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コラム

エリア・事業領域の拡大x効率化+ユーザー負担額軽減の重要性

◆プロトコーポレーション、沖縄・宜野湾市に自社ビルを建設すると発表

来年2月完成の予定で、100%子会社のプロトデータセンターが入居する。約1200人が収容可能で、3年をめどに県内の若者ら1000人以上を雇用する予定。土地面積は4221平方m、建物は4階建てで延べ床面積は3336平方m。

今後はデータ入力、デザイン、WEBソリューション、コールセンターの4分野で事業展開する。東京~沖縄間の通信費を無料にする県の企業誘致策「情報ハイウエー」を利用し、沖縄で雑誌のレイアウトなどをデータ入力して東京に送信、印刷して全国各地に雑誌を配送する。グループ会社以外からの業務も請け負い、規模拡大で従業員数も増やす方針。売上目標は3年内に30億円。

◆トヨタ、福岡でもカーバイト展開
7月の神奈川県、北海道に続く 3 地域目。顧客が新車購入時に企業広告を車体に取り付け、一定距離走行を前提に収入を得るモデル。

<2008年9月7日号掲載記事>
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自動車情報誌「Goo」などの発刊を行なっているプロトコーポレーション(ジャスダック上場)が、沖縄に 1,200 人を収容することが可能な自社ビルを建設することで、雑誌作りやインターネットのサイト構築などを内製化するとのことである。

【プロトコーポレーションとは】

㈱プロトコーポレーション(以下、プロト)は、(主に)中古車専業店の在庫を有償で掲載する雑誌をコアに周辺事業を展開している情報関連企業である。売上は 200 億円強、営業利益で 40 億円弱(営業利益率 16 %強)を叩き出し、過去 3年増収増益を続ける無借金優良企業である。

(単位:百万円)
08.3 期 07.3 期 06.3 期
売上高 22,893 21,238 19,952
営業利益 3,771 2,988 2,010

プロトの売上の 94 %は自動車関連事業となっており、この内、72 %が情報誌関連事業(但し、この比率は徐々に低下して、周辺の IT 関連事業が拡大中)となっている。

(出典:㈱プロトコーポレーション会社説明会資料2008年7月15日)

【取り巻く諸環境】

一方、プロトが提供する価値の源泉である国内自動車流通市場は厳しい状況にある。新車、中古車販売台数は共に軒並みダウン、保有台数に至ってもマイナス基調となりつつある。現在自動車流通市場で辛うじてプラス成長を維持しているセグメントが、オートオークション市場(大規模会場への玉の集中により、中小規模会場は厳しい環境であるのは間違いないが)であり、依然大幅増加を記録しているのが中古車輸出である(特にロシア向け)。

【沖縄での新社屋・データセンター拡充の意味合い】

国内自動車流通市場が縮小する中でも、プロトコーポレーションの延べ取引社数は増加を続けている(出典:同上)。これは、同社が新たな付加価値を提供する継続的な努力を続けていることと、小口の事業者向け事業を展開していることに起因すると思われる。具体的には、少し古いが弊社寺澤の過去コラムを参照されたい。

アフターマーケットの成功者たち」『第 13回 プロトコーポレーション』

しかしマクロ環境が厳しい中では特に効率化や継続的なコスト削減が求められる。よって、今回取り上げた沖縄での新社屋建設の目的は、安価な労働力の大量確保に伴う外注費削減と、地方自治体による企業誘致優遇策を活用した通信費削減となっている。

プロトコーポレーションの単体売上原価 9,578 百万円のうち、外注費は 7,402 百万円を占める。このうち、現時点で子会社の㈱プロトデータセンターにデータエントリーやデザイン制作業務を委託している金額は不明なものの、同社の売上は 300 百万円弱であることから、大部分がグループ外への外注であると考えられる。

内製化の人件費と外注費との比較を行なった上での判断であろうことから、この外注費の幾ばくかは削減可能であるとの見立てであると思われる。仮に 10%削減可能であれば、税前利益に 740 百万円のプラス効果が見込める。

また、これに加えてプロトの試算によると、情報ハイウエーの利用で通信費は年間700~800百万円の削減になるという(出典:同記事)。

【過去2週間のプロト発表プレスリリース】

実は、プロトは過去 2 週間に当該データセンター拡充に加えて、更に取り巻く諸環境に対応する 2 つの動きを発表している。

一つ目は、08年 8月 20日に発表した、中古車売買に係る仲介サービスを提供することを目的とした、全額出資子会社「宝路多(上海)旧機動車経紀有限公司」の設立である。
これは、同社がこれまで「エリアと事業領域の拡大」として歩んできたステップを、「中国における中古車売買仲介サービス」という形で展開するものであるが、確かに伸び悩む国内市場よりも海外であり(その中でも世界第 2 位の自動車市場である中国であろうし)、中古車売買ビジネスそのものへの参画を考えるのであれば、やはり先ずは中立的なデータを取り扱うプレーヤーとしてブランドが構築されている国内よりも海外であろう。
二つ目は、08年 9月 1日に発表した、日立キャピタルとジョイントで実施する、インターネットによる中古車残価据置型クレジット「グー楽」の開始である。

