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コラム

中小法人需要取り込みで始まった競争

◆東日カーライフグループ、大企業向け新車販売から撤退。事業移管へ

年間約 1000台を販売していたが、都心部における価格競争の激化で不採算案件が発生していた。日産の子会社である日産特販に同事業を移管すると決定。
7 人が日産特販に転籍する。今後は中小企業向け販売を強化し、収益力の回復を目指す。
<2006年 5月24日号掲載記事>

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◆東日カーライフ、大企業向け販売から撤退の報道

2005年 5月 24日に、一部新聞報道にて、東日カーライフ(一部上場独立系自動車ディーラー)が、年間約 1000台を販売している「大企業向け法人販売から撤退する」との記事が掲載された。

この記事では、法人向けビジネスについては、収益性の低い大企業向けビジネスから撤退する代わりに中小企業向けに特化することにした、という内容になっていた。

実際には、その後東日カーライフがウェブサイトを通じて発表している内容によると、撤退するわけではなく、5月に法人営業の一部(対大規模法人販売実績の一割強)を日産特販株式会社に移管したというのが事実とのこと。

ただし「今後は、当社の独自商品である中小法人向けリース商品「T.O.P」や、得意とするメンテナンスを武器に更に中・小法人向けの販売を強化していく所存であります」(ウェブサイトより)とのことで、中・小法人向けの販売を強化していく方向性であるのは間違いない。

◆保有台数からみた法人需要台数の推測

財団法人自動車検査登録協力会がウェブページで発表している内容によると、日本国内の自動車保有台数は 7600 万台(二輪除く)。このうち、乗用車は 5700万台、その他(商用車≒貨物用、乗合用等)は 1900 万台となっている。

乗用車の 5700 万台にも法人需要が含まれていることは間違い無いが、1900万台の商用車の殆どが法人需要であることは想像できる。1900 万台は市場全体の 33 %という重要なシェアを占める決して無視できない規模である。

この1900万台の構成要素は以下の通りとなっている。

1:軽トラック・バンなど 970万台
2:4ナンバー車(ワゴン車・ボックス車など) 460万台
3:1ナンバー車(大型トラック・バスなど) 250万台
4:その他 220万台
–:合計 1900万台

一般的に 1 の軽自動車は(少し乱暴だが)大企業というより街の中小事業者が使っている比率が高いと思われるし、また、2 の 4 ナンバー車についても、中小規模の事業者が利用するケースが多いだろう。ここでは計算を行うことはしないが、少なくとも上記 1、2 の半分以上は中小法人の需要であろう。

また、日本に存在する企業数 260 万-270 万社のうち、一般的には 9 割以上は中小企業であると言われるが、具体的に資本金1億円未満の企業の数を見ると、約 260 万社と全体の 99 %を占める(財務省法人企業統計年報より)。

日本の法人のほとんどは中小企業であると言っても過言ではなく、いくら大企業のほうが 1 社当りの保有台数が多いと言っても、台数ベースで見れば圧倒的多数は中小企業が持っていると考えられる。

機会があれば、こうした計算を各種統計を活用しながら行ってみるのも面白いだろう。

◆中小法人向けの販売に注力す理由を推測

東日カーライフが中小法人向けの販売に注力すると言っている理由は想像するに難しくない。まず単純に利潤を追求する「営利法人」であるということから、

大規模法人:相対的に儲からない
中小法人:相対的に儲かるだろう

と思っていると推測される。

さらに、なぜ儲かると踏んでいるかと言えば、B2B の世界における利益は以下の算式で考えられる。

利益=売上高×利益率
売上高=販売個数×単価
販売個数=販売対象企業数×1社当り購入個数

そのときに、

1:そもそも販売個数は、上記の通り 1 社あたり購入個数は少ないものの、対象企業数が圧倒的に多い中小企業向けが多い、
2:単価および利益率についても中小法人向けのほうが高く取れる、

と考えているからではないだろうか。

◆効果的アライアンス形成の模索

しかし、中小法人を攻めようと思ったときには以下の 2 つの問題が存在するだろう。

1:手間の問題
2:支払い原資の問題

一つ目の手間の問題を解決する方法として考えられるのはアライアンスの形成であろう。大企業向けであれば 1 社当りの購入台数が多いことから比較的効率的な営業が可能であろうが、多数の中小企業に 1 社当り限定的な台数を販売しようとすると、どうしても工数が嵩む。

当然、代理店や IT の活用といったことが検討される。複数の中小企業向けに何らかの商材を納めている企業なども、代理店契約を結ぶ候補として考えられるかもしれない。

◆クレジット(信用)供与と市場拡大

二つ目の支払い原資については、普通に考えるとクレジット(信用)の供与ということが考えられる。すなわち、後払いということだ。

考えてみれば戦後の日本のモータリゼーションを支えてきたのは、当然ながら供給サイドから見れば技術革新に伴い「良いものがより安く」なってきたことにあり、需要サイドから見れば経済成長に伴う所得の増加に伴う購買力増にあるが、この間の時間的ギャップを埋める「クレジット(信用)」を供与するプレーヤーが存在したからこそ、これだけの台数になったと言えるだろう。

将来の収益力(返済能力)を元に信用を供与する際に重要なのは、やはり将来の返済能力であり、商品相場リスクの合理的算出である。これが難しいとなると、信用の供与は困難であるが、これが可能な場合には収益プレミアが取れるわけだ。

東日カーライフのウェブページによると、同社 100 %子会社のカーネット車楽はオリコと共同で商用車の将来予想査定価格を算出したうえで、買取保証される権利を付与したオートローンを業界で初めて提供するとのことだ。

これは、自動車販売会社が法人需要に如何に切り込んでいくかという動きであることは想像するに難しくない。

◆迎え撃つオートリース会社の課題

こうなると、迎え撃つはオートリース会社になるだろう。日本のオートリース会社の主要顧客は法人であり、しかもこれまでは大手法人を中心にリース商品を販売してきた。

大企業向けの競合マップがほぼ塗り潰され、熾烈な M & A が繰り広げられつつある一方で、残るフロンティアである中小企業へのリーチも各社の今後の戦略に入っている。

与信リスク管理のノウハウはオートリース会社も有しており、これを中小にも如何に拡大しながら機動的なものに変革していけるかは大きなポイントであろうが、ユーザーの利便性を考える商品設計も重要だ。リース会社の商品でも法人向けにリースアップ時の商品価格の保証を提供する商品は存在していたが、カーネット車楽の商品を見ると……、

「車種ごとに 3年・ 4年・ 5年後の査定価格を事前に予想し、その額を買取保証します。ユーザー(法人・個人事業主)は、市場リスク(該当車両の値下がりリスク)を負うことなく、安心して商用車を購入することができます」(東日カーライフ・ウェブページより)

……とのことで、それなりの利便性を考慮した内容になっているように見える。

もうひとつのポイントはやはり手間の問題・効率性の問題を解決する効果的なアライアンス先である。

自動車ディーラーは拠点を多く有しているが、オートリース会社は通常限定的な拠点しか有していないことが多い。ルートセールスといった方法もあるだろうが、中小企業を網羅的にカバーする方法として必ずしも効率的ではないだろう。

最後に差が出るのは、いかに顧客に効率的かつ効果的にリーチする手段を確保するか、というところになるのかもしれない。

<長谷川 博史>

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