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コラム

自動車の稼働率低下に伴い、使用時間を細分化して提供する必然性

◆ガソリン価格高騰、車の利用を手控える傾向が強まり、駐車場経営に逆風 (7/15)
◆燃料代高騰、首都高ガラガラ「環状線一周 20分切った」とタクシー運転手 (7/14)
◆日本パーキング、第 1 四半期の連結営業利益が前年同期比で 76.6 %の減益原油価格の高騰が車の使用頻度を押し下げ、駐車場稼働率が低下する状況に。(7/14)
◆ガソリン価格高騰、東京都心の首都高での渋滞は1年前より2割減(7/13)
◆ガソリン価格高騰、広島都市圏の交通事情に異変 (7/13)
◆ガソリン価格高騰、岡山県内でも交通量減少、駐車場経営に打撃 (7/13)
◆日本駐車場開発、原油高に負けるな!カーライフ応援キャンペーン(7/8)
◆ガソリン価格高騰で「車離れ」始まる。渋滞が減り、駐車場は空きが増える
最も打撃を受けているのは駐車場だが、「高級車の利用は減っていない」。(7/7)

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急激な原油高に伴うガソリン価格高騰。

世界各国(先進国)で、これまでも大きなトレンドであった大型車から小型車への需要シフトや自動車販売そのものの低調に加え、低燃費運転や車の使用手控えといった動きが目立つ。

今回のコラムでは、日本において過去 2 週間の間に報道された自動車の使用手控え関連のニュースを元に地域毎の渋滞状況の変化をまとめたうえで、構造的な自動車需要変化と対処策について考えてみたい。

【自動車使用を手控えた人】 53%

日本経済新聞社による調査では、1年前よりもマイカーに乗る回数を減らしたと答えた人数は 53 %にものぼった*。

*7月18日付日経MJ

また同様の調査によると、運転時に 69 %の人が「経済速度を心がけ、急発進、急加速をしないようにして」おり、60 %の人が「アイドリングはできる限りしないようにする」、53 %の人が「タイヤの空気圧を適正に保つ」そうだ。

いずれにしても、自動車ユーザーの 50 %超が(どの程度減らしているかは分からないが)乗る回数を減らしている。

【東京都の渋滞状況および駐車場状況】

これを東京都心で見ると、「首都高速道路の渋滞が急激に緩和」という現象として現れている。

・首都高速道路(東京)総渋滞距離 ▲22%(前年同期比)
*所要時間が40%短くなった区間もあるとのこと。
・駐車台数* ▲20 %(2007年以前比)

*新橋駅東口にある地下駐車場(158台)

首都高速道路の東京線全体の総渋滞距離は、第 4 四半期(1-3月)の平日午前 11時時点で昨年同月比 22 %減の 44 キロと、前年同期より 12 キロ短くなったとのことだ。

もちろん、この現象の原因はガソリン価格高騰だけではなく、新たに 2007年12月に開通した山手トンネル効果もあるとのことだが、確かに東京在住の筆者も渋滞緩和は実感している。

【大阪府の渋滞状況】

大阪でも同様に渋滞が減少しているとのことだ。こちらは総渋滞距離ではなく時間とのことなので単純平均は出来ないが、東京同様に 22 %減との結果が出ている。

・府内の 22 交差点で発生した渋滞の平均時間 ▲22 %*

*2008年 3~ 6月期の 1日平均渋滞時間は 113時間で、前年同期比で 33時間(約 22 %)短縮したとのこと。

上記の東京と大阪は渋滞の減少率、すなわち「車が通常走行するスピードを基準にしてしまうと道路から溢れてしまっている分」がどれだけ減ったかという観点で量られているが、以下広島と岡山では車の通行量そのものの減少率が計測されている。

【広島市の自動車通行量】

通行量が少し減るだけで、渋滞そのものは大きく緩和するという関係性(前述の通り、渋滞は車が通常のスピードで道路を走れなくなる、すなわち溢れた分であるとの考え方をすればこれが分かる)を考えれば、上記 2 割強の渋滞距離・時間の減少と比べると単純な減少率の数値は小さいものの、それなりの減少幅であろうとの推測が出来る。

・複数拠点における車両通過台数(6月) ▲3.1~ ▲5.9%(前月比)
・時間貸し駐車場* ▲10%(前年同期比)
・広島電鉄乗客数(1-5月) +3.3 %(前年同期比)

*約 410台収容の時間貸しの「石崎本店パーキング」(中区)

