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コラム

顧客視点に立って、自社サービス提供範囲を見直してみよう

◆タクシー運転手の接客、「ザ・リッツ・カールトン大阪」の宿泊客が採点
5段階で「採点」してもらい、優秀者を表彰するキャンペーンをスタート。
高評価の運転手 3 人にスイートルームのペア宿泊券 (約 11.4 万円相当) など

<2005年09月15日号掲載記事>

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リッツ・カールトンと言えば、自動車業界の人間にとっては、今話題のレクサスがゼネラルマネージャーを研修させるために派遣した先として思い出す人も多いだろう。

このホテルは、日本を含む世界中で常にトップレベルの評価を得ていることで有名だが(各種媒体のホテルランキングなどでも、常に上位となっている)、他業種で高級商品・サービスを提供する企業にとっても「顧客向けのサービスを継続的に最大化する仕組みを準備している企業」として有名である。

【リッツ・カールトンのCredo(信条)】

こうしたリッツ・カールトンのビジネスモデルについては、各種書籍により多数紹介されていることから、ここで改めて内容を記載することはしないが、その基本を言えば同社の Credo * (信条)に書かれている「お客様の気分を良くすること」を最優先するということにあるだろう(* 厳密には、もう少し違う書き方がされているため、ここは筆者の超訳である)。

こうして「顧客満足度最大化」と書いてしまうと当たり前の話として捉えられてしまうだろうが、実際にはこれを実現するのは難しい。幾つか現場レベルでの運用が必ずしもこの「当たり前な目的」と異なる方向に向いているという実例を挙げてみよう。

【実際の行動に移せているか】

例えば、大企業などではお客様との打ち合わせの最中に「それでは社内の打ち合わせがありますから、失礼させて頂きます」などという人が居たりしないだろうか?若しくは、お客様向けの何らかの価値提供を考えている際、目の前にお客様が居るということも忘れて、「それは、出来ません」と言い放ち、その根拠に社内のルールを挙げる人が周りに居たりしないだろうか?否、あなた自身がそういった行動をしてしまったことは無いだろうか?

企業にとっての全ての価値の源泉は顧客であり、そのお客様の満足度を最大化することが、利潤の最大化である、といったカッコいい言葉で書けば「フムフム、その通りだ」となるだろうが、実際には行動に移せているかが一番難しいポイントである。

【個々の従業員の能動的な行動化の仕組み】

因みにリッツ・カールトンでは、企業の中で作られるあらゆるルールは、この Credo に劣後する。即ち、お客様から求められている瞬間に、「それは規則で出来ません」という規則は存在しないということを明確にしている(勿論、違法行為などを除く)。そして、単に顧客対応係に限らず客室の掃除を担当する従業員に至るまで、全ての・個々の従業員が自分の考えで行動することを求めている。

これは、本来の商売の基本である価値提供の仕組みが、規模が大きく複雑になればなるほど失われがちであるところを、如何に維持・実現するかということを明確にしているだけであるとも言えるが、実際に顧客に直接対面する従業員がこうしたことを徹底する為には、お客様のニーズが顕在化する前に臨機応変な先読みを実施することが必要であろうし、その為のエンパワメント(権限委譲)や能動的に行動を促す仕組み・プロセスが必要になるだろう。

この仕組みやプロセスには秘訣や簡単な Tips などは存在せず、「お客様の気分を良くする」という大前提の目的を達成する為の手段として、絶え間ない自己管理の元で成長していく個々の従業員の姿勢と、それをサポートする企業側の姿勢の 2 つが相まることが必要条件で、結果として両者のレベルが高まる好循環を如何に構築するか、というマイクロマネジメントの積み重ねでしかない。

【今回の取り組みの目的】

さて、それでは今回の同ホテルでの取り組みである、「宿泊客にタクシーの接客を 5 段階で「採点」してもらい、優秀者を表彰するキャンペーン」の背景にはどのような考え方があるだろうか?

目的は明確であろう。

繰り返しになるが、当然同社 Credo である「お客様の気分を良くすること」にある。

そして、同社の従業員・経営陣の中の誰かがお客様の視点に立って「気分よかったなぁ」とホテルに滞在した結果として思うのはいつまでか、ということを考えたのではないか。

サービス提供範囲を顧客ベースで考えたときに、ホテル内で折角最高のサービスを提供しても、帰りのタクシーで嫌な思いをしてしまっては、家に着いたとき、若しくは次の滞在先に着いた時点で良い思い出は顧客の頭の中に残らない。

突然だが、小学校のころ先生に言われた、「家に帰り着くまでが遠足だ」という言葉を思い出し、納得する次第だ(笑)。

リッツ・カールトンからタクシーに乗って帰ると気分良く帰れるからといって、「だから次回もリッツ・カールトンにしよう」とはならないかもしれないが、サービス提供範囲(スコープ)を拡張しながら、最後までお客様の満足度を維持しようとする姿勢そのものは、ホテル自体の姿勢を表すものとして共感できる。

また、高評価の運転手 3 人にはスイートルームのペア宿泊券(約 11 万 4千円相当)などの「豪華賞品」を贈るとのことだが、

1)高評価の運転手が同ホテルの提供するサービスレベルを理解すれば、その後ホテルにタクシーをつける際の接客にも好影響が期待できると同時に、
2)稼働率勝負のホテルにとって、仮に稼動していないときの部屋を無償で提供しても追加コストは最小レベルで済む。

費用対効果という面でも十二分にペイするだろう。

自動車関連事業者でもこうした「顧客の視点から見た、価値享受の範囲」という視点転換を行ってみることで、更なるサービスレベルの向上を図れる余地が無いか考えてみてはどうだろうか?

<長谷川 博史>

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