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コラム

国内ディーラーの事業基盤に異変!地道な努力に加え、抜本的対策が必要

◆日整連 整備需要等の動向調査で’07.1-6月期は総売上高 DI が▲16.4 %と発表。同指数がプラス水準を割るのは’04.1-6 以来約 3年ぶり。
特に、「ディーラー指定工場の整備売上高」に顕著な変化。

<2007年8月20日号日刊自動車新聞掲載記事>
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新型モデルの有無による台数変動とインセンティブ額次第の「新車販売」を「プラスアルファ」の収益と考え、「サービス部品」や「保険」、(時として中古車も含む)の収益で、人件費や施設関連費を中心とした所謂固定費をどれだけカバー出来ているか?という指数である「固定費カバー率」が、以前にも増して大切な KPI となりつつある。

嘗ては「経営の安定性を図る指標」として活用されていたものが、昨今は「生き残れる事業基盤が存在するか」という観点で見られている。

こうした理由から、これまでコンサルティングを提供してきたディーラー経営者には「如何に固定費カバー率を上げるか」を、入庫促進や単価アップという収益増の方向と、新規出店や既存店舗における賃借料の削減や最適人員数への調整といった費用抑制の面から奨めてきた。

しかし、日整連が今年 7月に実施した調査によると、これまでほぼ一貫して増加してきたディーラーにとっての整備売上高および入庫台数が、今年の 1-6月を境に横ばいに転じている。

筆者はこの動きを一時の特別な動きではなく、ディーラー事業を行ううえでの大きな転換期を迎えつつあることの現われであると考える。

【日整連による調査結果詳細】

日整連では、半年毎に加盟整備事業者(今回は合計 726 事業場、内、専業認証工場 165、専業指定工場 292、ディーラー指定工場 273)を対象として、直近半年間の総整備売上高及び総入庫台数の実績がプラス成長かマイナス成長かを調査している。

以下が過去 3年の総整備売上高 DI 増減推移(「プラス成長」と回答した事業者の割合から、「マイナス成長」と回答した事業者の割合を差し引いた数値)である。

合計
——
’04.7. ▲6.5%
’05.1. +9.6%
’05.7. +8.5%
’06.1. +2.2%
’06.7. +9.6%
’07.1. +2.2%
’07.7. ▲16.4%

(出典:第 23 回「整備需要等の動向調査」、日整連・平成19年7月)

ご覧の通り、今年の 1-6月の売上高 DI のマイナス幅は激しく、実に 3年ぶりのマイナスとなっている。

この原因はディーラー整備工場の売上高成長の陰りにある。

以下は’03年 7月から 4年間のディーラー整備工場に限定した総売上高 DI の推移である。

合計
’03.7. +15.0%
’04.1. +10.8%
’04.7. +18.0%
’05.1. +45.1%
’05.7. +36.3%
’06.1. +25.8%
’06.7. +35.5%
’07.1. +26.2%
’07.7. +- 0%

(出典:第 23 回「整備需要等の動向調査」、日整連・平成19年7月)

ここ 4年間で売上高 DI は常にプラスであったものの、今年の上半期は初めてプラスマイナスゼロ%となっている。

従来はマイナス成長を続けてきた一般専業事業者の売上をディーラー整備工場が奪取してきたという図式があったが、この構図も崩れつつある。

【ストックとフローの関係(ストックの伸び鈍化)】

保有台数をストックとして考え、新車販売台数をフローとして考えると、ストックとフローの関係は以下の式で表される。

前年末保有台数+今年新車登録台数-廃車台数-中古車輸出台数=今年末保有台数。

これまで、自動車保有台数は一貫して増加を続けてきた。

自動車保有台数が増加している間は、一定レベルのサービス入庫台数・整備売上が期待できると考えられる。

しかし、年末時点での前年比保有増加台数は’05年の異常値(リサイクル法導入に伴うものと思われる)を除き、今世紀に入って一貫して減少している。

保有台数(千台)前年比増加台数(千台)
00 72,649 +926
01 73,408 +759
02 73,989 +582
03 74,214 +225
04 74,656 +441
05 75,686    +1,031
06 75,859 +173
07/1-5 75,726     -133*

