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コラム

中古車輸出事業者の新規事業展開と商社の事業展開の類似性

◆トラスト、アフリカや中南米など海外数カ国で中古車販売拠点を展開へ

<2006年1月15日号掲載記事>

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トラストは、国内自動車流通再編プレーヤーである VT ホールディングスの上場子会社(マザーズ)で、中古車輸出事業者である。

ここ 2~ 3年、同社を含む中古車輸出事業者の上場が相次ぎ、資本市場からの資金調達に成功した後、各社差別化された事業戦略を打ち出しているが、トラストでは、従来からの強みであった海外向け B2C (小口 B 向け B2B を含む)の延長線上に独自の拠点開設を予定しているとのことだ。

そこで、今回のコラムでは、上場中古車輸出事業者(乗用車)であるアップルインターナショナル、アガスタ、トラスト、3 社を含む、現在のナショナルフラッグ中古車輸出事業者の抱える共通の課題を元に、各社の事業戦略を比較したうえで、考察を加えたいと思う。

【一般情報】

乗用車系中古車輸出事業者各社の業績(単体のみで比較)は以下の通りとなっている。
(単位:百万円)

アップル アガスタ トラスト
決算年月日 2004年12月期 2005年6月期 2005年3月期
上場月 2004年7月 2004年11月 2003年12月
売上高 22,355 6,688 5,376
営業利益 950 -53 594
経常利益 886 -79 600
当期利益 510 -92 343
総資産 13,135 1,208 4,261
株主資本 11,546 844 3,238
資本金 4,807 364 1,341
有利子負債 1,204 306 —
株主資本比率 87.90% 69.90% 76.00%
ROA 6.07% -7.70% 11.31%
ROE 7.17% -14.64% 16.51%

企業規模としては、アップルインターナショナルが大きい。アガスタは少ない総資産で効率的な経営を試みている様子がうかがえるが(売上高が総資産の 5 倍以上)、売掛金の貸倒れなどにより、2005年 6月期は赤字。トラストはその中間といったところだろうか。

【各社共通の課題】

ご存知の方も多いかと思うが、日本からの中古車輸出台数は昨今増加を続けている。これは、そもそも日本に程度の良い中古車が多いこと、保有台数の代替に対する中古車小売需要が低迷していること、車両データなどを検索可能な情報インフラがオートオークション会場により整備されていること、自動車リサイクル法の施行など、複数の要因によるものではあるが、これからもこのトレンドは続くであろう。
こうした市場拡大のトレンドに今回取り上げた 3 社も乗っているわけだが、実は利潤という面から見ると、台数増加の背景には市場参画プレーヤーの増加という要因がある為、従来型のオペレーションでは維持・増加していくのが難しい状況にある。
特に、競合がコスト面で同等の相手であればまだしも、外国人ブローカーの増加が顕著な状況では、単純なコスト競争力ではどうしても勝てない。
また、一物一価の中古車を扱う場合、現地の顧客の個別のニーズに個別の商品が提供する価値をしっかりマッチングする必要があることから、現地の事情に精通するブローカーは一般的には有利であろう。
更に(一部異なるオペレーションフローを導入している企業もあると聞くが)、凡そ輸出台数そのものを増やそうと思うと、市場を把握している営業マンを増やす必要が生じるとこと、更には船積書類関係での事務員の確保という面から、「一人x台のマーケットを扱う営業マンが y 人いるから、xy台」という公式で表される構造も存在する。
こうした環境から、ナショナルフラッグの輸出事業者は、例えば決済条件などでの優遇をすることによる競争力維持及び適切なリスク管理に基づく追加収益(ファイナンス利益)の獲得を追及しているが、自らが成長基調にある市場に参画する新しい会社であるが故に、これも難しい課題である。

【上場資金の運用戦略・新規事業】

各社とも、既存のビジネスの内部管理体制の整備に伴うリスク・リターンの確保は確実に進めていく方向にあろう。
ただ、これに加えた「新規事業の模索」についてはそれぞれ独自性が見られる。以下、紹介したい。

1.アップルインターナショナル

キーワード:「中国シフト」

アップルインターナショナルの投資家向け説明資料には、明確に「今後の成長ドライバーである中国事業に経営資源シフト」と書いてある。
これは、以下のように、中国国内で生産される車両の輸出と中国国内で発生する車両の再販という形をのようだ。

1) 中国国産車の世界販売ネットワークの構築
(複数ブランドの最長 2010年までの輸出権取得)
2) 中国中古車事業(買取・販売・FC事業)

2. アガスタ

キーワード:「Web での取引所開設」、「マッチングインフラ整備」

国内最大級の日本中古車輸出自動検索サイトを構築するということで、複数の大手中古車チェーンとの提携によるデータ集約と、世界各国の日本中古車購入希望者からの購入希望者検索システム・自動制約の仕組みを構築するとのこと。因みに、国内のネットワークを「輸出や.COM」、海外とのネットワークを”Pick ‘nBuy24.COM”と呼称する模様。

3.トラスト

キーワード:「現地販売拠点展開」

アフリカや中南米など海外数カ国で中古車販売拠点の設置。
具体的には、昨年末にアフリカのザンビアに 100台規模の中古車拠点を開設、今後もジンバブエ、ボツワナなどアフリカ諸国や中南米にも店舗を展開するとのこと。

【輸出と言えば・・・】

さて、輸出と言えば所謂「商社」と言われる業態の事業者が従来から手掛けてきた。
筆者自身、所謂「貿易」の実務経験を有しているが、この経験から見る「貿易」ビジネスの特性を以下ご紹介したい。

1)商業的資本主義の原点であること
詳細は、筆者コラムである以下 を参照戴きたいが、

『価値を生み出す経営とは(3)・差別化って?』

遠隔地交易などにより、異なった二つの価値体系の狭間で、一方で相対的に安いものを買い、他方で相対的に高いものを売ることによる、利潤。
但し、遠隔地交易の規模の拡大が、利潤の源泉である地域間の価格差異を縮める為、自らの活動そのものが利潤の源泉を低下させていく後の事業展開をも含めた行動が大切。

2)新車輸出は一人当たり取り扱い資産を大きく取れる
商品スペックが共通なものを大量に 1 つの船に載せて販売するスキームを構築することが出来れば、他者での当該スキームの代替が難しくなるのと同時に、コストも一定レベルまで軽減することも可能となる。
反面、中古車や部品といった細かなスペックのものは、船や書類といった領域における煩雑な手続きを一元化するのは難しく、手間が掛かる。

よって、商社も貿易を当初の基盤に、その他各種事業展開を広げているわけだ。

【終わりに】

上記、中古車輸出事業者 3 社の新規事業と所謂商社での過去の新規事業との間に大きな共通性があるのは、偶然ではない。

例えば、海外の巨大市場における流通に直接参入するといったアップルインターナショナルのケースは、嘗て米国や欧州の生産拠点や流通市場に商社が目をつけて参入していった経緯に酷似しているし、トラストの海外販売店設置も、新車領域で商社が輸出先の輸入販売代理店への出資を展開していることに相当するだろう。

また、バーチャルマーケットプレース構築の模索は、99年頃に商社各社が鉄や化学品、その他の商品などの領域で展開した内容と似ている(必ずしも全く同じものではないが)。

つまり、これからの事業展開を考えるうえでは、是非過去の商社の貿易(輸出)ビジネスから派生した取り組みの事例を研究して戴くと良いだろう。

思ったよりも参考になるものが多いはずだ。

<長谷川 博史>

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