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コラム

米国最新事情・郊外住宅地でのカーシェアリング事業の将来性

◆米国でビジネスと IT のコラボレーションを模索し、新しいビジネスモデルや技術を中心に紹介している、Business 2.0 誌上に米カーシェアリング事業者の ZIPCAR が”Next Disruptor”(次なる既存市場を脅かす事業者)として登場
<Business 2.0誌 September, 2007記事 >

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カーシェアリングとは、1台の自動車を複数の会員が共同で利用する自動車の新しい利用形態であり、利用者は自ら自動車を所有せず、管理団体の会員となり、必要な時にその団体の自動車を借りるという、会員制レンタカーのようなものである(カーシェアリング普及推進協議会 HP より)。

最近では都会のマンションの下などに見かけることが多い。

米国最大手のカーシェアリング事業者の ZIPCAR (http://www.zipcar.com)は、全米 23 の都市で 3,000台を超える台数を運営しており、CEO のスコット・グリフィス氏は 10 万人の会員のうち 40 %が車を売却した乃至はそもそも最初から保有しておらず、結果、車の保有に伴うコストを最小化できているとしている。

【ウェブアプリケーションの有効活用(Google Mapなど)】

ZIPCAR.com のホームページで車両の所在地を検索しようとすると、Google MapsAPI (グーグルの地図を無料で自分のサイトに掲載できる仕組み)を活用して、個別の車の所在地が具体的に地図上で特定されている。

筆者はサンフランシスコに住んでいたことがあるのだが、地図と衛星写真を組み合わせた形でサンフランシスコにある車両を特定する作業をウェブ上で行ってみたところ、まず車の所在地を間違えることは無いレベルになっている。

Google Maps API は無料で開放されていることから、HP への組み込み作業に若干のコストは掛かっていると想像されるものの、システム投資は最小限と見てよいだろう。

更に、今年の 9月からは車両の予約を携帯電話のアプリケーションを通じても行うことが出来るようになったとのことだ。

【高稼働率と低コストオペレーション】

記事によると、ZIPCAR の年会費は 50 ドルで、利用料金は 1時間 8~ 15 ドル。会員は現在 10 万人で、急増中とのことだ。

上述のカーシェアリング普及推進協議会の HP では、2003年 11月時点の ZIPCAR会員数は 10,500 人で、運営車両数は 272台とあるため、過去 4年弱で会員数が約 10 倍、運営台数も 10 倍強となっていると思われる。

今後は、更に 11 の都市への事業展開を計画しており、今年の売上予想は 60 百万ドル(約 69 億円)とのことである。

記事から想定される、売上60百万ドルの内訳は以下の通りである。

年会費売上 5百万ドル
(50 ドルx 10 万人)
利用料金売上 55百万ドル
台数 3,000 台
台当たり売上 18,333 ドル(約 2.1百万円)
料金 /時間 10 ドル(8~ 15 とのことなので、10と仮定)
年間稼働時間 1,833 時間/年
稼働時間/日 5 時間/日(365日計算)

筆者がここで注目するのは、台当たりの年間売上高である。

日本におけるレンタカー事業の実績を見ると、社団法人全国レンタカー協会監修の 2005 自動車連他リース年鑑に掲載されている福岡県の乗用車実績(全ての県が網羅されているわけではないため、統計が存在する県の中で一番台数が多く、比較的大都市である福岡をサンプルとして抽出したため、全国平均とは異なる)は以下の通りである。

許可台数 9,487台
延貸渡回数 57万回
延貸渡日車数 1.97百万
台当たり延貸渡回数 60回/年
台当たり延貸渡日数 207日/年
売上(収入) 105億円/年
台当たり収入 1.1百万円/年

すなわち、台当たり売上は ZIPCAR の 2.1 百万円 /年に対して日本(福岡)のレンタカーの場合、1.1 百万円 /年と半分であることが分かる。

これは、ZIPCAR が現時点では人口密集地域に特化した展開をしていることと、現場での管理が無人であることによる 1日 24時間の稼動体制に起因すると考えられ、結果車両の稼働率が上がり台当たりの収益を高めることが可能になっているものと想像される(後者については、記事内にも記載がある)。

更に、ZIPCAR ビジネスモデルの特徴は従業員一人当たりの生産性の高さにある。

ZIPCAR では、3,000台を 110 人の従業員で運営しているとのことだ。

従業員一人当たり約 27台となるが、因みに AVIS レンタカー(米国*)ではこの数値が 15台となっているとのことである。

*日本のレンタカー会社との単純比較をすることはしないが、直営・フランチャイズにおける総人員数で保有車両数を割れば、総じて同じレベルになると想像される。

結果、台数の増加に伴う管理人員数の増加率が既存事業者(レンタカー事業者)よりも低いことから、前述の高稼働率に加えて低コストオペレーションに伴う高い収益性の実現が可能となる。

これを支えているのが、前述のウェブアプリケーションや無線での車両故障診断などのテレマティクス技術である。

【郊外住宅地でのカーシェアリング】

今後、ZIPCAR は郊外住宅地へと事業展開を進めていくとのことだ。具体的な方策については記事には明記されていないものの、同社社長は郊外展開の競合相手を自動車ディーラーと想定している。

自動車消費大国の米国でカーシェアリング事業者が移動手段の提供者という観点で自動車ディーラーに取って代わるという展開は考えにくいものの、確かに1台のカーシェアリングの車が(ディーラーから見たら)奪う顧客の数は 1 名ではなく複数人数であるということを考えると *、ディーラーの側から見たらそれなりの脅威として考えるべきではあるだろう。

* 逆にユーザーから見たときには、環境や車そのものを快適に使用することを妨げる渋滞などの観点から、複数人が 1台をシェアすることが効果的であると考えられる。

しかし、人口密度の低い米国の広大な住宅地に点在する形でカーシェアリングの車両を配置しようとすれば、それなりの台数が必要となる。しかも、既に車両を保有している人たちを代替品へとスイッチさせる必要が生じるわけで、稼働率という観点で直近の事業性には疑問が残る。

筆者は日本における事業者間のカーシェアリングの可能性について過去コラムで取り上げたことがあるが、同様に現状の延長線を超えた工夫が必要となるであろう。

「駐車違反取締り強化で法人カーシェアリング」

但し、例えばエリア制に基づく、当該エリア内での場所指定の無い保管をベースとして考えれば、無料での駐車可能なスペースが多く、車庫証明を初めとした規制が日本と比べて緩い米国であれば、IT 技術の駆使方法次第であると考える。

振り返って国内を見れば、日本の郊外は米国に比べれば人口密集度合いは高い。更に、駐車可能スペースの余裕もそれなりにあること、ターミナルビルとショッピングセンターがハブになる生活であると想像され、配車パターンも限定できることから、郊外型のカーシェアリングの可能性はあるかもしれない。

日本ではまだ始まったばかりのカーシェアリング事業であるが、インフラの整備と規制緩和次第では、日本国内でも大都市のみならず郊外住宅地においてこそ高稼働率・低コストオペレーションが特徴のカーシェアリング事業の展開が期待できるかもしれない。

<長谷川 博史>

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