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コラム

自動車業界とXX業界 第6回『自動車業界と建設・不動産業界(1)』

自動車業界と××業界を比較し、製品、業界間の関連性や類似点・相違点から自動車業界への示唆を探るこのコラム。弊社副社長の秋山喬とアビームコンサルティング経営戦略事業部シニアコンサルタント山田将生の共同執筆です。

第 6 回の今回は、「自動車業界と建設・不動産業界(1)」です。

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【はじめに】

第 6 回目となったこのコラムだが、趣旨を説明すると、自動車業界と他業界とを比較し、業界間の関連性や業界特性等に関する類似点・相違点を把握。最終的には他業界との比較から見えてくる自動車業界への示唆を導き出そうとするものである。

第 6 回の今回は建設・不動産業界との比較である。自動車業界は日本経済において全就労人口の約 8 %を占める基幹産業であるが、建設・不動産業界は両業界合わせて全就労人口の約 10 %を占めており、自動車業界と同等、それ以上に国民生活に根ざした産業といえる。

建設・不動産業界は大まかに言うと建設物を製造するのが建設業界であり、完成した建設物を消費者へ提供、販売するのが不動産業界ということで建設物のバリューチェーンを形成しているということができる。

両業界の構造を簡単に説明すると、まず建設業界は元請である総合契約者(ゼネラルコントラクター、略してゼネコン)、住宅メーカー等が発注者から一括で建設工事を請け負い、サブコントラクター、略してサブコンとなる職別工事業者、設備工事業者と下請負契約を結び、工事の施工管理を行いつつ、建設物を完成させるという構図になっている。

代表的なゼネコンには鹿島、大成建設、清水建設等が存在し、代表的な住宅メーカーには積水ハウス、旭化成ホームズ、トヨタホーム等が存在する。

ゼネコンの場合、建設物の発注者が多岐にわたり、政府からの発注も 2004年度建設投資見通しで 4 割程度に上る。発注者の多様性ゆえに、発注される建造物も多岐にわたることとなり、巨大なダム、橋梁、超高層ビルからガス配管、エアコン整備までもが建設対象となる。

次に不動産業界では、まず不動産の開発・分譲を行う業者が存在し、大規模なニュータウンの開発、都市部での市街地再開発からマンション開発まで多種多彩な事業を営んでいる。自ら土地を購入して大規模開発を行うのはディベロッパーといわれる大手の不動産業者であり、上記ゼネコンへの発注者ともなっている。

代表的なディベロッパーには三井不動産、三菱地所、住友不動産等が該当する。

不動産業界におけるその他のプレイヤーとしては、売主(貸し手)と買主(借り手)の間に立って手数料を得る不動産斡旋業者や、オフィスや住宅などを貸して賃料を得る不動産賃貸業者、マンション管理・ビル管理などを行う不動産管理業者が存在する。これらのプレイヤーは既に完成し、ストックされている不動産を用いて事業を営む業者といえる。
建設業界・不動産業界を一つのバリューチェーンと捉えると、完成品である建設物を製造する人と、販売する人が異なり、それに加えて、あとでも述べるが、典型的な受注産業というのが特徴である。受注産業の場合、産業構造上、注文をとってくる販売側の力が強くなり、逆に自動車業界等の見込み生産を行う産業の場合は、製造側の力が強くなる。

今回は建設物を製造し、供給する側である建設業界に焦点を当て、次回は販売する側である不動産業界に焦点を当てる。産業構造における力関係上、立場が弱いとされ、市場規模自体もバブル以降、縮小傾向にある建設業界だが、自動車業界との類似点、相違点にはどのようなものがあるだろうか。

【業界間の関連性】

まず、建設業界と自動車業界の関連性だが、特に商用車を製造する自動車メーカーにとっては建設業界は大口顧客になる。建設業界は「移動産業」ともいわれ、プロジェクトごとに建設対象が転々と移動するため、資材の運搬を行うトラックは必要不可欠のものであり、建設投資が多くなればなるほど、商用車の需要も大きなものになっていく。

日本では建設投資が落ち込んでるものの、経済発展著しい中国などでは建設ラッシュが続き、上海に代表される大都市では建設途中のビルがいくつも立っている。そのため、トラック等商用車の需要も旺盛であり、世界の商用車メーカーも大きな市場として狙っている。

