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コラム

自動車業界内外プレーヤー(含む政府機関)による一致団結の重要性

◆ニッポンの自動車関連企業業績壊滅度ランキング全321社
◆トヨタ、1950年以来の赤字転落へ。トヨタ単独での2009年3月期決算

22日の年末会見で下方修正した業績予想を公表する。トヨタが過去に赤字を出したのは、いずれも税引き前利益ベースで、創業直後の1938年3月期と、戦後の経営危機で創業者の故・豊田喜一郎氏の社長退任につながった1950年3月期の2回だけ。連結では通期で黒字を確保するもようだが、トヨタ幹部は「まだ分からない」という。

来年1月1日付の機構改革では、3年ぶりに「財務部」を復活させ、資金機能の集約や金融に関する専門的な人材の育成を行う方針。

<週間東洋経済2008年12月20日号掲載記事>
<2008年12月18-19日号掲載記事>
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自動車業界で明るいニュースが聞かれなくなって 3 ヶ月以上が経とうとしているが、今期決算でトヨタが営業赤字との発表に、予想を遥かに上回る環境の激変を感じているのは筆者だけではないだろう。

【自動車関連企業の今期見通しは、12月 15日時点で営業利益が▲33.1 %】

週間東洋経済の 12月 20日号に「自動車全滅」という一連の特集が掲載されており、89 ページから 95 ページまでの 7 ページに亘って日本の自動車関連企業 321 社の業績骨子が掲載されている。

売上増加率 営利減少率 PBR 株価騰落率
総平均*1 ▲1.7% ▲33.1% 0.6   ▲35.4%
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自動車関連 *2 ▲1.3% ▲22.7% 0.6 ▲35.2%
産業機械 *3 ▲2.2% ▲33.2% 0.6 ▲34.5%
電機電子部品 *4   - ▲49.6% 0.6 ▲40.2%
鉄鋼・化学 *5 +5.4% ▲27.7% 0.4 ▲33.3%

*1:321 社平均
*2:157 社平均(自動車メーカー・自動車部品、自動車ディーラー)
*3:114 社平均
*4: 33 社平均(増収率に +343.9% とあったが何かの間違えと思われる)
*5: 17 社平均

注意:全ての数字 (%) は、「会社四季報」の 09年新春号 vs.08年秋号の業績見通し比較で計算されている。

特集では自動車メーカーなど業界ヒエラルキーの上部に位置する企業ほど業績悪化の影響をより早く受けているが、今後こうした動きが裾野産業まで至ると予想している。確かに、トヨタ自動車の週間東洋経済発売日の 08年 12月 15日現在の見通しベース営業利益(▲61.3%)は上記 321 社平均の▲33.1%、乃至は自動車メーカー、自動車部品、自動車ディーラーの平均営業利益減少率の▲22.7% を大幅に上回る。

【トヨタ営業赤字 1,500 億円を考慮すると】

12月 22日に発表された営業赤字 1,500 億円を元に東洋経済フォーマットに流し込むと、トヨタ自動車の当初(08年秋号会社四季報比)予想営業利益との比較では、実に▲109.7% にまで落ち込んでいる。

売上高減少率 営利減少率 PBR
12月15日時点 ▲12.5% ▲ 61.3% 0.77
12月22日時点 ▲18.2% ▲109.7% 0.76

しかも特筆すべきはその要因であり、トヨタ自動車の HP 情報によれば、上半期決算時見通しと比較して、「販売面での影響」だけで▲2,000 億円にもなり、為替を上回る最大のインパクトとなっている。

【営業利益段階での増益は 321 社中僅か 19 社】

トヨタを含むニッポンの自動車関連企業 321 社のうち、今期の営業利益が増加する見通しの企業は 19 社と 6%弱となっている。

しかも、このうち自動車本体関連である自動車メーカー、部品メーカー、自動車ディーラーは、僅か 3 社しかない。

<セグメント別営業増益企業数/合計企業数>

・鉄鋼メーカー
4社/17社(24%)
・電機 ・ 電子部品
4 社/33社(12%)
・産業機械金型
7 社/114社(6%)
・自動車メーカー、自動車部品、自動車ディーラー
3 社/157社(2%)

【超簡易分析:理論上売上高減少余地は▲22.9% まで】

321 社の総合計売上高は 282 兆円、営業利益は 11 兆円、営業利益率は 3.9%となる。282 兆円は日本の GDP 約 500 兆円の半分以上になるが、これら企業は相互に仕入・販売関係を構築していることよりダブりもあることからこうした数値になる。

この自動車関連企業合計売上高、営業利益、営業利益率をベースに、トヨタ自動車の 08.3 期(連結)の売上総利益率である 18.1% が 321 社合計の売上総利益率とイコールであるとの仮説 * に基づき計算すると、以下の通り販売管理比率は 14.2% となる。この販売管理比率 14.2% を合計売上高の 282 兆円に乗じることで算出される販売管理費を大括りに固定費と見なして、理論上「ニッポンの自動車関連企業のブレークイーブン合計売上高」を以下の通り算出した。