これは、プロトのクルマ・ポータルサイト「Goo-net (グーネット)」内の首都圏エリア中古車物件に於いて、インターネットによる中古車の残価据置型クレジット「グー楽(グーラク)」を開始するものである(出典:プロト HP より)

日立キャピタルとの取り決めの中における収益配分比率は不明ではあるものの、残価設定ロジックはプロトが開発した内容であると思われることから、それなりの収益性を確保しているものと思われる。

【プロトの進む方向性】

即ちプロトは、足元の原価低減を実現するべく積極的な投資を行ないながら、新たな市場を求めて海外事業を展開しつつ、国内の既存ビジネスドメインでは事業の領域を雑誌ビジネスから情報関連ビジネス及び金融関連ビジネスへとシフトさせつつあると言える。

それぞれの施策は極めて合理的であるが、これ以外の方向性として何が考えられるだろうか?

一つは同業他社を如何に取り込んで競合を減らすかという観点があるが、業界に君臨するリクルートとの兼ね合いで言えば、M&A という手法は難しいであろう。

次に純粋にマーケットの範囲を広げるという観点では、自動車流通においてプラス成長を実現しているオートオークション会社と急激に台数を伸ばしている中古車輸出事業者向けの何らかのサービス展開が考えられる。

既に各種発刊している情報誌やデータなどは両事業者から注文してもらっていると思われるが、これに加えた何らかの付加価値を提供することが肝要であると思われる。

【自動車ユーザーの負担額を如何に減らすか】

こうした事業者向けビジネスの基盤は飽くまでも自動車販売市場が磐石であることが前提にある。この基盤を如何に守り育てていくかという観点では、自動車の最終ユーザーが自動車から感じる価値を如何に高めるかが大切なわけだが、これと同時に、ユーザーが負担する金額を減らすことも肝要である。

一つの例としては車を取り巻く税制を変更するという手段もありえるものの、これを横に置けば、例えば残価を据え置く形でユーザーの負担額を減らす方法については、既に残価ロジックのクレジット会社他への適用という形で参画している。

また、例えばレンタカーやカーシェアリングが急激に注目を集める理由も「ユーザーに限定的な使用期間のみのコストを負担頂く」というモデルであるが故だが、プロトのような会社が複数の比較的規模の大きい自動車ディーラーや専業店のデモカーや在庫までをも情報として適時取り込みながら、自社のウェブサイト上で検索してもらうことで「中古車レンタル乃至はカーシェアリング」を展開するといったことも可能であろう。

更に、今後確実に増税の方向となる消費税の動向次第では流通構造の変革とC2C の動きが加速する可能性もある。プロトが自らこれをリードすることは既存事業者とのつながりという観点では難しいかもしれないが、時代の変革に合わせた柔軟な対応次第では、ユーザーがそもそも取得時及び売却時に負担しているコスト自体を削減することが可能になる。
また、トヨタにおいては既に(実験的な台数ではあるが)車体に広告を掲載することでユーザーが直接広告料を得るビジネスモデルである、「カーバイト」の展開を開始している。神奈川、北海道で 65台を展開済みで、今回は福岡において 15台を販売する予定とのことだ。カーバイトはユーザーが 90日の広告期間に 600 キロの走行を行なうことで、総額 6 万円の報酬が得られるというモデルである。

現在では 90日限定となっているが、仮に単純計算すると、年間換算で 24 万円ものユーザー負担を軽減する効果となりえる可能性を秘めている。

広告掲載に伴う報酬についてトヨタでは掲載後、30日後・ 60日後に使用状況を事務局に報告・承認を受けた後、各 15,000 円(税込み)を入金、90日後に、ラッピング広告を取り外し、事務局の承認を経て、残りの 30,000 円(税込み)を入金するという仕組みとのことだが(出典:トヨタ自動車 HP)、これも例えばインターネットやカメラ付き携帯電話を活用する形での工夫次第で、プロトのように中古車専業者を中心に 3 万社弱とのネットワークを有している会社にとっては参入の余地があるかもしれない(トヨタが認知を広めた自動車の売り方として残価据え置きローンがあるが、同様にこうしたモデルに対して消費者が感じる可能性がある「いかがわしさ」をトヨタが払拭してくれれば、プロトのような自動車関連情報を取り扱う企業での追従は比較的容易であろう)。

プロトに限らず、自動車流通に価値の源泉を依存しているプレーヤーは今後更なる厳しい時代に突入しつつある。

激しい環境変化時にはじっと嵐が耐えるのを待てる体力があれば各種コスト削減のみの実施によりビバークするのも重要だが、プロト同様に昨日までの常識は明日の常識という前提に立たず、積極的に事業の範囲やエリア的な領域の拡大を試みるという姿勢との両建てが求められる。

<長谷川 博史>

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