一般的にある国が経済発展していく場合、国としての経済発展の成果が国民の所得、財布に還元されるにはタイムラグが生じる。国民の所得、財布が潤ってくると住宅や乗用車の需要が増えてくるため、国の経済発展プロセスにおいては、建設業界&商用車→不動産業界&乗用車の順で産業が勃興し、市場が大きくなることになる。

このように異なる業界ではあるものの、建設業界、不動産業界の状況は自動車業界にとって需要が今後どうなっていくかを判断する際の材料となり、その意味で注目される。

【業界特性の類似点・相違点】

まず自動車業界と比較した場合の建設業界の相違点としては内需型産業ということが挙げられる。

現在の建設投資額を見てみると 92年のピーク時から 6 割強まで減少している。一方で、自動車業界も日本国内の販売台数を見てみると 90年のピークである 777 万台から、7 割強まで落ち込んでおり、国内需要の落ち込みという面ではそれほどの差はない。

しかし自動車業界の場合は、海外に市場を求めることができたため、それが今日の好業績にもつながっている。内需の落ち込みとともに業績が悪化することになった建設業界とは対照的といえるだろう。

また、業績に影響を与えている相違点としては、上記の内需型産業ということに加えて、自動車産業が見込み生産ができる産業であるのに対し、建設業界が基本的に受注産業であるということも挙げられる。

製造するものが毎回異なり、製造する場所も毎回異なるため、規模の経済性が働かず、自動車業界と比べると生産性が低い要因となっている。実際、売上高営業利益率を見てみると、トヨタ、日産、ホンダといった自動車メーカーが7 %~ 10 %を確保できているのに比べ、鹿島、大成建設、清水建設といったゼネコン大手は 3% 以下という数字になっている。

このような生産性の低さは受注産業の構造的な特徴であり、生産管理能力次第では赤字受注に陥ってしまう危険性もはらんでいる。その対応策として住宅建設などでは建売り住宅といった方式が採用されているものの、産業構造を転換させるまでには至っていない。

一方、類似点としては、完成品を製造する上での下請け構造ということが挙げられる。日本の自動車業界における自動車メーカーの平均的な内製率は 20 %程度であるが、建設業界においても元請業者の内製率は 30 %程度であり、どちらもサプライヤー、下請け業者を上手くマネージしながら、自動車、建設物を完成させる必要があるという点ではよく似ている。

但し、その管理手法という点では、違いが見られる。自動車業界の場合、自動車メーカーがサプライヤーと共同しながら、コスト削減といった課題に取り組む姿勢を取っているに対し、建設業界の場合は、より「下請け」という感覚が強く、コスト削減にしても、単純に値下げを要求するといったケースが多いものと思われる。

また、建設物の発注者の側からすると、コスト構成が不透明という問題点も従来より存在していた。そして、そのような問題点に対応するため、最近、建設業界においては、「CM 方式」と呼ばれる発注方式が注目されている。これは発注者の補助者・代行者であるコンストラクション・マネージャーが発注者の側に立って、設計、工事発注方式、工程・品質・コストの管理等のマネジメント業務を行うものである。

このように発注者がコンストラクション・マネージャーという代理人を通じて、生産管理に関与してくるようになると、元請業者の従来のファンクションが侵食され、産業構造上の立場が更に弱まるのは間違いないだろう。

完成品とシステム・モジュールという違いはあるものの、生産管理を一括で任されているという意味では自動車業界におけるシステムサプライヤーも同じであるが、下位サプライヤーの適切な管理、発注者に対する透明性の確保等ができなければ自動車業界版コンストラクション・マネージャーの登場を許してしまうことにもなりかねない。

【自動車業界への示唆】

建設業界は受注産業という点で、自動車業界との大きな違いがあり、その構造を変えるべく、見込み生産型への移行を試みているということは紹介したが、自動車業界の場合は逆に市場の要請を受けて、今後、カスタマイズの方向に向かっていくものと思われる。先日閉幕した東京モーターショーで紹介されていたような、一人乗りの乗用車が活躍する時代ともなれば、その傾向は更に顕著になるだろう。

そうなった場合、建設業界の例を見ても分かるとおり、生産性が低下するなど供給者側の論理からするとあまりいい結果とならない。そのような事態を避けるためには、供給の仕組み、生産管理の仕組みや原価管理の仕組みを今のものからカスタマイズに対応したものに変化、進化させていく必要があるだろう。

そして、そのような供給体制というのは、より柔軟性が求められるものであることは間違いなく、サプライヤーを含めた企業集団として、柔軟性のある供給体制を構築できたグループが市場においても優位に立っていくものと思われる。

<秋山 喬>

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