用語の中でも、自動車業界にも関係が深いものを取り上げ、わかりやすく説明を行っていくコラムです。

第 22 回の今回は、役員報酬についてです。

——————————————————-

株主総会の時期になると、「日産では今回の役員報酬の総額を 20 億円から26 億円に増額した」、「三菱自動車の役員報酬額の総額は前年比で減少した」などといった役員報酬に係る話題が尽きない。

役員報酬とは、株主から経営を委託されている経営陣に対して法人が支払う報酬の事である。役員報酬は、一般的には経営監督責任に対する手当てとして支払われる固定的な部分と、全社目標達成に対する報酬として支払われる変動的な部分の 2 つに大別される。但し、給与に相当する年棒の中でも固定的な部分と目標の達成度に応じて変動する部分が存在する為、必ずしも変動=賞与にならないことは留意する必要がある。

役員報酬の決め方であるが、経営監督責任に対する固定的な報酬は同業他社の基準などを参考にする場合が多く、変動部分は目標の設定やその達成率などから、個別企業の経営方針に基づいて決定する場合が多い。

また、支払方法だが、固定的な報酬としては、毎期の経営監督責任に対する例月給与のような形の支払いや、役員の貢献の累積に対する役員退職慰労金としての退職時支払いなどがある。一方、変動部分については役員報酬の変動部分として支払う方法と長期的な事業の成長に対するストックオプション付与などの方法がある。

上記を整理すると以下のように区分できる。

○役員報酬
1.固定部分
(1)経営監督責任に対する報酬      : 報酬(給与相当)
(2)役員としての貢献の累積に対する報酬 : 役員退職慰労金
2.変動部分
(1)利益目標達成に対する報酬   : 報酬の変動部分・役員賞与
(2)企業・事業の成長に対する報酬 : ストックオプション

一般的に企業は、この4つの手法の組み合わせで役員報酬の設計を行うことが多い。

従来、日本では上記固定部分を厚くしている企業が多かった。これは、役員賞与が税制上、損金不参入であり税務上のメリットが無かったこと、また、多くの企業の経営方針が成果主義では無く年功序列的な制度設計に主眼を置いていたことによる。

しかし、昨今の成果主義導入の流れは、変動部分を厚めにしながら固定部分(特に役員退職慰労金相当部分 *)を減額していく方向にある。ストックオプションを役員に付与している企業が増加しているのはこの表れである。

*役員退職慰労金制度は取締役の在任年数に応じて支払われる一種の役員の退職金のようなものであり、何もしなくても固定的に慰労金が貰える仕組みとなっており、成果主義の考え方と相反する為に、この制度を導入している企業が少なくなっている。

日本では役員報酬の開示が遅れている為に、各企業の役員報酬の全体像は見えにくいのが実態であるが、営業報告書などから推測する事は可能である。

例えば日産の場合、2004年 3月期に支払った取締役 9 名への報酬額は 1,642百万円である。この報酬以外に役員賞与が 390 百万円、退任した取締役への退職慰労金が 693 百万円となっている。この他にもストックオプションを付与している。上記の4つの手法を組み合わせていることがうかがえるが、特に役員報酬及びストックオプションに重点を置いているように見受けられる。おそらく、役員報酬の内訳も固定部分と変動部分に分かれており、変動部分は各役員の属する部門のコミットメントの達成度合いに応じた報酬の支払い、その結果が株主及び投資家に評価され、株価に反映されれば、ストックオプションとして長期的な成果が評価される仕組みになっているのではないだろうか。

即ち、株主重視とコミットメントの考え方を組み合わせた報酬制度になっていると考えられる。

こうした役員報酬を決定する際に考えなければならないことは、金額の多寡ではなく、役員の役割や責任の明確化であろう。

役割と責任の範囲が決まっていなければ、企業としての注力方向性とそれに基づくリソース分配(即ち、株主から経営を委託されている役員への報酬分配)の決定は困難であり、結果として会社の経営が上手くいかなくなってしまう可能性すらある。株主から権限委譲された経営者としての位置付けを明確にしなければ株主の利益も損なってしまう。

これに加えて、経営者には株主代表訴訟などで株主などから訴えられるリスクもあり、このリスクに応じた報酬設定も必要だろう。

今後の商法改正などにより、企業の持つ潜在能力の最大化と企業統治の 2 つの観点から、経営者の報酬に関する議論は活発になってくるであろう。また、現在は外から見え難い役員報酬制度も透明性が求められ、開示することが義務付けられるかもしれない。

役員報酬は企業の経営方針や株主の期待を織り込んだものである為(どの領域の担当役員にどの程度のリソースを分配したかという結果は、同企業の過去の業績評価と将来予測を行ううえでは大切な指標である)報酬制度の内容は投資家や株主向けのメッセージとして、より重要な位置付けになってくるだろう。

<篠崎 暁>

  • コラム
  • 業界アンケート
  • 書籍&レポート
メールマガジン

住商アビーム自動車総合研究所が発信する各種情報をご紹介します。当研究所のスタッフが日々移り変わる自動車業界を、経営と現場を結ぶ視点で紐解いた記事やコラム、等です。

無料配信申し込みはこちら
PDF メルマガ見本はこちら

News -プレスリリース・メディア対応 自動車業界ライブラリ

UPページの先頭へ