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コラム

タイヤメーカー系:収益源泉(ユーザー)への効果的な価値還元の模索

◆住友ゴム工業が、国内の市販タイヤの販売網を拡充

<日刊自動車新聞2006年08月23日号掲載記事>

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【はじめに】

住友ゴム工業が、国内の市販タイヤの販売網を拡充するとの記事が、日刊自動車新聞の 8月 23日号に掲載された。

これによると、同社は 07年度までに現在販売代理店として連携する専業タイヤショップの空白地を埋める形で出店攻勢をかけ、07年度までに乗用車用タイヤを中心に扱う「タイヤセレクト」を現状の 8 割増の 250 店舗、トラック・バス用をメインとする「タイヤランド」を 5 割憎の 150 店舗レベルに拡大することで、「全国各地を密にカバーする営業体制を構築する」とのことだ。

【国内タイヤ流通の概況】

日本には世界の主力タイヤメーカーのうち 4 つのタイヤメーカーが存在する。ブリヂストン、住友ゴム、横浜ゴム、東洋ゴムの合計売上高は 4 兆円弱。出荷ベースで見ると、日本で生産されるタイヤのうち半分は国内向け、残りの半分は海外向けに輸出される。
国内向けの出荷は、大きく自動車メーカーの新車工場へ納入される B2B と、ここで取り上げるタイヤメーカー系列販売網や、オートバックスなどの用品店、自動車ディーラーや SS (ガソリンスタンド)向けの B2C に大別され、B2B/B2Cの比率は、タイヤ本数ベース・金額ベースともに、ざっくり 50 %ずつとなっている。

国内タイヤ流通を担う主要プレーヤーの概況(拠点数、並びに拠点数当りの販売本数)は以下の通りとなっている(※1)。

<販売拠点:拠点数/販売本数/拠点当り本数>

・主要カー用品店:1200(※2)/960万本/8000本
・タイヤメーカー系FC:2000/680万本/3400本
・自動車ディーラー:1万6000/340万本/212本
・SS:4万5000/340万本/76本

主要カー用品店が拠点当りの販売本数で 1 位で、その後ろをタイヤメーカー系 FC チェーンが追随しており、その他のルートは本数はあっても 1 拠点当りの本数は少ないことが分かる。

※1 国内向け出荷本数のうち、ライン装着されない B2C の数量を 3400 万本として、ルート毎の比率を推定のうえ試算した。なお、計算しやすい形で数字を丸めている。

※2 オートバックスが 470 店舗前後、イエローハットが 500 店舗弱、トヨタ自動車(タクティー)が展開するジェームスが 70 店舗強、オートウェーブなどでも 20 店舗無い。一説では、その他小規模のカー用品店を合わせると 3000拠点弱になるとも言う。

【減少の自動車需要、増加のタイヤメーカー系列ショップ】

ご存知の通り、国内の自動車登録台数(含、軽)は下表(1)の通り過去 5年で減少している。これに伴い主要用品店(2)、ディーラー(4)、SS (5)ともに拠点数の削減に努めているのが見て取れるが、その中でタイヤメーカー系のチェーン店(3)だけが、拠点数を伸ばしている。

(1)自動車登録台数(登録車+軽自動車。自販連)
2001年:590万6471台 2005年:585万1921台
2001年 vs. 2005年 -0.9%

(2)主要用品店拠点数(矢野経済研究所)
2001年:1230店 2005年:1157店
2001年 vs. 2005年 -5.9%

(3)タイヤメーカー系FC店拠点数(同上)
2001年:2156店 2005年: 2411店
2001年 vs. 2005年 +11.8%

(4)ディーラー拠点数(自販連)
2001年:1万7018店 2005年:1万6605店
2001年 vs. 2005年 -2.4%

(5)SS拠点数(全国石油協会)
2001年:5万3704店 2005年:4万5000店
2001年 vs. 2005年 -16.2%

この理由はどこにあるのだろうか?

【タイヤメーカー、売上半分の国内で利益7割】

実は、タイヤメーカーの収益構造を見てみると、自動車メーカーとは異なる事情が浮かび上がってくる。

完成車メーカーは海外向けの輸出と海外生産車両の売上が高い水準にあり、同時に海外向けビジネスで利益を上げているという構造だが、タイヤメーカーの場合、海外向け事業(含む輸出)は売上高ベースで全体の約半分の 51 %を占めるものの、同営業利益では 28 %を占めるにすぎない。

つまり、タイヤメーカーは売上の半分の日本国内向けビジネスで、利益の 72%を稼ぎ出している。

・合計売上高/日本:2兆2760億9700万円(49%)
・合計売上高/海外:2兆3290億5600万円(51%)
・合計営業利益/日本:2198億1800万円(72%)
・合計営業利益/海外:856億5300万円(28%)

連結消去を除く。ただし、別項目で海外売上高は 2 兆 4132 億 4,500 万円となっている。

前述の通り、国内向けタイヤ販売は自動車メーカー向け B2B 納入と、流通プレーヤーを経てユーザー向けに販売される B2C とに大別されるが、タイヤメーカーの収益の源泉は、継続的なコスト低減を望む自動車メーカー向けビジネスにはなく、後者の B2C ビジネスにあると考えられている。

すなわち、タイヤメーカーは、ユーザー向けに超過収益を獲得出来ているがゆえに、この収益を背景に自らの販売チャネルへの継続的投資を実現出来ていると想像される。これにより、自らの影響下でのタイヤ販売本数を伸ばしていこうということだ。

【ユーザー視点から見たタイヤ購入のKBF】

一方、ユーザーの視点から見たタイヤ購入の KBF (Key Buying Factor)はどこにあるだろうか ?

およそ、複数の調査会社などでこうした調査は実施しているだろうが、当社では残念ながらこうしたアンケートは実施していない。ただし、一ユーザーとして合理的な想像をするに、車検時にタイヤの消耗を指摘されて、「じゃぁ交換しようか」というのが大きな購買要因ではないかと考える。(ちなみに筆者自身はタイヤにはそれなりにこだわりを持っており、一般的なユーザー層とは異なる)。

その意味では、単純な全国エリアを網羅する形での店舗展開も重要であろうが、(すでに一部導入しているところもある)タイヤチェーンにおける車検取次ぎ→指定・認証工場取得展開といったことも進めていくべきであろう。

また、もし各社が自らが展開するタイヤのブランドを顧客のマインドに浸透させていくことを考えるのであれば、「タイヤ XXX」といったブランド名ではなく、自社の企業名をもう少し前面に押し出していく戦略といったことも考えられる。

いずれにしても国内最終ユーザーから獲得した収益を、いかにして同ユーザーに効果的に価値として還元していくことが出来るかが、今後も競争力を維持しながら、Sustainable な(持続可能な)形での事業を継続していくためには肝要であろう。

<長谷川 博史>

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