AYAの徒然草(16)  『アクション重視!』

仕事で成果を出すことにも自分を輝かせることにもアクティブなワーキングウーマンのオンとオフの切り替え方や日ごろ感じていることなど素直に綴って行きます。また、コンサルティング会社や総合商社での秘書業務やアシスタント業務を経て身に付けたマナー、職場での円滑なコミュニケーション方法等もお話していくコーナーです。

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第16回 『アクション重視!』

友達から、まゆ毛を自分の顔に合った形に整えてくれる、まゆ毛専門のトリートメントサロンがあると聞きました。男性はあまりピンと来ないかもしれませんが、顔の印象って、まゆ毛の形によってだいぶ変わるんです。だから、朝、まゆ毛を描く時は、神経を使い、とても時間がかかるんです。それでも、左右の形が微妙に違っていたり、きりっとした形になっていなかったりと、出来が日によってバラバラになりやすいんです。それを、まゆ毛専門のサロンでプロに整った形にしてもらえば、それが下絵のようになり、普段はその上をなぞって描くだけで簡単に綺麗な形に仕上がります。これで、朝の慌しい出勤前の時間のうち、お化粧に費やす時間がだいぶ短縮されるんです。おそらく、5分は節約されると思います。このサロン、とても人気で 3 ヶ月先まで予約がいっぱいだとか。忙しいワーキングウーマンは、「時間短縮」のためにお金を使うことをいとわないようです。

そんな朝の支度時間に限らず、「時間」というものは大切ですよね。特に、忙しいビジネスマンは、仕事を効率化して残業時間をなるべく短くし、早く帰りたいと思っているのではないでしょうか。1日 24時間なのは決まっていますから、仕事に費やす時間が多くなれば、自分の好きなように使える自由な時間が減るのは当然のことです。みなさんは、そんな限られた時間を有効に使うために、日ごろから何か工夫をしていらっしゃいますか?
みなさんが今日着ているスーツ、そのスーツを着ていこうと決めるのに、朝、どれくらいの時間を掛けましたか?「今日は、取引先との大事な会議があるから少しでも落ちつた雰囲気を醸し出せるこのスーツにしよう」とか、「今晩はデートだから特別に気に入っているこのスーツを着ていこう」とか、その日の予定や気分で時間を掛けずに決めていると思います。何分掛かってもなかなか決められない、なんていう人はいないと思います。

では、ビジネスの上で、何かしらの決断を迫られた時はどうでしょうか。朝、スーツを選ぶ時のように短時間で決めていらっしゃいますか?

事が重大で、ましてや自分の仕事人生を左右するようなことであればあるほど、決断を下すのに時間が掛かると思います。失敗を恐れる余り、時間を掛けてゆっくり考えて結論を出したいと思うのが普通かもしれません。でも、私は最近、重大な問題だからと言って、やたら決断や行動に時間ばかり掛けるのはどうなんだろうと感じています。

と言うのも、決断や行動に時間が掛かる人というのは、自分なりの信念や判断の軸がはっきりしていないとか、普段から勘や経験だけで仕事をしている人に多いんじゃないかと思うからです。そういう人に重大な決断を迫れば、信念やデータを取るところから始めなければいけないので、時間が掛かるのは当然です。もし、信念や判断基準が明確で、普段から事実やデータの裏付けを持って仕事をしている人なら、決断や行動を迫られている事柄が、万一失敗したらどの程度の被害になりそうなのかの見極めと、その時の保険の掛け方の用意さえできれば、あとはスーツを選ぶ時のように、スピード重視で即、決断、即、行動ができるんじゃないかなぁと思うのです。

そういう人なら、失敗を恐れる必要は全然ありません。自分が決めたことを実行して成功した方が良いに決まっていますが、万が一失敗したって、その失敗から学ぶことだってたくさんあるはずです。成功も失敗もしない決断を下すまでの時間は、どちらの経験も得られず、自分の成長が止まっている状態なんです。それに、成功や失敗を繰り返すと、その経験からものごとを判断することができるようになり、次第に、決断を下すことに時間が掛からなくなってきます。だから、優柔不断で決断をいつも先延ばしにしている人と、常に素早い決断をし続けて、即、行動に移している人とでは、決断を下すことに要する時間の差がどんどん出て来ると思うのです。

また、「先延ばしにする」と言えば、「今は時間がないから、時間ができたらあれをやろう、これをやろう」と考えている人も多いと思います。例えば、「仕事が波に乗ってきて時間に余裕ができたらこれを勉強しよう」とか、「部下が増えてこの仕事を任せられるようになったら、自分は新しいビジネスを考えよう」とか、将来、余った時間ができることを前提に、やりたいことややるべきことを先延ばしにしている方っていると思います。でも、そんな余った時間は将来、本当にできるのでしょうか。

私は、今の仕事に密接に関係のある資格を取るべく勉強をしています。それに合格するには、1000時間の勉強時間が必要だと言われています。これを試験日から逆算すると、私の場合、平日は毎日 2時間、土日はどちらも 8時間の勉強時間が必要です。今の私の生活だと、到底こんな時間は捻出できません。合格はほど遠い状況です。でも、私は勉強することを先延ばしにはせず、1日 30分でも 40分でも時間を作って、地道に目標に向かうことにしています。もしかすると、1年後、2年後には、時間に余裕ができていて勉強時間をたくさん捻出できているかもしれません。でも、1年後に勉強を始めても今日から勉強を始めても、合格するために費やす時間の 1000時間は変わりません。だったら、今日、勉強した 30分間に身についた知識を、明日からの仕事の中で活かせる方が良いですよね。当然のことですが、1年後に勉強を始めたら、1年後からしか学んだことを活かすことはできません。その 1年の間に、私が学んだことを活かせるチャンスが到来したとしていても、私はそれをみすみす失うことになるのです。だから、勉強に限っては、時間がなくて中途半端でも、やらないでいるよりはやり始めた方が、学習の効果を得ることができると思っています。1年後の 30分間の勉強時間で得ることよりも、今の 30分間の勉強時間で得ることの方が、私の成長を加速させてくれると思うのです。

まゆ毛専用サロンの話のように、「時間」をお金で買うこともできます。しかし、成功や失敗を繰り返していくうちに、その経験から決断を下すまでの時間が短くなっていくことや、勉強を先延ばしにせずに少しずつでも学び、自分の成長を加速させていくことは、結果的に「時間短縮」に結びついていると思うのです。時間をお金で買うよりちょっとだけ遠回りかもしれませんが、でも、どちらも自分の成長を促す質の高い、密度の濃い時間を過ごすことができ、時間が倍増した気分になれると思うのです。

当社の社員の間では、「アクション重視!」を合言葉にしています。各人の業務の任務、会議で決まった新たな役割など、それぞれのやるべきことを「即、決断!」、「即、行動!」することを全員が重視しています。なので、当社の仕事のスピード感と言ったら、ものすごいものがあります。私も、日ごろから「アクション重視!」をモットーに、仕事のスピードだけでなく、自分の成長も加速させるように努力するようになりました。実はこのコラムの執筆もそうなんです。そうしたら、あちこちから激励のメッセージをいただくようになり、ますます仕事にやりがいと自覚を持つようになりました。

みなさんの会社・業務は、当社の仕事・私の業務に比べたらきっと、もっと専門的で複雑なんだと思います。だから、事はそんなに単純に割り切れないとおっしゃるかもしれません。でも、たまには思い切って「アクション重視!」で決断・行動してみると、今までとは違った新しい世界が広がってくるかもしれませんよ。

<佐藤 彩子>