(出典:国土交通省調べ。被牽引車、二輪車を除く)

* 例年 3月に(新規登録台数が多いものの)廃車が集中することから、上半期は前年末保有台数を下回る傾向にあるが、事実として月次で見ると台数は減少している。

つまり、ストックの積上げスピードは年々下がっている。

これは主に、

1.新車登録台数の減少
2.輸出台数の急増

の 2 つの要因によるものである。

因みに、それぞれの台数推移は以下の通り。

・四輪新車登録台数

00 5,963,042
01 5,906,471
02 5,792,093
03 5,828,178
04 5,853,382
05 5,852,067
06 5,739,506
07/1-5 2,380,335

(出典:日本の自動車工業 2007 ・社団法人日本自動車工業会、及び自販連)

・中古車輸出台数

00 482,975
01 512,856
02 606,559
03 712,968
04 837,782
05 940,552
06 1,136,508
07/1-5 494,953

(出典:中古車輸出協会)

新たにストックに注入される新車登録台数が減少する一方、海外へ中古として保有台数から直接流出する輸出車が急激に伸びているのがわかる。

【ディーラーの整備売上・入庫台数が伸び悩む理由の仮説】

但し、これだけでは今年の上半期におけるディーラー整備工場での売上高及び入庫台数の伸び停滞は説明できない。

筆者は、これが以下 2 つの要因によるものではないか?との仮説を立てている。

1.フロー(新車販売)の急激な減少が、特にディーラーへ大きな要因を与えている。
一般的に、高年式車で特に保証期間内の車はディーラーで整備を受け、低年式車は一般整備工場に流れる傾向があるが、昨今の急激な販売台数減少により、特にディーラー入庫対象の高年式車の玉が市場に出回っていない。

2.中古車輸出車両の構成要素変化(高年式車の海外への流出)
既述の通り、中古車輸出台数は右肩上がりで増加しているが、その構成要素が変化していると言われる。
昔は、行き場の無い業界用語で言う「ボロ車」が輸出に流れていくという構図であったが、昨今は国内市場で自社登録などに回った新古車が新車以上の値段でオートオークションなどを通じて競り落とされているという現象があると耳にする。。
つまり新しい車が売れないだけでなく、貴重な売れた分も海外に流出しているので結果としてディーラーには入庫しない、という仮説である。

【入庫台数が減少する環境下での生き残り施策】

ディーラーが生き残るためには固定費カバー率をあげていく必要がある。具体的には、

・顧客との更なる関係性の維持による、低年式車入庫促進
より長くお客様と付き合う仕組みと努力により、買い替えは期待せずともサービス入庫だけは死守するやり方。

・メカニックの技術高度化による、提案営業による単価増
1 人当たりどれだけプラスアルファの修理提案が出来るか、というやり方。

・拠点数、サービスベイ数の削減
固定費を削減するために、リストラクチャリングを実施するやり方。

といったオーソドックスな手法(中古への注力、収入手数料の確保なども含む)が考えられる。

当然ディーラーレベルでこれらを更に進めるのは地道な王道である。

しかし、そもそもの入庫を期待する元のストックである保有台数の伸びが更に鈍化し、高年式車が減少してしまうとディーラーの事業基盤が毀損してしまう。

これをそのまま放置すると、インセンティブやリストラクチャリングコストとして、その後多大な影響を自動車メーカーに与えかねない。

事業基盤の揺らぎに対しては、メーカーレベルでの対応も含めた徹底的な対処が必要であり、この対応が遅れると取り返しのつかない出血をディーラーのみならずそこに関連する全てのプレーヤーが強いられることになってしまう。

そこには単なる気合や根性に加え、具体的な仕組みが求められるだろう。

<長谷川 博史>

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