前月比で最も下落率が高い 2008年 6月は、大正交差点 5.9 %減、祇園新道4.6 %減、西広島バイパス 3.1 %減とのことだ。

尚、渋滞距離や時間とほぼパリティで考えられるのが時間貸し駐車場の台数減少率であろう。その意味では、東京都心である新橋の駐車場台数減少幅が▲20%に対して広島ではこれの約半分の▲10 %ということは、アクティブに自分の車庫から出て活動する自動車(以下「稼働状況」とする)の数の減少率は東京・大阪の半分の程度であるとの推測は成り立つ。

【岡山市の自動車通行量】

・複数拠点の車両通過台数 ▲3~16%(06年比)
・岡山~山陽インター間通行台数 ▲5.5 %
・岡山中心地駐車場利用者数 ▲10~20%
・岡山市の岡電バス定期券購入者数 +8%

*岡山市錦町の服部パーキングと中外パーキング

車両の量そのものの減少及び駐車場ロジックで考えれると、広島同様に、やはり東京・大阪ほどではないものの自動車の稼働状況が減少していることが分かる。

【自動車使用手控え後に予想される動き】

こうした状況を踏まえ、自動車関連事業者の視点で仮説を立ててみると、(凡そ長い目で見れば)、現在のガソリン価格高騰が需要に対して与える影響は以下のようなステップに分類されると考えられる。

1.自動車の使用手控え

2.自動車買い替え手控え(販売台数減少)

3.車そのものを手放す(保有台数激減)

ただ、過去の筆者コラムでも述べてきている通り、これまで 2.についてはガソリン価格とは別の次元で既に 90年代後半から顕在化しつつあり、これ自体は車の使用価値がその他効用の価値を減殺していることに原因があると筆者は考えている。
コントロール可能な範囲での行動の重要性・資源高を乗り越えろ

しかし、今回のようなガソリン価格高騰が起因となり仮に自動車の使用手控えが長期化すると、1.の自動車使用手控えから直接 3.の車そのものを手放すというステップにジャンプする可能性がある。

特に、東京や大阪といった代替交通手段の存在する大都市において 1.の使用手控えは顕著になることが予想される*

* 今回纏めたニュースの内容でも、大都市のほうが稼働率が下がっているとの推測となっているが、産経新聞社が FNN (フュジニュースネットワーク)と 7月 12、13 の両日に実施した合同世論調査によれば、南関東、東京都、近畿は(自動車の使用を)「以前より控えるようになった」が「変わらず使用している」を上回ったが、その他の地域は逆か拮抗(きつこう)する結果となっているとのことだ。

【自動車使用手控え→車を手放すへのジャンプの懸念】

GMO リサーチが 7月 19~ 23日にインターネット上で物価上昇の対策や環境意識を調査した(有効回答数は 2 万 3544)結果によると、今後もガソリン価格が高騰した場合、46 %の人は「車を手放す」と回答したとのことだ。車を手放すガソリンの価格は、「200 円」が 12 %、「250 円」が 18 %、「300 円」が 28 %とのことである。

ガソリン価格そのものは需給(スペキュレーションによる投機も含む)により決定されるため、(税金の額以外は)操作出来ない前提であるが、これ以外に業界としては何が出来るだろうか。

ひとつの消極的な考え方は、人間は価格に対して自然と抗体が出来るはずであるとの考えに基づき、急激な変化で無い限りは 200 円になろうが 300 円になろうが、何れは慣れてしまうであろう、よって今の急激な変化の時期はとにかく我慢が大切、というものである。

逆に積極的な考え方としては、自動車の使用期間を細かく分解したうえで、本当に使用するタイミングのみに課金をするというやり方が考えられる。

現状、車を所有はしていても稼動時間そのものが減っているのであれば、ユーザーが稼動させたい時のみ最適な形で車を提供する、という考え方に基づく事業展開である。

例えとしては、レンタカーやカーシェアリングが挙げられる。

また、ここまで一気に行かなくとも残価設定型ローンやリースもある程度までは同様の効果をもたらす。即ち、「TOYOTA3年ぶんください」というものだ。

ちなみにトヨタは当該ローンの本格導入からわずか 1年半だが、当初、普及の目安としていた新車販売台数に占める同ローン比率 10 %の計画を前倒しで達成したとのことである。

急激に車の保有形態が変化する中で、残存価格を算出のうえ仮に保証する場合のリスクボラティリティは急激に高まっていることから簡単な話ではないが、使用手控えから車そのものを手放すステップへのジャンプが顕在化した際のひとつの打ち手としてはこうした車の使用方法そのものの変化に対応させた売り方も覚悟せざるを得ないだろう。

<長谷川 博史>

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