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コラム

自社バーチャルネットワーク形成と新たなる収益モデルの構築

◆米アラバマの自動車ディーラー、「猟犬ソフト」で、顧客を「狩る」

米アラバマ州の Gary Linam 氏(スズキディーラー及び中古車ディーラーを経営)は、自らが開発した顧客紹介販売ソフトウェアである「猟犬ソフト(Bird Dog Software)」 を 125 拠点のディーラー向けに外販。自社ディーラーは全米スズキディーラーのトップ 3 の中の 2 店を占める。

<2007年3月12日号Automotive News 掲載記事>

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「顧客を狩る」とはお客様に対して失礼な話だが、米 Automotive News 誌の英語記事の雰囲気を維持するために、敢えてこう訳させてもらう。

【記事概要】

全米トップ 3 スズキディーラーのうち 2 店舗を運営する Gary Linam 氏率いるディーラーでは、「猟犬クラブ(Bird Dog Club)」という名前の顧客紹介会員を形成。

現在 1 万人の会員を同社が開発した「猟犬ソフト」で管理している。

同ソフトの機能は、紹介会員 1 名当たり 100~ 250 ドル(1~ 2.5 万円)程度の紹介料の記録や会員とのコミュニケーションツール、ウェブ上での猟犬トレーニング(紹介者を猟犬・“Bird Dog”と名づけ、友人や親類、会社の同僚などの中での潜在顧客の見つけ方を教えたり、決められた営業担当者を経由した販売を指示したりする)などにより構成されている。

同社では売上が一番大きいスズキの店舗における月間広告宣伝費の 5% に相当する 5,000 ドル(50 万円)をクラブ運営に費やす結果、同店舗の売上の約20 % をこのクラブ経由で獲得しているとのこと。

また、同社はこのソフトを子会社を通じて外販、クラブの運営は JMsolutions(JM Family Enterprises Inc.,の一部門)に委託しており、JM 社はこの子会社の株式譲受を交渉している途中。

ソフトの使用料は初期費用 4,995 ドル(50 万円)、月額 49 ドル(5 千円)、プラス台当たり 10 ドル(千円)の重量課金。

因みに同ソフトを 2006年 12月から 16 店舗で導入開始したコロラドのディーラーは、既に 2,500 の猟犬クラブメンバーを集め、200 以上の潜在顧客を同社経営のフォードディーラーに紹介、実際に 48台の新車販売に繋げたとのこと。

【綺麗ごとではない、集客装置】

昨今、ディーラーマネジメントシステムや既存顧客の管理ソフトを、メーカー単位で傘下のディーラーに導入させるという記事が業界紙を賑わせている。

曰く、既納客の網羅と顧客リレーションを維持することにより最適なタイミングでの買換え提案を行うといった論調のものが多い。

確かにメーカー単位でこうしたシステムを導入してもらえれば、ディーラーとしても得られるメリットは大きいが、今回の記事で紹介したようなソフトウェア及び仕組みは「より直接的」であり、日本のディーラーでも転用が可能である。

【自社ネットワーク形成のススメ】

ディーラー契約の中には、再販の仕組みを禁じたりテリトリーの制限が明記されていたりするものが多いことから、こうした集客手法がバーチャルな販売代理店と見なされないよう注意が必要であるが、個人顧客への紹介キャンペーンはどのディーラーも大なり小なり行っており、これをウェブ上に移行する程度であれば問題は無いはずである。

これが実現できれば、特に新車販売では打ち手が限定的と言われるディーラーにとって、所謂法人内個人を味方につけたり、紹介階層別に手数料格差を付けるといった工夫も併せ、結果として独自のネットワークを構築することにも繋げられるだろう。

【自らの強みの外販】

更にこうした集客装置を構築のうえ自らの業績を改善した実績を示せれば、記事同様にこの仕組みを外販していくことが可能になる。

例えば、上記 Gary Linam 氏の経営する子会社の売上を試算すると、以下の通り年間 30 百万円となる。

・初期費用 :4,995ドルx125拠点÷5(※1)=      124.9千ドル
・月会費  :49ドルx12ヶ月x125拠点=         73.5千ドル
・重量課金 :10ドルx750台(※2)/ 1社x10%x125拠点= 93.8千ドル
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・合計   :                     292.2千ドル

※1:過去5年で125社が同ソフトを導入したと仮定した場合の年間売上
※2:米国における1社当たり平均販売台数/年の仮定・1社平均拠点数考慮前

ソフトウェア開発にどの程度の投資が嵩んだかは記事から推測不可能だが、大凡そこまでの額ではないと仮定すると、上記はそのまま税引前の利益に加算されると考えても良い。
現時点でのこの会社のソフトウェア売上はたいした金額ではないが、課金レベルの引き上げ・販売先の拡大・適切なパートナーとの共同開発などを実施することができれば、可能性は広がるだろう。

また、事実としてクラブ運営を行う企業が同社株式の譲り受けを希望していることからも、こうしたモデルそのものが有望と見なされれば M&A における売り物にもなりえる。

今回紹介した記事は、自動車ディーラーの新車販売のような事業モデルが規定されつくした感があるビジネスでも、やり方次第でモデルの改善余地・更なる収益獲得のチャンスは埋もれていることを示唆している。

<長谷川 博史>

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