* 本来は、各社の損益計算書から固定費と思われる費用勘定を抽出のうえ、個別企業毎の売上総利益率を考慮のうえ算出する必要がある。

<現状>
単位百万円 売上高比
・売上高 282,793,200① 100.0%
・売上総利益*1 51,298,686 18.1%
・販売管理費 40,147,366 14.2%
・営業利益*2 11,151,320 3.9%

*1:トヨタの08.3 期売上総利益率(連結)
*2:自動車関連企業 321 社の営業利益(率)

<ブレークイーブン売上高>

単位百万円 売上高比
・売上高 218,033,557② 100.0%
・売上総利益 39,551,287 18.1%
・販売管理費 40,147,366 18.4%
・営業利益 +/-   0

ブレークイーブン売上高までの減少余地 ▲22.9% ②÷①

つまり、この試算に基づけば日本自動車産業は売上高の 22.9%減少までは耐えられるということになる。

【各種単月販売台数減少率は売上高減少余地を上回る】

一方、各国の 11月自動車販売台数を見てみると、理論上のブレークイーブンを実現するために必要とされる最低の売上高減少余地である▲22.9%を上回るスピードで減少している。

販売台数減少率
・米国 ▲37%
・西欧全体 ▲25%
-ドイツ ▲17.7%
-イタリア ▲30.3%
-英国 ▲36.8%
-フランス ▲14.0%
-スペイン ▲49.6%

出典:Automotive News Europe 2008年12月8日号

広く知られている話として、主要自動車メーカーの国内向け採算は元々厳しく、各社は外需が内需に加わることで初めて収益性を確保していることから欧米主要各国におけるこれだけの販売減は非常に厳しい。ここまでくると、今後の信用収縮改善と需要回復を祈るしかない。

【飽くまでも理論上のブレークイーブンであるもう一つのファクト】

トヨタの第二四半期決算時の見通しと今回見通しで売上高は▲6.5% の減少に留まったものの、実際には 1,500 億円の営業赤字に転落していることから、市場の急速な冷え込みは、絶対的な台当たりの粗利額や粗利率を減少させ、結果として売上総利益率を更に低下させる影響を与える。

勿論ここに更には為替の影響なども加わるわけだが、ここではこれらを一切考慮していない。

よって、売上減少が▲22.9%に至らずとも、もし今のペースでの市場冷え込みが続いたとすればそのインパクトは計り知れない。

【業界再編は必至】

トヨタ自動車の会見の一問一答が日経新聞の 12月23日号に掲載されていたが、ここにある内容は、

・世界販売・生産計画の公表はできないこと
・年間配当も今は決められないこと
・販売を上回る能力増強はしないこと
・期間従業員は減らすこと

といった、できないこと、やらないこと、増やさないことが中心となっている(電池工場の稼動を早め、技術開発を進めるというのが 2 つの前向きなコメントであった)

つまり、これからは先ずは守りの時期・仕込みの時期としている。

一方、冒頭述べた通り(また、週刊東洋経済にもあった通り)、自動車メーカーなど業界ヒエラルキーの上部に位置する企業ほど業績悪化の影響をより早く受けているが、今後こうした動きが裾野産業まで至る。

自動車メーカーは自社のみ単体で全ての自動車を組み立て販売しているわけではなく、傘下の自動車部品製造会社が製造する部品を組み立てたり、卸売りした車両を販売会社などを通じてユーザーへの小売を行なっており、こうした自らのバリューチェーン内に位置づけられる各種企業を如何にサステイナブルに維持するかが、今後の自動車メーカーそのものの生き残りに大きな影響を与えることになる。

その意味においては、以下リンク先の筆著過去コラムにある自動車バリューチェーン連結会計のコンセプトが非常に重要になってくる。

自動車業界特化型バリューチェーン会計制度に関する考察

そのうえで、重複する付加価値の低い部品を製造する仕入元(複数レイヤー先であっても)の生産設備の重複を解消したり、重なる販売エリアを差別化の乏しい商品構成で複数企業に流通を任せるケースなどをこれまで以上に厳格に特定のうえ、チェーン全体のコストダウンを実現しつつ、必要な資金提供を(場合によっては資本注入の形をも意識しながら)行いながら、最適化に結びつける必要が生じるであろう。

こうしたプロセスの中では、既に資金募集済みの投資ファンドや一定以上の手元流動性を有する会社などによる、一部企業への資金提供や業界再編支援といった動きも再燃することが予想される。

更には、来年 1月以降米国で仮に更なる公的支援の内容が固まり、これが自動車メーカーへの資本注入を経由して、傘下部品製造会社他の再編資金としての使途を持った際には、日本においても同様の公的支援が必要になる可能性も否定できないだろう。

いずれにしても、この未曾有の危機に自動車業界内外、官民を問わず協働して当たることできれば、顧客に対して常に新しい価値を提供し続ける柔軟且つ強いニッポンの自動車業界の再構築につなげることができると筆者は信じている。

歴史は平時に改革を後退させる事例を数多く証明している。
今が「新陳代謝」のチャンスでもある。

<長谷川 博史>

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