交換を発生させる経済活動を通じた、環境問題への取組みの重要性

◆「カーボンオフセット」事業の大手、英カーボンニュートラルが日本進出
廃棄物リサイクルの電子商取引を手がけるリサイクルワンと提携。

<2008年1月04日号掲載記事>

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二酸化炭素は赤外線領域に強い吸収帯を持つため、地上からの熱が宇宙へと拡散することを防ぐ、いわゆる温室効果ガスとしてはたらく。二酸化炭素の温室効果はメタンやフロンにくらべ小さいものの、排出量が莫大であることから、地球温暖化の最大の原因と言われている。(出典:Wikipedia より)

筆者は、いわゆる文系出身者であることから、本コラムで環境問題そのものを科学的な側面から分析することは行わない。

そもそも地球は温暖化していない(マイノリティな声ではあるが)という意見が存在することも認識している。

しかし、環境問題に取り組んでいくことに世論が大きな関心を持っていることに異論を挟む余地は無く、筆者としても少しでも出来ることから環境に良いことを始めるべきであるという意見を持っている。

【自然界でのカーボンサイクルはニュートラル】

以下、「筆者の理解を整理すること」も目的に加えながらロジックで考えると、森林を増やせば光合成によって、より多くの二酸化炭素が吸収され、酸素が排出される、というのは小学生の頃に学んだとおりである。

一方、例えば森林が誕生してから枯れるまでのサイクルで考えると、成長期には二酸化炭素が吸収されるものの、枯れた後に樹木は微生物に分解され、空気中の酸素と結合して二酸化炭素へと戻る→即ちカーボンサイクルは森林の一生で考えれば、プラスマイナスゼロのカーボンニュートラルとなる、というのも理解できる。

つまり、森林量の変化により環境中の二酸化炭素の量が変化するとすれば、これは、森林が光合成を通じて二酸化炭素をストックするスピードと、死にゆくことにより環境中へ流れ出す(即ちフローへと転じる)スピードとのギャップに起因する。

但し、化石燃料の利用はこれとは異なる。

【化石燃料の問題のおさらい】

筆者の理解では、化石燃料の問題点は過去何億年もの間に生息していた動植物が体内に蓄積した炭素を、18~ 19 世紀の産業革命後の 200年強といった極めて短い期間で燃やし、二酸化炭素として排出していることにある。

即ち、地中奥深くに眠っていた過去の炭素ストック数億年分を一気にフローに変えている状態により、カーボンニュートラルが著しく崩れつつあるということである。

【経済活動の抑制か代替エネルギーの開発】

この急激な変化を解決するには、そもそも経済活動を抑制するか、化石燃料に変わる何らかの代替燃料を開発することが手段として考えられる。

しかし人類の発展の基本である、より良い生活をしたいという欲求をどうやって抑え込むか、消費可能なエネルギーと比較してそもそも人口が多すぎる、といった結論に達した場合、どうやってこうした根本的な問題を解決するかは難しい問題である。

また、もうひとつの解決策である代替燃料の開発は、現在世界中の科学者が取り組んでいる課題ではあるものの、バイオ燃料や水素といった手法にも限界が存在している(どうしても一部、化石燃料を用いる形での燃焼や水の電気分解が行われるといった限界である)。

【化石燃料そのものの枯渇】

更に、より喫緊な課題としては化石燃料そのものが有限な資源だということが挙げられる。これに加え、中国やその他開発途上国における資源消費量の増加により、昨今の原油に象徴されるエネルギー価格の高騰は著しい。

過去地球が蓄積してきた燃料を一気に燃やして活用することが温暖化の原因であるとすれば、化石燃料の枯渇に伴い、燃やすものが無くなれば、少なくともこの問題については解決するはずだ。

勿論、LOHAS という考え方ではこれでも良いのかもしれない。また、これまでの成長そのものが間違っていたのかもしれない。

しかし、人間が幸せになりたいという欲求(幸せの定義は別にして)の延長線上に、今までのインフラをある程度まで活用する生活があるとしたら、この欲求を止めることは難しい。

【企業家として出来ること=交換を発生させ、経済活動化すること】

さて、こうした地球規模での問題に対処するために企業家が出来ることは何だろうか。
企業家としての活動の基本は、資本主義というプラットフォームに乗っかった「貨幣」に「価値」を媒介させることで、世の中の多くの人間が欲するサービスやモノを提供できる人に、当該「貨幣」を集中させることにある、と考える。

これは、交換を発生させることを通じた取引の実現、これに伴う利潤を通じた所得の移転によって為される。

即ち、商取引である。

交換を通じた商取引がどのように「より良い世の中を創る原動力になり得るか」、については以下筆者過去コラムを参照戴きたい。

https://www.sc-abeam.com/sc/library_s/column/3928.html
https://www.sc-abeam.com/sc/library_s/column/2977.html

こうした観点から、本日取り上げた「カーボンオフセット事業」、即ち企業活動を通じて得られる利潤の一部を二酸化炭素を吸収する活動に充てることで、同企業活動を通じて必然的に発生してしまう二酸化炭素と一部オフセット(相殺)させる活動は、地道ではあるものの、ビジネスとして取り組む意義がある一つの形であろう。

以下は、リサイクルワンのホームページから転載した内容である。

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カーボンニュートラル社は1997年よりカーボンオフセット事業に着手し、これまでに200を超える企業と50万人を超える個人にカーボンオフセットサービスを提供してきました。近年の地球温暖化問題に対する関心の高まりと2008年からの京都議定書の第一約束期間の開始に伴い、カーボンオフセット事業を取り巻く市場環境は大きく変化しています。カーボンニュートラル社は、これまでは欧米を中心に事業を展開してきましたが、今後の日本を含めたアジア圏にける需要の高まりを見込み、今回リサイクルワンと提携し日本において本格的に事業進出することとなりました。(出典:株式会社リサイクルワンのHP)
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もちろん、上述の通り過去数億年分の蓄積炭素を燃やすことを、数年なり自分たちが生きている時代でオフセットすることは難しいと思われるし、最終的には森林はカーボンニュートラルであるといった反論はあるだろう。

しかし冒頭筆者が述べた通り、環境問題に取り組んでいくことに世論が大きな関心を持っていることに異論を挟む余地は無いはずだ。

【交換を発生させるための、文字通り先行投資】

最終的には、経済合理性に基づき交換を発生させることにつなげる必要はあるが、そもそもこうした交換を発生させるための布石として企業家が実施出来るのが「投資」である。

例えば、国際会計事務所の米 Ernst & Young 社と、米 Dow Jones 社傘下のベンチャーキャピタル関連調査会社 VentureOne 社の調べによると、クリーンテクノロジーへの全世界的な投資は大幅に増加しており、特に太陽エネルギーや代替燃料への投資が急増しているとのことだ。

http://wiredvision.jp/blog/epicenter/200710/20071002085903.html

世の中に存在する価値を如何に結集して、社会全体として必要な方向性に向けるかという観点で、貨幣を介在させる形での「投資」は、重要である。

今後の技術革新の方向性は正解の無い世界へと突入しつつあるが、企業家としては、こうした投資を幅広く実施しながら、必要な投下先と金額をしっかり見定めて、経済合理性を伴う交換へと繋げていく必要がある。

貨幣も利潤も、全ては世の中を良くするための手段でしかないのだから。

<長谷川 博史>